前世戦士の映画日誌

前世が戦士らしい女が映画を観て色々吐き出します 生態日誌です

『PMC:ザ・バンカー』マルチタスクはやっぱり人間に向いてないと思う(がっつりネタバレあり)

f:id:sinok_b:20210911173635j:plain8月は大変でした。先月記事をUPした後、避けられない緊急事態で予期せず実家と東京を2度往復することになったんです。
仕事でタフな状態が続いてたところにそんなことをしたもんですから2度目の往復後に体調を崩し、人生で初めて失神を経験しました。血管迷走神経反射というヤツらしいです。
(このブログで何度も言ってますが、私、昨年過労で休職したPTSD持ち前世戦士です)

いやー、ビックリです。
立ってたはずなのに気づいたら天井が見えてまして。しかも記憶が残っている場所から2mくらい離れた場所だったんでなおさらビックリですよ。
膝や手、顔と頭の傷から推察するに、失神してまず左膝を床につき、次いで右膝もつきつつ右顔面から床に落ちた後、左方向へひっくり返って左後頭部をゴツンとやったようです(『CSI:科学捜査班』の観すぎ*1
お陰様で頭への衝撃は軽かったのですが、左膝と顔はなかなかハードにやられました。

顔はともかく(むしろネタになるので写真撮りまくった)失神が怖くて一時は外にも出られませんでしたが、今は大分体調は戻りました。
まだ左膝が少々変なのですが、こいつのお陰で頭を強打せずに済んだので銀星章*2くらいあげないといけませんね。

そんな状態で観た『PMC:ザ・バンカー』。実は観ようと思って観たわけではありません。
惰眠を貪ろう思っていた土曜日の朝、空腹が睡眠欲より勝ってまともな時間に起きてしまいまして。食事しながら何か観よーとテレビをつけたら、CS放送でちょうどこれが始まるとこだっただけという。
これが思いのほか面白かった。食べたら二度寝しようと思ってたのに、完全に目が覚めちまいました。
今までアフガニスタンに派兵されてる気分*3でしたが、今は朝鮮半島で戦ってる気分になってきました。

韓国と北朝鮮軍事境界線の地下要塞で展開する極秘ミッションを描いたサバイバルアクション。CIAから、北朝鮮の要人を捕らえて安全な場所へ護送する依頼を受けた傭兵エイハブは、11人の部下を率いてDMZ軍事境界線)の地下バンカーに潜り込んだ。凄腕のエイハブの手にかかれば、その任務は10分程度で完遂できるはずだった。しかし、アメリカと中国それぞれの北朝鮮をめぐる思惑に翻弄され、信頼していた仲間たちからも裏切られたエイハブの部隊はバンカー内で行き場を失ってしまう。暗殺者の汚名まで着せされてしまったエイハブが窮地を脱する唯一の方法は、敵の包囲網を突破して北朝鮮最高指導者「キング」を地上へと連れ出すことだったが……。エイハブ役を「神と共に」のハ・ジョンウ、北朝鮮の医師ユン役を「パラサイト 半地下の家族」のイ・ソンギュンがそれぞれ演じる。監督は「テロ,ライブ」でもハ・ジョンウとタッグを組んだキム・ビョンウ。

2018年製作/125分/G/韓国
原題:Take Point
配給:ツイン
映画.comより

この映画、一応アクション映画なんですが、主役のエイハブはほとんどアクションしてません。なぜなら確保対象の「キング」を連れて指令拠点に戻った後、仲間の裏切りに合って義足を壊され*4、動けなくなるんです。
で、あとは傭兵仲間が身に着けているボディカメラやバンカー内にコロコロ放った偵察カメラ(ホントにコロコロしてるんです)映像、そしてバンカーの設計図を頼りに傭兵仲間や「キング」の医者に指示したり、傭兵会社本部に応援要請したりします。
アクション(ほぼ銃撃のみ)は仲間たちが頑張ってる姿を偵察カメラ越しに観るだけ。私たちはエイハブとほぼ同じ視点でしか状況を観ることができませんし、同じ情報しかもらえません。
ボディカメラや偵察カメラの映像は動きに合わせてブレるため、ちょっと『ハードコア』*5を思い出したりして。
そのため、大半は独り床の上にいるばかりエイハブなのでフィジカルなアクションはほとんどありませんが、心のアクションは『ミッション・インポッシブル』*6でした。

わかる。
わかるよ、エイハブ。
お前の気持ちが私にはよ~~~くわかる!

