前世戦士の映画日誌

前世が戦士らしい女が映画を観て色々吐き出します 生態日誌です

『エクスペンタブルズ2』ジャン=クロード・ヴァン・ダムが観たくなっただけです

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例の件が悲しいので、メンタルヘルスのためにTwitterで『映画秘宝』の公式と町山さんをミュートしたら、流れてくる映画関連のtweetで、ジャン=クロード・ヴァン・ダム関連の構成比が一気に増えてしまいました
映画関連については、基本、この人のtweet面白ーい、程度のノリでフォローすることが多いんですが、と言うことはつまり、私は無意識にヴァン・ダム好きな人をフォローしていたということで。

私、テレビで放映された『サイボーグ』を見て以来、ヴァン・ダム、好きなんです。
実は東京に転勤になるまで、彼の劇場公開作品は、結構映画館で観てました。転勤してからクソ忙しくなって、優先順位が下がったんですね……。

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ヴァン・ダム、確かに好きなんだけど、今の気持ちを正確に言うと、若いころに惚れていて、未練ってほどの執着はないんだけど、時々Googleで名前を検索して、いま元気にやってるのかしら?って、探すのがやめられない、というような感じの好き、なんですよね。

ちなみに、私は小学校の頃の初恋の男子で、それをやってました。
しかも数年前に本当に見つけてしまい(彼の勤務先のHPに顔出し経歴付きで出てた)、既婚なのは想定内としても、あまりの変貌ぶりに後悔しましたよ。学校一の美少年だったのに、すっかり貫禄ついちゃって……。

それで憑き物が落ちたようにどうでもよくなったんですが(自分勝手)、ヴァン・ダムの方は、絶妙なラインを保っていて、どうしても離れるきっかけがつかめない
ついでに言えば、ドルフ・ラングレンも似たような位置づけなんですが、ヴァン・ダムの方がより気になる。
何故なのかは、自分でもわからん。

というわけで、無性にヴァン・ダム映画が観たくなったんですが、昔の男(自分のもんだったみたいに言うな)なので、手元には『ユニバーサル・ソルジャー』*1ぐらいしかなく。
もうちょっと最近のが観たくて配信も探したけど、あんまりないのね、ヴァン・ダムって……。私の探し方が下手なの?
CATVでやってた『ハード・ソルジャー:炎の奪還』*2は録画があるけど、これ、休職中に5回くらい観たので(どんだけ……)、ちょっといま気分じゃないし。

で、安心安定の『エクスペンタブルズ2』にしました。

シルベスター・スタローン監督・脚本・主演のもと、新旧アクションスターが集結して話題を呼んだ「エクスペンダブルズ」(2010)の続編。自らを「消耗品(エクスペンダブルズ)」と名乗る傭兵集団のもとに、東欧の山岳地帯に墜落した輸送機から積荷のデータボックスを回収してほしいとの依頼が舞い込む。それはごく簡単な仕事に思われたが、しかし、データボックスに記録された機密データを狙う凶悪な武装集団が現れて行く手を阻み、エクスペンダブルズは大切な仲間のひとりを失ってしまう。スタローンをはじめ、ジェイソン・ステイサムジェット・リードルフ・ラングレンらが再集結し、前作ではカメオ出演だったブルース・ウィリスアーノルド・シュワルツェネッガーも本格出演。ジャン=クロード・バン・ダム、チャック・ノリスが初参戦する。スタローンは主演に専念し、「コン・エアー」「トゥームレイダー」のサイモン・ウェストがメガホンをとった。

2012年製作/102分/PG12/アメリ
原題:The Expendables 2
配給:松竹
(映画.comより)

何度も観てますが、映画館で私の沸点最高になった、スコット・アドキンスに構えさせたナイフをヴァン・ダムがキックしてリアム・ヘムズワースの心臓を刺すシーン、やっぱりいい!
ヴァン・ダムの蹴りを見せるためだけの、あの非効率な殺し方が、いいんですよねえ……(しみじみ)
盤を手元に置くようになってから、いったん普通に観た後、戻してスロー再生でもう一回観る、というのが定番になってます。
もちろん、最後のスタローンとの対決シーンでのキックも。

ああ、もう、ヴァン・ダムってほんと、足技がキレイ!
開脚がキレイ!
くっそ、この足技さえなかったら、惚れたりなんかしなかったのに!

