前世戦士の映画日誌

前世が戦士らしい女が映画を観て色々吐き出します 生態日誌です

『ハドソン・ホーク』ブルース・ウィリスが作りたかったんだからいいじゃないという話(ネタバレなし)

先日、われらがブルース・ウィリスについて、とても悲しいニュースがありました。昨年、失語症で俳優引退の時もショックでしたが、その後症状が進んで前頭側頭型認知症との診断が下されたとのこと。
認知症は、いろんなことが失われてしまう病気です。ブルースのように努力を重ね夢をかなえた人が、その夢さえも忘れてしまいます。本当に悲しい病だと思います。
でもね。ブルースを愛する世界中のファンは彼を忘れない。
ブルース本人が忘れてしまった分まで、ファンは彼の作品を観続けて愛し続けるはずです。

とはいえ、ブルースは山ほど映画に出ているので、その分、駄作も多い人なんですね。失語症の症状が出始めたんであろう最近を除いても、厳しめに見れば打率5割くらいが妥当じゃないかと思います。
まあそんな駄作を微笑ましく観るのもブルース鑑賞の醍醐味です。個人的には、ブルース好きの人って、滅茶苦茶ストライクゾーン広い人が多い気がしてます。

……でも、そんなファンですら無かっことにしているのがこの映画『ハドソン・ホーク』。ブルースの駄作の中でも、ずば抜けて駄作の呼び声高い作品です。ちなみに私はこの映画で、ラジー賞*1を知りました。

ダ・ビンチの残した謎の純金製造マシーンを追って、怪盗ハドソン・ホークと世界制覇を企む夫婦、またその他の人間が入り乱れて繰り広げられるアクション・アドベンチャー。監督は「ヘザース ベロニカの熱い日」のマイケル・レーマン、製作は「プレデター2」のジョエル・シルヴァー、脚本は「ダイ・ハード2」のスティーブン・E・デスーザと「ヘザース ベロニカの熱い日」のダニエル・ウォーターズが共同で執筆。撮影はダンテ・スピノッティ、音楽を「ダイ・ハード」のマイケル・ケイメンと「リトル・マーメイド」のロバート・クラフトが担当。出演はブルース・ウィリス、アンディ・マクドウェル。

1991年製作/100分/アメリ
原題:Hudoson Hawk
配給:コロンビア・トライスター映画

映画.comより

でもね。
私、ブルース作品の中でこの『ハドソン・ホーク』が1番好きなんです。
ええもう、公開当時、映画館で観たその時から。

あ、待って。
そんな、さげすむような眼で見ないで皆さん!
いまから理由を書くから!
それ読んでも納得いかなきゃ、吐き捨てていいですら!

といっても理由はひとつでね。
もう単純に、ブルースが楽しそう。
ただそれに尽きるのです。

はっきり言って、映画は滅茶苦茶です。
ストーリーも演出も滅茶苦茶です。
コメディ映画ですが、ギャグは滑りまくるし、テンポもヒドイ。編集もさぞかし大変だったことでしょう。

でもこの映画を観ていると、ブルースがどんなものが好きなのか、それがすごく伝わってくるんですよ。
なぜかと言えば、この映画、もともとブルースが無名時代に友人とこんな話いいよね~と温めていた話が元になってるんですね。ブルースによるブルースのための映画。
だから演じているブルースの顔もとっても楽しそう。
……後々裏話を知りましたが、撮影中はそれはもう悲惨な現場だったらしいんで、まあおそらく、本人だけが楽しかったんだと思うけど。

ハドソン・ホーク』を観ていると、ブルースは、アメリカンニューシネマ以前の50~60年代、映画はただただ明るく楽しく呑気で小洒落ていた時代、あのころのものが好きなんだろうなと思います。

どうしても『ダイ・ハード』のイメージが強いので、タンクトップ姿が目に浮かんでしまいますが、ブルースって本来は、アクションやマッチョな役よりも、この映画のようなちょっとクラシック(古臭い)な格好の役が好きなんじゃないかなあ。
さらに言えば、辛気臭い話より、コメディ映画の方がより好きなんじゃないかなあ。
ダイ・ハード』もブルースと脚本家が意気投合して、あの笑えるアクション映画に昇華したらしいですし、楽しいものが大好きな人なんですよ、きっと。

そんなブルースがずーっとやりたかったことを、『ダイ・ハード』で得た名声とコネと金を使って「うぇ~~い!」と勢いで実現したのが『ハドソン・ホーク』なんです。
だから、駄作とか言って黒歴史にせず、『ハドソン・ホーク』をみてブルースを堪能しましょうよ。

このブログで何度も書いてますが、製作者のやりたいことがにじみ出てる映画なら、もうそれで花丸満点の映画じゃあないですか。
ファンにも批評家にも製作に関わった全ての人にとっても悪夢のような映画ではありますが、少なくともブルースにとっては若き日の夢が結実した映画です。
今回改めて観ましたが、やっぱり断言できます。

ブルース・ウィリスは『ハドソン・ホーク』が1番なんだよ!

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*1:正式にはゴールデン・ラズベリー賞アカデミー賞とそっくりだが、中身は真逆で、その年のダメダメ映画を称える?映画賞。もう40年くらい続いている。もちろんジョークの映画賞だが受賞した側はそれなりに不愉快らしく、過去授賞式に出てトロフィーを受けとった強者はわずか4名。『ハドソン・ホーク』は最低作品賞と最低監督賞を受賞しましたが、雇われ監督だったマイケル・レーマンはトバッチリだと思うのです。可哀そう。