前世戦士の映画日誌

前世が戦士らしい女が映画を観て色々吐き出します 生態日誌です

『ジェームズ・キャメロンのSF映画術』神のような狂人たちの集い


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前回、最近ジェームズ・キャメロンのことを考えている、と書いてましたが、そのきっかけがこれ。『ジェームズ・キャメロンSF映画術』。

キャメロンとゲストとの対談を中心に、映画監督や俳優、スタッフやライター、学者等々、SFに関わる人々が語る番組で、全6回。これをMovie Plusで放送しています。今は第3回まで観たところ。

どうも、最近出版されてる『SF映画ジェームズ・キャメロンと6人の巨匠が語るサイエンス・フィクション創作講座』って本と内容がリンクしているようです。
各回にテーマを設け、ざっくり映画史を追うようなところもあり、名前だけ知ってた古ーーーーーい映画も出てくるから勉強になる。

何より、引用通りキャメロンの対談相手がジョージ・ルーカススティーヴン・スピルバーグリドリー・スコットギレルモ・デル・トロ等々*1SF映画史を作ってきた当人たちで豪華絢爛。
その絵面だけでご利益がありそう

大学生の頃、一時期SF小説にどっぷりハマりまして。
他校で『ブレードランナー*2を題材にした公開講座をやっていて、それを受講したのがきっかけでした。原作者のフィリップ・K・ディックから始まって、ハヤカワSF文庫はひととおりおさえたと思います。
私の専門は中世ヨーロッパ史(前世の自分史ともいう)だったんでSFとは対極なんですが、若い頃に過去と未来の両方を学んだことは、自分の肥やしになっていると思う。

ただ、私には致命的な弱点がありまして。
言葉で描写された情報をビジュアル化する能力が、壊滅的にないんです。どんなに素晴らしく写実された文章でも、頭の中に浮かぶ映像は、辛うじて走り書きのスケッチもどき程度……。
普通の小説に出てくる現代日本の描写でそれですからね、SF小説なんて脳内画用紙は常に白紙。いいとこ、「宇宙人」って書いて、丸で囲って終わりですよ

映画監督の頭の中は、いったいどうなっているんだろう。
番組で取り上げられてた映画の中では、『メッセージ』*3、あれはすごい。映画観た後で原作読みましたが、あの文章からよくもまあ、あんな宇宙人の姿と文字を映像化したなと。

改めて思ったのは、SF映画というものは、とにかく全てにおいて細部をどれだけ作り込めるかにつきるということ。
SF映画に限ったことではないんですが、特にSFの場合は、「ありのまま」が嘘くさい。
目で見えるものも見えないものも、ありとあらゆるものを、ゼロベースから考えて、徹底的に創造する。

よく、神は細部に宿るって言いますけど、あれは逆で、凡人にはあり得ないほど細部にこだわれる奴が神なんですよ。
少なくとも、「造物主」って意味での神ですね。

この番組に取り上げられる映画監督は、想像力が半端じゃない上、それを現実にするためなら何でもする連中ですよ(褒め言葉です)。
映画監督なんて大なり小なり狂ってる人種だと思ってますが(褒め言葉です!)、SFやファンタジー系を好むタイプは、特に顕著な気がします。
みんな少年ようにキラキラした目をしてますけど、映画の中のフランケンシュタイン博士*4も同じ目をしてるよね……。

だから、もし彼らと話す機会があるのなら、ぜひともひとつ伺いたい。
あなた方の作る映画に出てくるマッドサイエンティストと、あなた方自身とは、いったいどこが違うのかと。

ここまで書いてて思い出しましたが、冒頭の「キャメロンについて考えていたこと」は、SFとは全く関係ないことでした
だから、その話はまた別の機会にでも。

ちなみに私、昔、上司から「神は細部に宿るんだぞ!」って叱られたことがあります、会議資料作ってる時に
会議に神は要らんと思う。

 

(追記:2020/12/20)

本の方も買ってしまいました。『SF映画ジェームズ・キャメロンと6人の巨匠が語るサイエンス・フィクション講座』。やはり番組とセットです。
フルカラーで内容も濃い。読みながら観るとさらに楽しい。電子書籍じゃなくて、ぜひ紙で買ってください。

 

*1:順に『スター・ウォーズ』、『エイリアン』、『未知との遭遇』『E.T』他多数、『パシフィック・リム』の生みの親。そしてキャメロンは『ターミネーター』『アバター』の生みの親……って書くと、改めてなんかすごい。

*2:原作はフィリップ・K・ディックの『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』。監督はリドリー・スコット。脱走レプリカント(人造人間)を捕まえるブレードランナーの話。とりあえず観とけSF映画の一つ。

*3:原作はテッド・チャンの短編小説「あなたの人生の物語。地球にやってきた宇宙人と関わった言語学者の話。原作は正直、難解なところが多く、映画を頼りに必死で読んだ。

*4:メアリー・シェリーの小説『フランケンシュタイン』の主人公。映画化作品多し。フランケンシュタインは怪物の名前じゃなくて怪物を生み出した博士の名前なんだが、勘違いしている人は多い。「怪○くん」のせいだろうか……。