それにこの映画での、ちょっと壊れちゃってる感がまたよくて。ヴァン・ダムって、少しばかり何かが欠けてる男が本当に似合います。
多分、本人に何かが欠けてるからだと思うんですが(私は長所だと思ってる)、そういう自分の良さを分かっていて作品を選んでるところが、とても好きです。

ここ数年は雑なチェックしかしてないんですが、なんていうかなあ、どんな映画に出ていても、映画の出来はともかく、ヴァン・ダムはヴァン・ダムであり続けてくれるところがいいというか。
小学生時代の初恋の相手と違い、うっかり見つけても、映画の出来はともかく(2回目)ヴァン・ダムはいつでも大丈夫。

ましてや『エクスペンタブルズ2』は、好きな人しか出てこないし、好きなモノしか出てこないし、好きなコトしか起こらないので、観ていて全身全霊を映画にゆだねられる安心感
この映画観てる時って、アドレナリンじゃなくて、エンドルフィンが出てるんじゃないかな、私の脳。

復職2週目ですでに脳が疲労して眩暈がしており(本当)、秘宝の件で悲しくなり、心身疲れた今の私には、やっぱり映画が一番だよね。

映画っていいなあ。
映画って、本当にいいもんですね~(水野晴郎調)。

*1:ヴァン・ダムとドルフ・ラングレンが共演する素敵な映画

*2:ヴァン・ダムが、誘拐された女の子を助けるために頑張る映画。表向きの仕事が肉屋というのが、なんだか好き

雑誌『映画秘宝』についての会社員で読者で女の私のとりとめのない愚痴

今週、映画好き界隈を騒がせた雑誌『映画秘宝』のDM問題の件、ことのあらましを引用するなりして書くべきなのだろうけど、それを文字にして残すと自分のメンタルへのダメージが半端ないので、Twitterとかしないので知らないよ、という方は、この記事スルーしていただくか、検索していただければ。

ただ、私が、気持ちを文章にして吐き出さないと辛いので書いてます。
自分でも驚くほどショックを受けているので、自己陶酔かよと自分でツッコみたくなるんですが、ちょっと今月号が凄く嬉しかったので、落差が……。

いま、読み返したらえらく長いです。ほぼ、自分語り(それはいつも通りか)の愚痴です。すみません……。

 

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まず、会社員の私として思ったこと。

今回の不祥事に対する対応(謝罪文の発表)が、①不祥事の当事者②秘宝③出版社、と、私の知る限り3つでているのだけど、①は論外、②はお粗末としか言えません。
組織としてというより、内輪向けの言い訳にしか見えなかったから。
簡単に言えば「その文章、表に出す前に弁護士に見せたの?」と思ったんですね。

うちの会社だと、社内外のトラブルや不祥事が発生した場合、法務か人事に相談します。場合によっては法務・人事経由で、社が契約している弁護士にも相談します。
相手方と会ったり文書を交わす際には、弁護士に同席、添削してもらうこともしばしばです。

これは、企業の謝罪はテンプレだとか、誠意があるとかないとかってことではありません。
相手の心情を組んだ謝罪になっているか、企業の意図が誤解なく伝わる内容になっているか、企業として勘違い、意識不足、対策不足の点はないか、法務部門なり弁護士なり専門家にチェックしてもらう、ということです。
まあそれを、訴訟になるのを避けるためだろ、と言われれば、それはそれで間違いではないんだけど。

しかし、そういうシステムを作っていても、現場ってなるべく内輪で解決しようとする傾向があるんですよね……経験値高い人ほど。
私の部署は会社の中核にあたるところなので、現場のトラブル報告も各種集まってくるんですが、何度「ちょっと待った!法務or人事に確認するから!」と現場を止めてきたことか。
たまに事後報告(何とかしようとして現場の手に負えなくなった)もあって、そのときは上司がブチ切れます。

それはともかく、そうした私の経験から言えば、③は「第三者がみている内容だな」と思いました。
もし②の内容を弁護士や法務の専門家に見せてOKが出てたのなら、契約解除するなりした方が……仕事できてないから。

そして、コンプライアンス教育して。思想とか誠意の問題じゃなくて。俺は分かってるとか思いこまずに、外注してでもコンプライアンス教育して。いまの時代、企業の必須スキル。
で、過労が原因なら、出版業界、本気でメンタルヘルス考えて。
ま、うちの会社も、コンプライアンスメンタルヘルスもヤバいから、よそ様の業界のこと言えないけど!

と、ここまでは、会社員の私の話。

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ここからは、一読者としての私の愚痴です。
意見ですらありません、自分語りです、愚痴です。

私は、毎号とは言いませんが、少なくとも大判になってからの『秘宝』は比較的読んでいた人間です。なので、映画好きの中二病男子っぽいノリが中心(ほとんど?)だった時代からの読者です。

そして、私は女性です。秘宝に載っているような映画を、好んで観ている女性です。

私はアクション映画もバイオレンス映画も、B級映画も好きです。
例えば、『レッド・スコルピオン』でドルフ・ラングレン、『サイボーグ』でジャン=クロード・ヴァン・ダムが好きになり、『ユニバーサル・ソルジャー』は眼福という女性です。
『エクスペンタブルズ』はスタローンより、ドルフ・ラングレンが目当てで観たんだよ! ヴァン・ダムも出た『2』は祭りだったよ!

