前世戦士の映画日誌

前世が戦士らしい女が映画を観て色々吐き出します 生態日誌です

『クリスマス・キャロル(1970年版)』毎年同じ日に映画を観るということ(ネタバレあり)

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基本、他殺体のある映画ばかり観ている私ですが、ここ10年ほどは、毎年クリスマス・イヴにこの『クリスマス・キャロル(1970年版)』を観る習慣がありまして。

なぜこれかと言うと、もともとディケンズの原作が好きってのもありますが、とにかく歌が良いんですよ。それに、ものすごく脳に残りやすい曲が多くって。

クリスマス・イヴの晩、金貸しで因業ジジイのスクルージの前に、7年前に死んだ共同経営者のマーレイが現れて、いまから過去・現在・未来の幽霊がやってくるという。幽霊たちに様々なクリスマスを見せられて……という話。

ロンドンの下町に繰り広げられる人々の喜びと悲しみをヒューマンなタッチで綴ったミュージカル。製作はロバート・H・ソロ、監督は「ミス・ブロディの青春」のロナルド・ニーム、文豪チャールズ・ディケンズの同名小節を「ドリトル先生不思議な旅」のレスリー・ブリッカスが脚色、同時に音楽を兼ねる。(途中略)出演は「いつも2人で」のアルバート・フィニー、「危険な旅路」のアレック・ギネス、「シャイヨの伯爵夫人」のエディス・エバンス、「史上最大の作戦」のケネス・モア。その他、パディ・ストーン、デイヴィッド・コリングス、リッキー・ボーモン、スザンヌ・ニーブなど。(映画.comより)

あ、「この女、10年もクリスマス・イヴに1人かよ」と思った方、いますね?
この10年ずーっと相手がいなかった訳じゃないんですよ。一度、当時の彼氏に強制的に観せたことがあったんですが、いかんせん古いミュージカルなもんだから、苦手な人は内容以前に無理でして。
それに、そもそも私、スクルージ同様、イヴだろうがなんだろうが、いつも仕事してたんでね……。

観る状況はともかく、毎年同じ時期に同じ映画を観てると、年によって気になるポイントが違うことがあり、年末総決算にはいい習慣のように思います。
基本は「心が洗われるわー」とほっこりするんですが。

「借金棒引きにしてくれたからって、いきなり態度が変わるとか、所詮は金かよ」という年とか。
「棺の上で歌って踊るって演出、ちょっと人としてどうなのよ」という年もあり。
逆に同じシーンで「死んでここまで喜ばれる人生って、やろうと思ってできるもんじゃねーな」と感心したり。
一体、何があったんだよ、当時の私。

ただ、老人スクルージを演じたアルバート・フィニー(写真右)が当時34歳で、幽霊のマーレイを演じたのが当時56歳で後にオビ=ワン*1になるアレック・ギネス(写真左)だってことに、わかってても慄いてしまうのは、毎年同じです

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今年は、よもや自分がするとは思いもしなかった休職をする羽目になり、先日の記事に書いた通り、数日前に会社の親しい方を亡くしたりもあって、実はこの映画のことなんてすっかり忘れてたんですよ。
クリスマスってことはわかってたんですが、気持ちの方がどうにも。

特に、訃報はかなりダメージが大きくて、22日に記事を上げてから、ちょっと記憶が7割くらい飛んでます。
今朝メールを見たら、スマホゲームの課金のお知らせがすんごい数届いていて、1件数百円ずつみたいだけど、合計金額は不明。ゲームした記憶はあるんですが、時間の感覚と課金した記憶が曖昧で。
来月の請求が、マジでスクルージさん棒引きにして、って気分。

そんなこんなでちょっと気力が戻ってきたのが、25日。この日はあれこれあって、そうだやっぱり観よう!と思った次第です。

今年は、今までで一番、アルバート・フィニーの演技が刺さりました。
スクルージが改心して目覚めた、クリスマスの朝のシーンで。目覚めるまで、彼は将来死んだ自分が落ちるであろう地獄にいたのです。

"But, I'm alive. I'm alive !"(でも、生きてる。わしは生きてるんだ!)

そして彼は力強く宣言する。

"I'll begin again"(また、始めるんだ!)

もうね、内容は22日に観た『エスケープ・フロム・L.A.』と何一つ共通点はないんですが、私が受け取ったメッセージの意味合いは一緒でね。
とにかく、「やり直せやり直せ」と言われている気がします。

実は、訃報が届く直前に書いていて途中になってる記事ですが、『パピヨン』なんですよ。無実の囚人が脱獄する話。
脱獄自体のことには、全く触れてないんですが、やっぱり無意識に「やり直す映画」を選択している気がします。

ただ、今年思ったのは「やり直せ」だけじゃない。

 

最後にもう一度、亡くなった方の話を、自分のためだけに書く。
彼とは3年間、同じ支社で仕事をした。

私が異動で地元の支社へ戻ることになり、テレビ会議であいさつをした時のこと。
当時、別のオフィスにいた彼はわざわざカメラを切り替えて、彼の部下たちと「しのぶさん、今までありがとう!」メッセージボードを掲げるという、サプライズをしてくれた。めちゃくちゃ嬉しかった。

その後は、会う機会があってもお互い軽口ばかりで、ちゃんと面と向かって「ありがとう」と伝えたことがなかった。

休職中なので細かいやり取りは会社の皆に手間をかけると思ったし、そもそもショックでぼろぼろだったから、香典も弔電も出していない。当然、葬儀にも出ていない。
だからお別れも言ってない。

でも、彼なら「ええんよ、しのぶさん。そんなことせんでも、わかっとるけぇ」と言うって、それもわかってる。わかってるんだけどさ。

だから、この映画の最後の曲を、貴方へ手向けとさせてください。

貴方のしてくれたことの全てに。
ありがとうございました

 

 

*1:スター・ウォーズ』の超有名キャラ。アレック・ギネスはオビ=ワンと同一視されることを毛嫌いして、出演したのを後悔しているとまで言った。オビ=ワンはダメで、このマーレイはいいのかと思うと、個人的には複雑なんだが……。