今年は本当に仕事が地獄巡り状態なのだけど、それなのに前回書いたとおり、楽しみにしていた『ランボー ラスト・ブラッド』で逆にメンタル崩壊してしまい。
その壊れた状態で、この夏、狂ったように何度も観ていたのが『ワイルドバンチ』。
1969年の西部劇で、監督は暴力描写の代名詞 サム・ペキンパー。
舞台は1913年のメキシコとテキサスの国境沿い。主人公パイク率いる強盗団は、銀行を襲うも保安官&賞金稼ぎと銃撃戦になり、メンバーの若手エンジェルの故郷メキシコへ。
ところがエンジェルの恋人が、マパッチ将軍とその部隊にさらわれたと知り、パイクたちは部隊に乗り込むも、エンジェルが暴走したり列車強盗する羽目になったりマパッチをはめようとして失敗したり、何だかんだで、最後はパイクたち4名とマパッチ部隊数百名との激しい銃撃戦になる……という。
これを全編通して観るのはもちろんのこと、ラストの壮絶な銃撃戦を何度も繰り返して観てたわけ。
そんなヒマがあるなら病院行けよ、って病みレベル。
激しい銃撃戦が見たければ、他にも映画はある。ベタなところで『ヒート』*1とか。
ただ、パッと思いつくような映画って、主人公は一応「何か」のために戦っている。正義とか家族とか信念とか、悪党でも悪党なりの軸がちゃんとある。
でも『ワイルドバンチ』のパイクたちには、そういう「何か」ってのがなくて、結構ふらふらしてるのだ。
一番若いエンジェルだけは、恋人とか反政府運動とか行動に理由がちゃんとあるけど、パイクはねえ……。
1913年って、銃が法律みたいな無法者時代が終わる頃。パイクたちのような強盗団なんて生きづらくなっていて、何よりパイクは年もとった。手下の制御もうまくできない。
引退したくて最後に大勝負に出たけど成果はなく、逃げた先では巨悪が幅を利かせていて面倒なことになるばかり。
そもそも、パイクは引退したいというけど、その引退生活のしっかりしたイメージがあるわけじゃない。
「定年後は趣味をみつけて楽しみたい」とか言ってる会社員より、見通しがない。
このとき、パイク演じるウィリアム・ホールデンは50歳くらい。パイクの年齢も同じくらいと考えると……。
なんかちょっと、わかる歳になってきてんだよ、私ーーーーーっ‼
うちの会社、マズい空気がぼんやり漂っていて、私はリストラ対象年齢に達してるよなと思うと、ちょっと背筋が冷や冷やしている(過去に2度リストラがあったが、若かったので他人事だった)。
転職が頭をよぎるけど、年齢は気になるし、20年以上も同じ会社で働いてると、自分がよそで通用する人材なのか判断できないし。
今の時代、歳はとっても、次のステージに向けてアクションを起こすことは可能だと、頭じゃわかっちゃいる。
ただ、目先の仕事に体力とメンタルをゴリゴリ削られてしまっていて、ずるずる押し流されてしまっている。
でも押し流されてても楽ではないし、土砂に埋まっていく気分になるだけで。
だから、流れ流れてどん詰まりのパイクが、最後の最後、マパッチを皆殺しにしながら自らも倒れる姿に、思い切りシンクロしてまう。
戦ったところで何も生まないし、生む気もないし、ホントに何にもならない。
でも、終わらせることだけはしてやったぜ!
ざまあみろ、へっへー!
今思えば、仕事に追い詰められてて、終わらせたかったんだろうなあ。強制的に。何もかも。
もう嫌、無理、やってらんね、って時に、信念とか正義とか共感するのは難しい。
夏の私は、ただただ、終わるためだけの銃撃戦が欲しかったのだ。
*1:アル・パチーノとロバート・デ・ニーロがW主演した犯罪映画。監督はマイケル・マン。10分以上もある激しい銃撃シーンが有名だけど、死亡率は意外に低い。