だから、マチズモ的なる(と、一括りにされてしまう)ものを好む傾向は、私が社会生活で刷り込まれたわけでも、男性社会で生きてくために無理に身に着けた擬態でもなく、元々私の中にもあるものの一つなんです。

でも私は女性です。そこが、私が生きてく上でややこしい。

社会生活を送る女性として、マチズモに怒りを覚えることはしばしばです。女性が不当な目に遭うことに腹を立てる、一女性です。
昔は、秘宝に載るような映画を観に行けば、観客で女性は私だけ、なんてことはザラでした。地方だったのでなおさらです。何か勘違いした男性客からナンパされたり、痴漢されたこともあります。
そういうのが嫌で、アクション映画は好きだけど映画館にはいかないって女性、たくさんいたのかも。

男性的なものが好きな自分、でも女性である自分の間で、私はいつも自分の立ち位置がグラグラしてました。
男性と話している方が話題が合うので楽しいけれど、男女の社会的な話になると急に疎外感を感じます。女性と話していると異物のように見られることが多いけど、生きづらさを共有できるのは女性同士です。
男性と同じような目線で女性を過剰に批判したり、逆に男性に対して過剰に攻撃的になっていた時期もあります。

最近若い友人が増えて新しいモノの見方に気づいたことで、やっと、男だ女だという二極の立ち位置ではなく、私は「しのぶさん」という個体でいいんだなあと、思えるようになったところです。
このブログで事あるごとに出してます、「前世が男で戦士だった現世女性」っていうは、ネタどころか私を解放してくれた言葉でもあるんですね。

そういう私ですから、ここ数年の『映画秘宝』は、まるで自分を見ているようでした。
マチズモ一辺倒から脱却し、時代の変化に合わせてアップデートしようと、危なっかしい足取りながらも変化していた雑誌です。男女の問題に限らず、映画を通して色々な社会問題にも切り込んでいっていました。
内容も、それに関わる人々の発言も、女性として嬉しくなることもあれば、カチンとくるところもありつつ、その変化しようとする姿が好きでした。

21年3月号の表紙は最高でした。壁に貼ってます。
ワンダーウーマン1984』のダイアナ、『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』のハーレイ・クインが真ん中にドーン!
脇を『オールド・ガード』のアンディのセロン様が締め、足元をマ・ドンソクとコブラ会ががっちり支えている。
これ、これ、女性性と男性性の間でゆらっと生きてる、私の理想やん!

だから、だからこそ、今回の『映画秘宝』の不祥事は、その内容も対応も、私の好きな『秘宝』からあまりにかけ離れていて、ただただ悲しい。
いままでの『秘宝』は何だったの? って、思ってしまう、どうしても。

ついでに言えば①②③後の、町山さんの「瀬戸際」発言はさらにトドメで。
一部で被害者の方への誹謗中傷が行われるという呆れた事態になっているので、誹謗中傷はやめて、と町山さんはtweetされていました。やめて、と訴えること自体はいいのだけど。
それを、雑誌存続の瀬戸際だから存続を望むなら誹謗中傷やめて、としかとれないニュアンスで発言していて。
いや、被害者の方のためにやめて、でしょう? 雑誌のため?
雑誌存続のため? え?

それに、私は『秘宝』の「読者」だけど、『秘宝』の「スタッフ」でも「仲間」でも「身内」でもない。
『秘宝』は商業誌だ。どこかでそれを忘れていないだろうか。
私は、私のために『秘宝』を買っているだけだ。
私が読みたいから、休刊になった時は悲しかったし、復刊に向けて努力をしている姿を応援してもいた。

でもそれは全部、私のためで、『秘宝』を作っている人たちのためじゃない。
雑誌存続のために信頼を取り戻すのはあなたたちの仕事で、読者の仕事じゃない。

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3000字以上書きなぐったけど、怒っている、というより、私は悲しんでいる。
この件、批判している人、擁護する人、怒っている人、色々いるけど、私はというと「悲しんでいる人」だ。
やり場のない思いというのは、大抵は「悲しみ」なんだろう。

まだ悲しいけど、その悲しさを癒してくれるのも、壁から私を見降ろしてくれる(わざと高い位置に貼ってる)ダイアナとハーレイとセロン様で。

この件は、もう脇におこう。そして映画を観よう。
つまるところ、私が心底愛しているのは「映画」であって、「映画雑誌」ではないのだから。

『メッセージ』言葉について結構真面目に考えてしまう話(ネタバレあり)

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何となくSFな気分が続いているので、『メッセージ』。
原作者(『あなたの人生の物語』)のテッド・チャンは、この物語は物理学の原理に対する興味から生まれた、と言ってますが、映画ではほぼ言語の方に集中して語られてます。

