前回の記事をアップした後、ふと部屋の壁を観たら、貼っていたショーン・コネリーのポストカードが剥がれて落ちていた。
「俺のこと、書かないのか?」という、亡きショーン・コネリーからのメッセージなのだと思う(たぶん違う)。
子供の頃は、コネリー版ボンドになりたかった。
そのわりに、飾ってたのは写真を見ての通り『アベンジャーズ』のオーガスト卿*1なんだけどねー。
ショーン・コネリーを知ったのは、間違いなくテレビ放映での『007』シリーズのどれか。
ロジャー・ムーア版もよく観てたけど、ちょっとオジさんだったし、ティモシー・ダルトンはスーツのイメージが薄くて、ボンド役としては好きじゃなかった。ちなみに二代目ボンドのジョージ・レーゼンビーは、顔が好みじゃないので私の中ではなかったことになっている(すごく失礼)。
どのボンドよりも、ショーン・コネリーが一番タフでハンサムでスーツが似合って、カッコよかった。そういうヒーローが大好きだった。
ところが、映画館でリアルタイムのショーン・コネリーを観た時に、私の中で価値観の大変動が起こったのだ。
映画館で初めてショーン・コネリーを観たのは『薔薇の名前』*2で、中学1年生の頃。もちろん、目当てはショーン・コネリー。
私、10歳になるかどうかって頃には、親が気乗りしない映画は、貯めたお小遣いでこっそり一人で観に行っていた子供*3で、これも親は興味なかったので、一人でコソコソ観に行った。
この映画での、バスカヴィル修道士役の衝撃といったら!
ボンド的なカッコ良さは(特にビジュアル)一見ない。その代わりに感じるのは、にじみ出る知性、人生経験から磨かれた気品、何があっても大丈夫と思わせる頼り甲斐。
そして何より、全部わかっているよと言わんばかりの、染みいるような微笑み。
「笑顔」じゃないの、「微笑み」だからね!(なんの主張だ)
この時、私の中で「若い頃に色々あったらしい男がジジイになると何もかもがカッコいい」という、評価基準が確立してしまったのだ。
思春期の女子中学生にとって、致命的だろ、これ。
しかも、この評価基準は万国共通だったらしく、この手の役柄と言えばショーン・コネリーと言わんばかりの映画が作られ、『薔薇の名前』のように、彼が若者を導くような役も多かった。
これがまた、痺れるほどにカッコいい。
おかげで、私にとっては、クリストファー・ランバートもマーク・ハーモンもケビン・コスナーもニコラス・ケイジも、みーんな若造認定*4。
ハリソン・フォードさえも、『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』で格下げに。
そういえば、ショーン・コネリーは『ロード・オブ・ザ・リング』のガンダルフ役のオファーを断っていたらしい。
もし受けてたら、出演者全員、若造認定してたね、クリストファー・リー以外*5。
あ、出演してたら、ガンダルフのショーン・コネリーvsサルマンのクリストファー・リーが観られたのか!
これ、実現してたら映画史に残る名勝負になったはず!
そこをちゃんと説明してオファーしろよ、ばか!(理不尽)
そんな私にとってキング・オブ・ジジイである、ショーン・コネリーが引退して、もう10年を超えた。彼のいない映画界にも、すっかり慣れてしまっていた。
だから2020年の今、彼の訃報を聞いても動揺することもない。
ただ、ふと気づいたのだ。
好きな男性俳優や有名人は、たくさんいる。
でも、もし男に生まれていたらあんなジジイになりたい、とまで思ったのは、ショーン・コネリーだけだったと。
『アベンジャーズ』を観てから20年以上経つ。その間に住まいは4度も変わったけど、私はいまだに、彼の写真を飾っている。
*1:マーベルとは何の関係もない、1998年のポップなスパイ映画。ショーン・コネリーが悪役な上に、キルト姿を披露してくれて素敵。私は好きな作品なので、大コケした理由がいまだにわからない。
*2:中世の修道院が舞台のミステリー。まだ可愛いかったクリスチャン・スレーターが、見習い修道士役で共演
*3:初めて一人で観に行った映画はジャッキー・チェンの『ドラゴン特攻隊』。当時ジャッキーが好きで、内容も知らずに観に行った。昔の映画館はおおらかだったな……。
*4:全員、私より年上。さすがにそろそろ、認定取り消してもいいかなと思うが、ニコラス・ケイジだけは取り消す必要性を感じない。
*5:クリストファー・リーは永遠にドラキュラ伯爵だから、若造認定はありえない。