2020年の大晦日は姉の一人と過ごしたのですが、話の流れでこの『二ツ星の料理人』をを観ようということになり、うっかり観ながら年越ししてしまいました。
つまり、2020年最後に観た映画も、2021年最初に観た映画もこれ。
やらかした感満載。
「世界にひとつのプレイブック」「アメリカン・ハッスル」、そして「アメリカン・スナイパー」と3年連続でアカデミー賞にノミネートされたブラッドリー・クーパーが、問題を抱えた天才シェフを演じた主演作。一流の腕を持ちながら、トラブルを起こし、すべてを失った料理人アダム・ジョーンズ。パリの二ツ星レストランから姿を消して3年後、アダムは料理人としての再起を図るため、ロンドンの友人・トニーのレストランに「この店を世界一のレストランにしてやる」と、自分を雇い入れる約束を取り付ける。かつての同僚ら最高のスタッフを集め、新しい店をオープンさせるアダムだったが、未解決のままの過去のトラブルの代償が大きくたちはだかる。監督は「8月の家族たち」のジョン・ウェルズ。クーパー扮する主人公アダムを支える仲間役で、シエナ・ミラー、ダニエル・ブリュール、オマール・シーが出演。その他にもユマ・サーマン、エマ・トンプソン、アリシア・ビカンダーら実力派キャストが集結。
素行が悪くて業界から叩き出された元二ツ星シェフが、三ツ星を取るため再起を図るけど、やっぱり傲慢が過ぎて周囲と衝突。でも最後は心を入れ換えて、仲間も恋人もできてハッピーエンド。
っていう映画が嫌いなわけじゃないんですよ、実は。
この手の映画の筋は定石どおりだから、あまり考えなくていいとこが好きなんですよ。
その分、役者を愛でる暇があるし、そこがいまいちでも、厨房や業界の舞台裏が面白かったりするし。
それすらダメでも、出てくる料理が美味そうなら花丸というくらい、料理人映画は楽しみのセイフティ・ネットがたくさんあるのです。
そもそも私、映画に対するセイフティ・ネットって、たくさん持ってますからね。
テンポは悪いけど話は面白いとか、脚本はダメでもカメラがいいとか、演出はイマイチだけど役者が魅力的とか。
全てが満点の映画なんてそう無いんですから、基本、何見てもセイフティ・ネット発動ですよ。あとは好みかどうかってだけで。
そして私は、「いろいろダメだけど、やりたいことだけは分かったからいい」という、超頑丈なセイフティ・ネットを常備してるんでね。
ところが、その最も頑丈なセイフティ・ネットすらブチやぶり、久々に地面すれすれまで落ちたのがこの映画。
普段は本能的に避けてるんだけど、年末年始で感覚狂ったか。
私はこういう映画を「ね、わかるでしょ?映画」と呼んでいる。
これは、「ジャンルはこれで、主人公はこんなキャラで、主演は○○。回りにはあれとこれなキャラ。それでだいたい、ね、わかるでしょ?映画」の略。
定石ストーリーを言い訳にして、雑なキャラ設定とあらすじ以外、作りたいものも撮りたいものも、見当たらない映画はダメなんです。
この映画の場合は、「傲慢な元二ツ星シェフをブラッドリー・クーパーが演じてるから、ね、わかるでしょ?」で、押しきろうとした映画なんですよ。
クーパーって愛嬌といい奴オーラがあるから、『アメリカン・スナイパー』みたいな役柄でも、私は彼を嫌な奴とは思えなかった。
だからクーパーを主人公のアダムにもってくれば、「傲慢だけど憎めない男」だと観客が勝手に認識してくれると思ったらしい。
いや、さすがにこの演出じゃ無理だから。
アダムのやってることがあまりに酷すぎるし、「実はいいトコあるよエピソードだ」として提示された場面は、あまりに唐突過ぎて、ちっともそうは思えない。
やはり、過去なり人物なりを想起させるシーンはちゃんと作っておくべきだったと思うの。
だって、観てるこっちも嫌な気分になるんですよ。いつもあんなに可愛いクーパーが、ひたすら嫌なエキセントリックな奴で。
アメリカ人の考える星つきシェフって、エキセントリックで嫌な奴ってイメージなのかね?
せめて料理くらい美味そうなら良かったんですけどね。
せっかくの料理もチラ見せ程度だし、最先端の調理法だかなんだか知らんが、味が全く想像できなくて。
あんた達が私に何をみせたかったのか知らんが、全部失敗してるよ!
じゃあなぜこの映画がギリギリ地面に激突しなかったかと言うと、アダムを支えるレストランオーナーのトニーが可哀想で!
彼はアダムを愛してるけど、アダムはストレートなので片思いなんですね。しかもアダムはそれをわかっていて、トニーに散々甘えるというクズ野郎っぷり。
報われないトニーのために、最後まで頑張って観ましたよ(なに、この動機)。
ということで、2021年は、人様の恋路を応援して始まりました。
いったいどんな年になるのやら。