プリズナーズ」「ボーダーライン」などを手がけ、2017年公開の「ブレードランナー 2049」の監督にも抜擢されたカナダの鬼才ドゥニ・ビルヌーブが、異星人とのコンタクトを描いた米作家テッド・チャンの短編小説「あなたの人生の物語」を映画化したSFドラマ。ある日、突如として地球上に降り立った巨大な球体型宇宙船。言語学者のルイーズは、謎の知的生命体との意思疎通をはかる役目を担うこととなり、“彼ら”が人類に何を伝えようとしているのかを探っていくのだが……。主人公ルイーズ役は「アメリカン・ハッスル」「魔法にかけられて」のエイミー・アダムス。その他、「アベンジャーズ」「ハート・ロッカー」のジェレミー・レナー、「ラストキング・オブ・スコットランド」でオスカー受賞のフォレスト・ウィテカーが共演。

2016年製作/116分/G/アメリ
原題:Arrival
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
(映画.comより)

いや、そうしてくれて助かった。
なにせ私、高校の頃、物理のテストで100点満点中2点という人生最低点数をたたき出して以来、物理には苦手意識がありまして。

とはいえ、映画のセリフだけだと分かりにくい、宇宙人ヘプタボットの考え方みたいなところは、原作にある物理学の「変分原則」の説明で補完されるので、頑張って原作を読む価値はあります。
幸いにして、物理学者が専門外の言語学者に説明する形になってるから、映画観たあと3回くらい読めばなんとかなる。
多分!おそらく!なんとなく!

『メッセージ』って結構何度も観てしまう映画で、私は観る度に「言葉と思考の関係」ってものを考えるんですね。
映画では、言語学者のルイーズが、宇宙人ヘプタボットの言語を習得することで、彼女がヘプタボット同様、未来が見えるようになっていきます。

私、一昨年のラグビーワールドカップの後から、英語の勉強してまして。
自分の経験上、「会話で学ぶ」と絶対続かないと思ったので、文法から教えてくれる学校に五か月ほど通いました。

 そのころ、先生の話でなるほどなと思ったことがあります。
「外国語を本気で習熟しようとすると、ネイティブの考え方や文化を学ぶ必要が出てくる。逆に、外国語を勉強することで、自然とネイティブのような考え方ができるようになる人もいる

英語の話者と、日本語の話者の違いでよく言われるのは、動詞の位置ですよね。
英語は、主語のすぐ後ろに動詞がくるので、最初の数語でとりあえず何をするのかはわかる。
でも、日本語だと動詞は最後に来るので、最後まで話を聞かないと意思がわからない

だから日本語は、とりあえず言葉をつなぎながらオチを考えるという、想定外の質問に狼狽えながらも何か回答してるっぽく見える、政治家の答弁みたいなことも可能です。
英語だと、ひどい時には ” I…I…” と、主語で詰まってたりして、答え準備してませんでした感がすごい。逆にちょっとかわいそう。

だからなのか、私は、日本語で考えたことをそのまま英文にするのが苦手です。
なので、頭の中で、日本語を英語の語順に並べ替えてから英文にするという、パズルゲームみたいなことをしています(たかだか中学生レベルの英作文)。
いまはこれを、考えこみながらやってますが(くどいようだが中学生レベルの英作文)、速度が上がれば、確かに結論や自分の意思が先に浮かんでくるようになる気がします。

そういう経験を踏まえてこの映画を観ると、ルイーズがどんどんヘプタボットと同じ思考(未来が見える)になっていくことが、別段不思議に思えないんですよね。
むしろ、宇宙人から未来を見るテクノロジーをもらったとか、なにか予知する超能力を授かった、なんて設定より、むしろ自然で楽なことのように思えてしまう。

ルイーズは未来を知る力を得たおかげで、世界には楽観的な未来が訪れることがわかってくる。
一方で、ルイーズ自身の人生には、辛い別れが訪れることもわかってしまう。
未来がわかってるなら変えればいい、という考えもあるけれど、ヘプタボットと同じ思考を得た彼女にとって、未来はもう「起こってしまったこと」だから、違う選択をするという「選択」自体がありえない。
だからルイーズは、起きた結果(未来)を、深い愛情でもって、全部まるごと受け入れます。
そう思うと、ヘプタボットの思考というものは、究極には愛につながるものかもしれません。

映画では、彼らの言葉を「武器」と表現する場面があるんですが、何やら現代社会を示唆しているようで、含蓄があります。
テクノロジーの進化で、世界中に言葉が届いてしまうこの時代。
たかだか200文字の言葉がもつ力によって、人の心や思考が右往左往して、良いことも悪いことも、ここ数年で山ほど起きました。言葉には、人を動かす力があると、痛感します。
ただ、我々の言葉はヘプタボットの言葉ではないのでね。言葉の力をどう使うか、どう受け止めるかは、自分自身で選択できる。
そのことに、もっと意識的になっていい頃合いだと思います。