ただでさえ予想外の反撃と裏切りでショックを受けてるとゆーのに、本部は政治判断を優先するわ、エイハブをスケープゴートにしようとするわと容赦なし。
当然、エイハブは本部相手に猛抗議とバックアップの要求をし続ける。と同時に、仲間は分断されて危機に陥り各々が「指示をくれ!」と求めてくるので、そちらの誘導もしなきゃいけない。
一方で確保対象のキングは死にかけていて、北朝鮮の医者を見つけてビデオ通話で指示を仰ぎながら、心臓マッサージや点滴の処置もする。その医者を指令拠点に連れてくるべく、仲間だけでなく医者も誘導。
ところがキングは心臓が悪いので、ちょっと目を離すとまた死にかける、ということを繰り返す。

これだけでも大変なのに、アメリカは証拠隠滅を兼ねて爆撃するし、敵側は戦車を投入(地下に……戦車……?)して仲間は全滅、自分も負傷。
ついでにアメリカにいる妻は、陣痛が始まり病院で出産中

とう事態にね、一人で対処して考えて決断して指示して冷静さを保てとか。

そのマルチタスク、無理じゃね?
適応するの、無理じゃね?

エイハブ、私と一緒に病院行こうぜ?(産科ではない)

あのですねー。
例え命の危険があろうとも、現場で銃の撃ち合いやってる方が、実は気が楽っ
てもんなんですよ。
究極のところ、敵を殺して自分が生きてりゃOKですから。目先の作業に集中すればいいだけなんです。

くっそ大変なのは、様々な事件が起こる度に、現場や同僚や上司や幹部や関連部門や親会社や現場の長やシステム会社やなんやらの間に入って、連絡・調整・説明・指示をして回ること、それらをどうやるか短時間で考えて決めていくことなんです。
その結果、作業する側が徹夜になって体力は削れる場合もありますが、神経削るのはこの間に入る一連のあれこれの方なんですよ。場合によっては前線で作業もしますし。
それを各案件同時進行でやるのは、マジでキツイ。
そして、これが私の日常業務であります。

え?
幹部や部課長が決断する方が大変だって?
普通はそうですね。
でもさ、だから高い給料もらってんでしょうが

先日ふと思いました。
なんでこのミーティング、参加者は私以外全員部課長職なのに、私が場を仕切ってやること決めて、仕事を各部門に割り振ってるんだろうって
うちの部長は最初から最後まで一言も発しなかったし。

こちとら、役無し管理職ですからね。
肩書無いですからね。
私の担っている仕事はうちの会社としては少々特異なので、実は見合ったポストがないんですよ(上司にも言われた)。

なのにです。
うちの会社は
肩書無かったら最高評価をもらっても「最低評価の課長」より年収が高くならないように給与設計されてますからね。
どれだけ頑張っても、給与の天井は見えているわけで。

だからね、エイハブが「報酬上げろ!」という気持ちが、痛いほどどころか激痛として感じるわけですよ。
こんな無茶苦茶なマルチタスクの上に責任転嫁されまくりの仕事、金でも貰わなきゃやってらんねーよ。

映画の最後ですが、ミッション完了後にもひと騒動(かなりの大騒動)があり、そこでエイハブは傭兵としての最低限の義務は果たしつつ、自分の人間としての意思を通したという形になりました。
多分、彼はこの後には傭兵会社はやめるでしょう。少なくともこの会社は。

うん、そうよね。
それがプロとしての、矜持と決断よね。
私も貴方を見習うわ。
だからエイハブ、とりあえず一緒に病院行こうぜ。

*1:アメリカの超有名な警察ドラマ。刑事の勘より証拠による捜査が主役。とはいえ、どんなわずかな証拠も見つけてしまうので、ある意味究極のご都合主義ドラマともいえる。

*2:アメリカ軍の勲章のひとつ。戦闘中の勇敢な行動に対して授与されるもので、軍人が出てくる映画やドラマによく出てくる

*3:『ローン・サバイバー』の記事をご覧ください

*4:以前の作戦で右足を失い、義足になったという設定。殺す気だったのに、なぜ生身の部分じゃなくて義足を撃ち続けたのかは考えないことにした

*5:ほぼ全編が主役の目を通して撮られているアクション映画。ウェアラブルカメラで撮影。無茶苦茶でものすごく面白いけど気を付けないと酔うので、酔いやすい人は画面から離れて視聴しましょう

*6:トム・クルーズがアドレナリン出したさに作り続けているアクション映画。