前世戦士の映画日誌

前世が戦士らしい女が映画を観て色々吐き出します 生態日誌です

『Mr.ノーバディ』男の自己肯定感とはとどのつまり……(ネタバレはごく微量)

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なにやらペースが月1更新になってきましたが、まあ自己都合ブログですからね。気にしませんよ(と、言い訳するあたり……)。

さて、観たのはちょっと前になるんですが、『Mr.ノーバディ』。
最近、主演のボブ・オデンカークがドラマの撮影中に倒れて緊急搬送されるというニュースがありまして、心配していましたが搬送先で意識を取り戻し現在は入院中のようです。
良かった良かった。ゆっくり養生して元気になっていただきたいです。

ただこの件を知った瞬間は、『Mr.ノーバディ』に気合い入れすぎて心臓に負担かかってんじゃねーか?と思っちゃいましたよ。

一見してごく普通の中年男が、世の中の理不尽に怒りを爆発させて大暴れし、やがて武装集団やマフィアを相手に激しい戦いを繰り広げる姿を描いた痛快ハードボイルドアクション。「ジョン・ウィック」の脚本家デレク・コルスタッドと製作デビッド・リーチが再タッグを組み、人気テレビシリーズ「ベター・コール・ソウル」の主人公ソウル・グッドマン役で知られるボブ・オデンカークが主演を務めた。郊外にある自宅と職場の金型工場を路線バスで往復するだけの単調な毎日を送っているハッチは、地味な見た目で目立った特徴もなく、仕事は過小評価され、家庭では妻に距離を置かれて息子から尊敬されることもない。世間から見ればどこにでもいる、ごく普通の男だった。そんなハッチの家にある日、強盗が押し入る。暴力を恐れたハッチは反撃することもできず、そのことで家族からさらに失望されてしまう。あまりの理不尽さに怒りが沸々とわいていくハッチは、路線バスで出会ったチンピラたちの挑発が引き金となり、ついに堪忍袋の緒が切れる。監督は「ハードコア」のイリヤ・ナイシュラー。共演に「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のクリストファー・ロイド、「ワンダーウーマン」のコニー・ニールセンほか。

(映画.comより)

そもそもオデンカーク、これまではアクションとは無縁といってもいいキャリアだったんです。
それなのに、この映画のアイディアを思い付いた彼は、どーしても主役を自分で演じたいがために企画が形になる前から2年かけて肉体改造に取り組んでいたそうで。
いやはや、実はとんだ中二病オヤジだったんですよ。

あの、このブログを読んでくださってる皆さんは薄々察してると思いますが、ボブ・オデンカークってこれまで私の眼中になかった役者でしてね。
だって『ブレイキング・バッド*1も『ベター・コール・ソウル』*2も観てないんです、私。正確には3話目くらいで挫折。
だって、続き物のドラマって苦手なんだもーん。

だから、とにかく新鮮でした。
この映画は、すでにアクション映画界では一大ジャンルとなっている(?)「なめてた相手が最強でした」映画なんですが、本当にアクション映画に染まってない役者が演じているのって新鮮で。

なにせ、最近の「なめてた相手が最強でした」映画は、もうこちらも演じている俳優に慣れちゃってるんですね。
映画冒頭でなめられまくってるエピソードが続いても、「あーあ、後で知らんぞ~」と思うところから入るんで、期待感はあっても予想外はないわけで。
だって、キアヌ・リーブスだし、シルベスター・スタローンだし、ブルース・ウィリスだし、ジェイソン・ステイサムだし。
リーアム・ニーソンなんて、ふつーあんなデカい男(身長190㎝超え)をなめてかかるとか、すげー勇気ある奴か超のつく馬鹿かどっちだろう、思う訳ですよ(でも考えたら、リーアム・ニーソンに直球で因縁つける話は少ないか)。

ともかく、やや安定していた「なめてたオヤジが最強でした」市場に、久々に目垢がついてない役者が泥臭いアクションで揺さぶりをかけに来たのです。
そしてそれは大成功でした!いやあ痛快!