おっと、何やら語ってしまいましたねー。
言葉が中心にあるせいか、『メッセージ』はSF映画ではあるんですが、全体的に詩的で文学的な雰囲気が強くて、色々考えてしまうし、見る度に原作も読むので、さらにまた考えてしまいます。

できれば原著で読みたいところです。そうすればヘプタボット語の文法とか、ルイーズの見る未来の捉え方も、より理解できそう。
でも、いかんせん、日本語訳ですら読み解くのが大変だった文章を、英語で読めるほど読解力ないんでね。
日本語訳と突き合わせながらでも自信ない。
物理学の説明とか、言語学の説明とか、無理無理無理!

ああ、こんなときに、私もヘプタボットの言葉を操れれば!
そしたら英語力がレベルアップした未来の自分が原著を読んで理解したことを、いま知ることができるのに!(いいからフツーに勉強しろ)

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『コンスタンティン』疲れているのでティルダ宇宙人説と妄想で遊んでみる(ネタバレ??

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SNSで流れてきた、ティルダ・スウィントンの神々しい写真が目にとまり、急に観たくなったのが『コンスタンティン』。
キアヌ・リーブスが ”Ass hole !” と言いまくる、楽しい映画です。

鬼才アラン・ムーアのコミック「ヘルブレイザー」を原作に、キアヌ・リーブスがオカルト探偵を演じるVFXアクション。悪魔や天使を見る特殊能力を持つ探偵コンスタンティンは、女性刑事アンジェラと共に彼女の妹の死の真相を探るが……。堕天使役でティルダ・スウィントンが共演。監督はMTV出身で本作が映画初挑戦となるフランシス・ローレンス。撮影は「リバー・ランズ・スルー・イット」でオスカー受賞のフィリップ・ルスロー。

2005年製作/121分/アメリ
原題:Constantine
配給:ワーナー・ブラザース映画
(映画.comより)

私は、未確認の存在や現象、宇宙人や神や悪魔やスピリチュアルなものを、否定することはありません。なにせ、私も前世が戦士だしね。
でも、そういうものを宗教か何かのごとく、妄信的に信じる、ということもありません。
「信じてるわけでも信じてないわけでもない」というスタンスなんですよ。
だって、立場とかモノの見方で変わるでしょ、そういうのって。
ウイルスと人間とか、地球と外宇宙とか、10億年前と10億年後とか、視座を思い切り変えたら、世界は全部違って見えるもんだ、と思ってるんです。

なにせ、若いころに『幼年期の終わり*1を読んで、価値観でんぐり返りましたからね。
お陰で宗教にはハマらなかったんですが(あれ読んでハマれるか!)、色んなものに裏があるような気がして、スピッた陰謀論者っぽくなりかけたんですよ。
でも、陰謀論にも、さらに裏があるように思えて面倒くさくなり、放り投げたという……。
陰謀論を信じ続ける人って、ある意味尊敬する。私と根気の質が違う。

ただ、そんな私でも信じて疑わないし、違うと言われても全否定することがあります。

デビッド・ボウイティルダ・スウィントンは、宇宙人である。

「前世が宇宙人」って言ってるんじゃないですよ、ガチで「宇宙人」。人類だと思えっていう方が無理。

コンスタンティン』観てると思いますね。
ティルダ・スウィントンって、翼が生えてる状態がデフォルトなんだろうな。リヒテル*2と同じバーム星人かもしれない。
この映画でティルダが翼を出したり消したりしているところは、きっとCGじゃないんですよ。リアルリアル。
さぞや撮影費用の節約になったことでしょう。

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翼は普段隠してます

しかしティルダは宇宙人だから当たり前として、キアヌ・リーブスも、もう15年も前の映画なのに、今と大して変わらない。
彼は人間だと思うんだけど、あの若さはちょっと人間離れしてるというか。
若さを保つのに必死さを感じるトム・クルーズあたりと違い、キアヌの場合は普通に生きてて若いままというところに、仙人じみたところを感じます。

もしかしたら、この映画どおり、本当にルシファーから寿命をもらったのかもしれません。
いや、うん、そうだよ。それなら全部説明がつくじゃないか!

