前世戦士の映画日誌

前世が戦士らしい女が映画を観て色々吐き出します 生態日誌です

『ダンケルク』クリストファー・ノーランがやりたい放題になってきた

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さあ、月曜の夜からは『ゲーム・オブ・スローンズ』の世界に行って、しばらく帰ってこない予定なので、もう一本参ります!(自分でもよく分からない焦り)
MoviePlusで『ダンケルク』やってたんで、つい観てしまいました。観るのは3回目。

クリストファー・ノーランが映画を作ると、毎度、ノーランは天才だ、いや違う、みたいな話が出回ります。最新作の『TENET』も大騒ぎですが、公開時は休職期間に入ったばかりでボロボロでしたから、私は観に行ってません。
観るまではネタバレあるなしに関わらず、なるべく情報は入れないことにしているので細かいことはわかりませんが、また同じようなことになってるみたいですね。

ダンケルク』も、公開当時は結構評価が割れた記憶があります。
「臨場感がある、新しい映像体験だ」
「ドラマがない、人物が薄っぺらだ」
だいたい、この二つになるかなと。これ、どっちも合ってると思います。

あのー、私が思うに、ノーランって、基本的にはシンプルな人なんじゃないですかね。
この人、まずやりたい「コト」があって、それにすべてを合わせるように映画作ってるだけのよーな気がするんですよ。
でなきゃね、どーして『ダンケルク』を、防波堤を1週間、海を1日、空を1時間、なんて、違う時間を平行で語らなきゃならないんですか。
人間の内面を描くことが苦手な監督じゃないのに、いくらでも膨らませられるところを、わざわざスッパリ切り捨てるのはなぜなんですか。

いや、そこに彼なりの色んな理由があるのも意味があるのも、映画表現として意義があるのもわかってる。
でもそれは、コンマ1秒くらいの差かもしれないけど、所詮は後付けの理由だと思うのです。
絶対に、最初に「やってみたい」があったに違いない。
三つの違う時間を同時に描いてみたい、とか。
IMAXの力を限界まで引き出してみたい、とか。

な、正直に言ってみな?
やってみたかっただけだろ?
なあそうだろ、クリストファー(友達?)

で、やりたいことにうまくハマらない要素は、わかっていても切り捨てる。史実と違うとか、あれがないとかあるとか、ゆーたところで聞きやしないでしょう。

ようするに、クリストファー・ノーランという人は、途方もない映画バカなんです。
バカを突き詰めると天才と呼ばれる、良い例です。

ちなみに、私は、ノーラン映画ってだいたい2回は観ます。映画館で2回とまではいかなくても、1回観たっきりにはしません。
1回だけだと、「ノーラン、なんかすごーい!」で、終わっちゃうから。

だって、ノーラン映画って忙しいんだもん。
場所も時間も多面展開するし、出てくる人間は多いし。色んな要素をおせち料理のごとく重箱の中に詰め込んでるんで、一度に全部食うのは大変です。
その上、映像に凝りまくってるから、思わず「はー!」と感心してる間に大事なところを見逃す危険もあり、集中力は総動員。
映画館では一時停止も巻き戻しもできませんからね、観る方も追いつくのに必死なんですよ。
なので、2回目以降でやっと、「今回のノーランは、何がしたかったのかなー」とわかってあげる時間がとれるんです。

別に、私がわかってあげる必要なんかないんですけど、「やりたいこと」がはっきりしている監督って、バカだとわかっていても好きなんで。
そうなると、「やりたいこと」をわかってあげたいじゃないですか、やっぱり。
なんなんですかね、私のこの心理は(人に聞くな)。

まあ、こういう監督は他にもいます。
でも、ノーランの映画バカっぷりがとりわけすごいなーと思うのは、彼の考える「娯楽」と、観客の求める「娯楽」が、微妙にズレてることが往々にしてあることなんですね。
本人は、自分の作品は「娯楽映画」だと本気で思ってるようですが、毎度毎度賛否両論が巻き起こるというのは、やっぱり娯楽のストライクゾーンに球が入ってないからで。

特にこの『ダンケルク』は、脚本に弟のジョナサン・ノーランが加わっていません。クリストファー・ノーランが一人で脚本書いているので、やりたい放題になっている。
弟と二人で脚本書いてる作品*1だと、比較的ストライクゾーンに寄るんですけどね。
誰か手綱を握る人がいるといいんだけどなーと思いつつ、このまま世間の評価に迎合することなく、映画バカ一直線でいて欲しいような気もします。

だから私は、律儀にノーラン映画を観続けるんだよなあ。
劇場公開を見逃した『TENET』も、Amazonプライムの対象になる日など待たずに、金を払って観る予定。
頑張って稼げよ、クリストファー。

*1:プレステージ』『ダークナイト』『ダークナイト ライジング』『インターステラー』。特に『インターステラー』は、もっと難しい話になるところを、ギリギリのところで踏みとどまってる良作。