ぶっちゃけ、展開には驚かないです。
どんな裏設定があろうとも、「なめてたオヤジが最強でした」という一言で内容は集約されますから。
家族がオヤジを見直す展開のくだりは、シュワルツェネッガーの『トゥルーライズ*3を思い出しました。
強いて新しいことといえば、「なめてたオヤジと、もっとなめてたジジイも最強で、揚げ句兄弟も最強で、権力のバックアップまであった」ってところでしょうか。
RZA*4の存在意義がいまいちわからないままですが、面白かったし好きなんで気にしない気にしない。

しかし再確認しましたね。オスというのは、戦うこと=自己肯定感につながってるんだなと。
私、よく男→女へのセクハラに対する反撃(反論ではない)で「オスは黙って戦って死ね」という暴言(暴論ですらない)を吐きます。
前世が戦士の私からしますと、セクハラするヤツってなあ、自己肯定感が低くて、かわりに必死で自分より弱い相手を探してマウント取りにいくチキン野郎にしか思えないんですね。
そんなことするより、正々堂々、剣を交えて闘いませんか? 受けてたちますぜ、と、思ってしまう(というあたりが前世戦士ゆえ)。

まあね、さすがに本気で戦って死ねとは思ってませんが(全員には)、まあ何に向き合うにしろ戦闘モードであることというのは、オスがオスたる所以なんじゃないかなと。
ここで言う「戦闘」っていうのは暴力ってことじゃなくてですね、仕事でも趣味でも育児でも家事でも、向き合いかたが戦闘モード攻略するとか極めるとか、そういった状態のこと。
たとえ、世間から男らしくないなどと理不尽な言われ方する職業や趣味であっても、男性の向き合い方はやっぱり攻めて極めるモードが多いような印象です。

よく、男性が好きなものに話をするとスペックやデータを語りだし、女性はかわいいとか感覚の話になって噛み合わないこと、ありません? ああいう違いですよ。
アクション映画で女性が武器のスペックの話したりしますが、あれちょっと男性目線に偏ってるなと思います。
私も比較的スペック好きですけど、リロードの音が爽快!ってのが本質ですからね。

♂「この場合は武器はこれがセオリーだ」

♀「こっちの方がリロードする度、気合いが入るのよ」

なんて会話、してみたいわ。

何かを極めてる女性でも、元をただせば「好き好きー」と盛り上がっていたら結果として極めちゃった、ってところにたどり着いただけで、極めること自体は目的ではなかったりします。
いまオリンピックやってますけど、いや正直ほとんど観てないんだけど(ラグビーBritish&Ireland Lionsツアーと丸かぶりだもんで*5)、比較的女性のアスリート、特に日本やアメリカの女性アスリートが概して辛そうに見えるのは、極めることそのものを目的にすることが本性に反しているからじゃないかなあと思います。

男性ももちろん好きがスタートだったりするでしょうが、結局は極めることそのものに快感を覚えるというか。なんだか字面だけみると違う意味になりそうですが、あながちそーゆー捉え方で間違ってない気もします。
いやいや、女性を喜ばせるのが好きな男性もいるぞと言われるかもしれませんが、そういうタイプは女性を喜ばせることを極めてる訳で、やってることに違いはあっても本質は同じです。
……って、一体何の話をしてるんだ、私は。

ようするにですね、世の男性から全ての牙を抜くと、この映画の冒頭のようなnobadyになっちゃうわけです。
例えその牙が女性目線からは「なんでそんなことに燃えるんだこの中二病野郎」と思えるものであっても、我々女性は生温かい愛情でもって見守りつつ、この映画のように地下室のある家を探すくらいのおおらかな気持ちでいた方が、まあうまいこといくんじゃないかなと思うわけです。
ただし、男性側も戦闘モードを発揮するのなら、いやそもそも発揮できずに自信が持てないなら、セクハラパワハラなんてド底辺でマウント取るようなマネをして自分をごまかすよりも、まずは女性への向き合いかたを極めていただきたい
その方が男女共に満足するのではなかろーかと。

あ、いや、そーゆー意味ではなく!
いや、そーゆー意味も含まないでもないけれども!

*1:余命わずかの高校教師が麻薬王になるドラマ。大絶賛ドラマなんだが私はノれず。オデンカークは登場人物の一人、弁護士ソウル・グッドマン役。

*2:ブレイキング・バッド』のスピンオフ。オデンカーク演じる弁護士ソウル・グッドマンが主役

*3:凄腕スパイなのに家族にはその事実を隠して活動しているため、家族からなめられまくってるシュワちゃんが夫として父として威厳を取り戻すべく頑張る話(という記憶)。監督が結婚→離婚を繰り返すジェームズ・キャメロンだと思うと、何やら味わい深い。

*4:アクション映画が大好きなミュージシャン。

*5:4年に一度結成される、ラグビーイングランドウェールズスコットランドアイルランドの選手からなる混成チーム。このチームが、4年ごとにニュージーランド、オーストラリア、南アフリカに遠征してその国のクラブチームやナショナルチームと戦う。メンバーに選ばれる方も名誉だが、相手国選手にとっては12年に一度しか対戦するチャンスがないため、これがホントの一生に一度。