ティルダは羽根があるから、天国のハーフ・ブリード役として普通に演技してただけとして。
うん、ルシファー役のピーター・ストーメアに、何かがとりついて、キアヌの寿命を延ばしたんだな。目がいっちゃってたし。
いや、ストーメアも、もしかしたらガチ勢か?(なんのガチだ、なんの)
そして、キアヌの、めっちゃいい人エピソードの数々は、『コンスタンティン』を通して自己犠牲に目覚めたからか!(絶対違う)

ジャイモン・フンスーも、副業でエクソシストとかしてそうな雰囲気あるしなあ。あの衣装似合いすぎ。
ああでも、レイチェル・ワイズシャイア・ラブーフは現実感ありすぎる。彼らはただの俳優だな(なぜ、上から目線)。

脳が疲れ果てているので、観ているうちに、だんだん『コンスタンティン』が映画じゃなくて事実のように思えてきました。
弱ってるので、これくらいの妄想遊びは、許してください。

私、今週から、在宅勤務で復職しました。
ただ、復職初日だけ、パソコンの受け取りもあって出社したんですね。
そうしたら、部門長(ストレス源)・部長(諸悪の根源)・課長(人はいい)・人事部長(役立たず)と、1時間も面談させられまして。
休職で蓄えたエネルギーを全部持ってかれました。
フツー、ストレス源と1時間も狭い会議室に詰め込むか?

緊張もあって、事前に薬飲んで出社したんですが、正解でした。シラフで会えるか。
ムカついたから、「さっき、辛くて薬飲んだんです」って言ってやったよ。

ホントは中指立てて、コンスタンティンのようにこう言いたい。
Ass hole! 

eiga.com

*1:アーサー・C・クラークによるSFの名作。壮大すぎてあっけにとられ、最後は哲学に着地する

*2:アニメ『闘将ダイモス』のキャラクター。翼があるバーム星人。母星を失った彼らが地球に移住しようとしたら、色々誤解が生まれて地球に宣戦布告する。敵役だが悪役じゃない。なかなか考えさせられる設定だ

『エイリアン2』リプリーに自分を重ねてヒックスに感謝する話(ネタバレあり)

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最近ですね、「ブログ楽しいのに、なんか疲れるなー」と思って、ちょっと人様に相談したところ、「仕事で戦い疲れて休職したのに、今度はブログで戦ってる状態」ということを言われました。
四か月休んどいて、どんだけ休み下手だよ。
でも楽しいのにーと思ったんですが、よくよく考えたら、今はアフガニスタンから戻った元海兵隊で、今はNY市警のSWAT隊員」みたいな状態かもしれないなと納得。
こんな表現で、いったい誰がわかってくれるのか不明ですが。

これはやはり、闘争心をお焚き上げせねば!と、初心に戻って『エイリアン2』。リプリーとエイリアンのガチンコ対決を楽しむつもりだったんですが、開始10分で思い出した。

リプリーがエイリアンのいる星に戻る理由、「倉庫係から航海士に戻してやる」だった!

そんな理由で、PTSD状態なのに、エイリアンがいるところに戻るリプリー
これ、私が復職したら「絶対やっちゃだめ」と思ってるパターン、評価欲しさに無理をする、だ!
いまこれを見せられるのかー、と思いました。

エイリアンと戦った宇宙船ノストロモ号6人のうちの唯1人の生存者リプリーとエイリアンの再戦を描くSFアクション。製作はゲイル・アン・ハード、エグゼクティヴ.プロデューサーはゴードン・キャロル、デイヴィッド・ガイラー、ウォルター・ヒル。監督・脚本は「ターミネーター」のジェームズ・キャメロン。キャラクター創作はダン・オバノンとロナルド・シュセット、撮影はエイドリアン・ビドル、音楽はジェームズ・ホーナー、特殊効果はジョン・リチャードソン、ブライアン・ジョンソンが担当。出演はシガニー・ウィーヴァー、マイケル・ビーンほか。ドルビー・ステレオ。日本版字幕は岡枝慎二。デラックスカラービスタサイズ、1986年作品。後に未公開シーンを加えた155分の[完全版]が発表された。

1986年製作/136分/アメリ
原題:Aliens
配給:20世紀フォックス
(映画.comより)

 

実は週明けから、復職することになりました。
これでも私、まだそれなりにPTSD状態なんですけどね。映画やドラマも、血まみれは平気だけど、オフィス物やビジネス物が怖い。

うちは結構大きな会社なので、時代に合わせて制度は整備されてますが、働く人間の意識は時代に追いついてません。
や女性の場合は、何やっても「女性だから」がついて回るんで、時間も量も山ほどこなして有能さをアピールしないと、あっという間にできない社員の烙印を押されます。

そんな会社で、成績上位で管理職資格取りましたからね、私。
これ、ほんとに心身削って働いた結果なんですが、やっとここまで来たぞと思ったら、さらに仕事は増えるばかり。役職はくれんし、給料は横ばい。
そこにエイリアンのような幹部が異動してきてトドメが入り、休職。

『エイリアン』でのリプリー、他人事じゃないんですよ。
航海士にまで昇進したのに、仕事先でエイリアンに遭遇し、死闘を繰り広げて、孤独に冷凍睡眠。
しかも私の場合、エイリアン殺してないし。

