前世戦士の映画日誌

前世が戦士らしい女が映画を観て色々吐き出します 生態日誌です

『君の名は。』映画としては面白いんだけれども(ネタバレあり)

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公開当時は完全スルーしたんですが、友人(同世代)との会話の流れで、観て感想よこせという話になってしまい(なんかこんなん続いてるな)、観ましたよ。
驚くなかれ、なんと私、ほぼ事前情報無しで観たんです。
あんなに世間で騒がれてたのに。

雲のむこう、約束の場所」「秒速5センチメートル」など、男女の心の機微を美しい風景描写とともに繊細に描き出すアニメーション作品を手がけ、国内外から注目を集める新海誠監督が、前作「言の葉の庭」から3年ぶりに送り出したオリジナル長編アニメ。「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」などで知られる田中将賀がキャラクターデザインを手がけ、「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」などスタジオジブリ作品に数多く携わってきた安藤雅司作画監督、主題歌を含む音楽を人気ロックバンドの「RADWIMPS」が担当した。国内興行ランキングでは公開から29週連続でトップ10入りを果たし、興行収入250億円を超える歴史的な大ヒットを記録。第40回日本アカデミー賞ではアニメーション作品として初の最優秀脚本賞を受賞した。1000年ぶりという彗星の接近が1カ月後に迫ったある日、山深い田舎町に暮らす女子高生の宮水三葉は、自分が東京の男子高校生になった夢を見る。日頃から田舎の小さな町に窮屈し、都会に憧れを抱いていた三葉は、夢の中で都会を満喫する。一方、東京で暮らす男子高校生の立花瀧も、行ったこともない山奥の町で自分が女子高生になっている夢を見ていた。心と身体が入れ替わる現象が続き、互いの存在を知った瀧と三葉だったが、やがて彼らは意外な真実を知ることになる。声の出演は瀧役に神木隆之介、三葉役に上白石萌音。その他、長澤まさみ市原悦子らが出演。

2016年製作/107分/G/日本
配給:東宝
(映画.comより)

映画としては、素直にすごく面白かった。
絵柄は好みじゃないんですけど、全体の絵面、特に光の表現が素晴らしく、ワンカットワンカット、丁寧に撮られた写真のようで、本当に美しかったです。
前半後半で語り手が変わったり、物語のトーンが変わるのも、一粒で二度三度美味しい。キャラの背景もわかりやすいし、テンポも良いし、飽きずに最後まで面白く観れました。

ただ、最後のギリギリまで、この映画が何を私にみせたいのか、だけがわからなかったんです。

隕石による集落全滅の下りから、これは東日本大震災含め、昨今多発している大災害をイメージしているんだろうと思ったんです。
でもそれにしては、瀧が死について考えたり、そこから自分の生き方について考えたりするわけでもない。
災害から集落を救おうとする中で、瀧や三葉が自分自身に気づくとか、自信を持つとか、大人への一歩を踏み出すという訳でもない。

入れ替わった記憶が消えていくという設定だからかもしれませんが、あれほどの衝動に突き動かされて行動したのに、二人に残ったのは、繋がっているはずの大事なものがあったのに思い出せないという、喪失感だけで。

ここでもう、頭の中は、はてなマークだらけですよ、私。
だって、あんな災害から人々を救ったのに、そのことが彼ら、少なくとも瀧の人生に影響を与えていないんて、そんな話ってありなの?
瀧が就活に苦労していることが描かれてたけど、内定取れないって展開は当たりだよ。「スーツが似合ってない」セリフに象徴されてるけど、瀧は成長してない、大人になってないわけです。

そして、散々擦れ違いまくった末、ついに二人が出会い「君の名前」を知ることで、二人は欠けていた大事なものを取り戻したわけですが。

そこで、やっぱりこれは、思春期の自分探しの物語なんだと腑に落ちました。
淡すぎて恋愛映画と思うのは無理だから、そこは許して。

ただ、疑問は残ったんです。

あの大災害は何のためにあったの?
この話、交通事故とかで十分成立するんじゃないの?
もしかして、大災害まるごとマクガフィン!?*1

で、途方にくれて、観た後にレビューや解説を読みまして、どうやらこれが、「ポスト・エヴァ」「セカイ系」と呼ばれるものの一種、もしくは進化形らしいと知りました。理解はできてないけど、私が「半径2mの世界観」と呼んでいるものと近い気が*2
大災害は、ホントにマクガフィンだった。
いくらなんでもデカすぎる。

なにせ私、セカイ系の先祖であるらしい『新世紀エヴァンゲリオン』を、早々に挫折したクチでして。放映時は二十歳くらいだったと思いますが、世界観や登場人物も、まったく私のハートに響かなかったんですよ。
エヴァは、それまでアニオタでもあった私が、一気にアニメから離れるきっかけになりました。

もともと、青春や思春期に焦点をあてた作品と私は相性が悪い、ってのもあります。思春期の私は、一秒でも早く大人になりたくて、今の自分探しより、どんな大人になるかばかり考えてました。
しかも、その大人の定義がショーン・コネリーとか、『鬼平犯科帳*3長谷川平蔵とかだし。
鬼平』の影響は特にすごくて、蕎麦屋で日本酒飲む大人になりたい」とか言ってました。
実際に大人になった自分は下戸で、蕎麦屋では大人しく蕎麦だけ食ってますが。

とにかく、前回の『二ツ星の料理人』とは真逆で、映画としてはセイフティ・ネットが不要なほど面白かったけど、「面白い」以外の感情が伴わなかった映画でびっくりしました。
友人には、細かいことは省いて「面白かった」とだけ伝えました。

そんな私の目下の悩みは、同じ新海監督の『天気の子』を観るかどうか。
これもまったく情報入れてないんですけど、私、どうすればいいんでしょうか(テメエで決めろ)。

 

*1:映画や小説に使われる、物語の展開上は必要で重要なモノ・出来事・人だけど、他のモノでも替えが効く要素。ヒッチコックが使いまくって知られるようになった言葉。『M:i:Ⅲ』では明確に使われていて、トム・クルーズは「ラビットフット」なるものを入手しようと頑張るけど、結局「ラビットフット」が何かはわからない。わからなくても全然困らない。気にする人は、ものすごく怒る。

*2:主に音楽で、僕と君とその仲間たちのつながりと共感だけを描いた歌詞を、私は勝手にこう呼んでいる。内容が、自分のことに引き寄せられない場合が多く、聞くものに困る。

*3: 時代小説作家 池波正太郎の人気小説。江戸時代が舞台で火付盗賊改方の長官、長谷川平蔵が盗賊を捕まえるハードボイルドっぽい渋い話。もちろん二代目中村吉右衛門主演のドラマも観た。池波正太郎作品で描かれる世界は、戦士な私にヒットしすぎて、長いこと女の自分を見失う羽目になった。