なので、意外にも今回、大好きなリプリーを観てるのがちょっとつらかったんですが、そんな私を救ってくれたのが、マイケル・ビーン演じる海兵隊員ヒックスなんですね。

死ぬほど働いてきた私ですが、そのために長いこと、男が女を守るというお決まりの構図に、ちょっと反感を持っていました。今でも、「か弱いヒロインを守るヒーロー」にうっとり、なんて全くこれぽっちもなりません。
でも最近は、守られること自体は、これはこれでいいな、と思うようにになりました。

『エイリアン2』のリプリーは、エイリアンに恐怖しながらも、危機に陥った海兵隊たちを助けるため、装甲車で突入したりするほど逞しい。
助けられたヒックスは、彼女が恐怖を乗り越えて戦う強さをリスペクトします。その直後、彼女の戦闘プランをあっさり採用するところでわかります。
動揺してリプリーの忠告も聞かず、わめいてただけの中尉と、なんと違うことか。

リプリーは強いと、ヒックスは分かってる。だから共闘していくんですが、そんな中でも、ヒックスは彼女の盾になるように戦うんですね。
もちろん、リプリーは民間人だし、ヒックスは兵士だからということもありますが、それでも彼は本能的に彼女を助け続けるんですよ。
しかも、俺が守ってやらなきゃダメだ!ってわけでも、守ってやるぜ!とマウント取ってるわけでもなく。対等なんだけど、守る。

それを見てると、つくづく、男性が女性を守る理由ってのは、別に女性が弱いからじゃないんだなーと、思います。
繁殖のための生存本能(雌がいないと種は残せない)ってことで片付けてもいいんですが、なんかもう、あれって雄としての抗いがたい衝動なんじゃないかなと。

でも恐怖というのも、かなり根源的な本能で、守る衝動より恐怖が先にたつ奴は映画で必ずいます。まあ、そっちが普通なのかもしれません。
だから、リプリーのように「一人でも大丈夫なんじゃね?」って相手を、恐怖を克服してでもエイリアンから守るってのは、相当にタフなハートを持ってなきゃできないことなんですね。 

それができるヒックスが、最後まで生き残るのは当然。
エイリアンの酸にやられてリプリーに支えられてたけど、その傷ついた姿がヒックスの強さの証のようで、カッコよく見えた。
ヒックスが守ってくれたおかげで、リプリーは最後まで戦えたんだし。
そこにどっちが強いの弱いのって、そんな下らんマウント合戦は不要なのだな。

私の復職にあたって、会社はフルタイムで仕事させる気だったんです。
でも、「そんなことをすれば彼女は二度と銃が持てなくなる!」と言って(ちょっと表現が違うかもしれない)同僚がゆるゆるの復職計画を作り、その勢いに負けたらしい課長が、幹部にごり押しして承認させたそうで。
同僚はマネジメント経験があるし、幹部連中より頭が柔らかい。それに、女性だから弱いと言うどころか、私が戦闘系会社員だと承知してるんですが、どうやらかなり強くかばってくれたらしいのですね。

その話を聞いて、マジで同僚がヒックスに重なりました。
彼(とついでに課長)にはもちろん、感謝の気持ちを伝えましたよ。
本当は「ヒックスみたい!」と言いたいんだけど、通じないのよね……。

ブログに没頭しちゃうエネルギーは仕事に向けて、ブログはもっと肩の力を抜いて楽しむとバランスが取れてくる、と、冒頭と同じ方にアドバイスもいただきましたし、探り探り復職していきます。
『エイリアン3』*1のようにだけはなりたくない。

ブログも、あまり文字数とか気にせず、もっとダラダラと書いていこうかなと(今回すでに長い)。
なので、映画をネタにしたグダグダ話がさらに増えると思いますが、そういう生き物の生態日誌として観ていただけると嬉しいでーす。

※休職直前のヤバい精神状態について触れたのがこちら

*1:『エイリアン2』のすべてが雲散霧消する話

知ってるけど誰だっけ俳優「トーマス・ジェーン」

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映画や海外ドラマでちょいちょい見かけるけど、名前が思い出せない俳優がいます。私は人の名前を覚えるのが苦手という、よろしくない脳の持ち主なので、歳取ってさらにひどくなってきました。

そのうちの一人が、このトーマス・ジェーンこんなに簡単な名前なのに、どうしても覚えられない。ステラン・スカルスガルドとか、すぐ出てくるのに。
二人とも、『ディープ・ブルー』に出てます。今現在、このブログで一番アクセス数が多いです。なぜ?
みなさん、そんなに『ディープ・ブルー』好きなの?
私も好きだけども!
まあ好きだから、そこから引きずって、こんなネタで書いてるんですけどね。といっても、下書きのまま一週間くらい放置していたのをやっと仕上げてます。

トーマス・ジェーンは、私のトラウマ映画『ミスト』*1あたりまでは、ちょいイケメン俳優扱いだったと思います。でもいかんせん、どこにでも一定数いるイケメンなので、取り替え可能なのかなあ。
面長仲間で顔が似ているアーロン・エッカートとか、二枚目で正義の人オーラが強烈ですが、そういう圧がないんですね。

と書くとキャリア低迷しているように見えますけど、そこそこ地味に映画に出続けていて、取り替え可能な顔=使いやすいってことかもしれません。

私は、この人の出ている映画はそこそこ観ていて『パニッシャー*2とか、中身はポンコツですが、彼はそんなに悪くない。本人も好きなのか、↓のような短編も作ってます。

でも、『ザ・プレデター』で頭のイカれた元軍人役で出ていた時は、見覚えあるなと思いつつ、パンフレット読むまで気づきませんでした 。ほら、名前忘れてるから、クレジット見ても思い出せないのよ(ひどい)。

そんなあやふやな記憶ですが、この人、私が観てきた限りでは、タフな役柄が多い気がするんですね。

でも、名前が合ってないんだよ!
タフ・ガイっぽくないんだよ!

トーマス・ジェーンって、軽いというか華やかというか、詐欺師の偽名みたいな名前じゃないですか(失礼)。
「トーマス・クラウン」*3とか「パトリック・ジェーン」*4とか、みんなうさん臭いでしょ。

もうちょっと、重さのある名前にすればよかったのに。エージェントは、何考えてたんだ?
それとも最初は華やかなイケメンで売るつもりだったのか?
って、そうだった、イケメン枠だったんだよ、この人!

ということで似た役者はいるわ、名前と役柄のイメージがまったく合わないわで、覚えられないトーマス・ジェーン

こうして文章にすると、もう忘れないんじゃないかな。
なので、また「ああ、この人、知ってるけど誰だっけ?」と気づいたら、シリーズ化していきたいと思います。
私が名前を覚えるために。

でも毎回同じオチになりそうだわー。

*1:スティーヴン・キング原作のホラー映画。ラストが原作と違い、ショックが大きい。キングが映画のラストを知って「俺もこうすればよかった」と言ったらしい。ホラー小説家ってやっぱりダークサイドだ。

*2:マーベルのダークヒーロー物。三回映画化されてるけど、なぜかいつも出来が微妙。それでも好きだけど。トーマス・ジェーンは2回目の映画化で主演。

*3:華麗なる賭け』でスティーブ・マックイーンが、リメイクの『トーマス・クラン・アフェアー』でピアース・ブロスナンが演じた、大富豪兼泥棒の名前。

*4:ドラマ『メンタリスト』で犯罪捜査のコンサルタントとして働く、元インチキ霊媒師の名前。

『君の名は。』映画としては面白いんだけれども(ネタバレあり)

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公開当時は完全スルーしたんですが、友人(同世代)との会話の流れで、観て感想よこせという話になってしまい(なんかこんなん続いてるな)、観ましたよ。
驚くなかれ、なんと私、ほぼ事前情報無しで観たんです。
あんなに世間で騒がれてたのに。

雲のむこう、約束の場所」「秒速5センチメートル」など、男女の心の機微を美しい風景描写とともに繊細に描き出すアニメーション作品を手がけ、国内外から注目を集める新海誠監督が、前作「言の葉の庭」から3年ぶりに送り出したオリジナル長編アニメ。「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」などで知られる田中将賀がキャラクターデザインを手がけ、「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」などスタジオジブリ作品に数多く携わってきた安藤雅司作画監督、主題歌を含む音楽を人気ロックバンドの「RADWIMPS」が担当した。国内興行ランキングでは公開から29週連続でトップ10入りを果たし、興行収入250億円を超える歴史的な大ヒットを記録。第40回日本アカデミー賞ではアニメーション作品として初の最優秀脚本賞を受賞した。1000年ぶりという彗星の接近が1カ月後に迫ったある日、山深い田舎町に暮らす女子高生の宮水三葉は、自分が東京の男子高校生になった夢を見る。日頃から田舎の小さな町に窮屈し、都会に憧れを抱いていた三葉は、夢の中で都会を満喫する。一方、東京で暮らす男子高校生の立花瀧も、行ったこともない山奥の町で自分が女子高生になっている夢を見ていた。心と身体が入れ替わる現象が続き、互いの存在を知った瀧と三葉だったが、やがて彼らは意外な真実を知ることになる。声の出演は瀧役に神木隆之介、三葉役に上白石萌音。その他、長澤まさみ市原悦子らが出演。

2016年製作/107分/G/日本
配給:東宝
(映画.comより)

映画としては、素直にすごく面白かった。
絵柄は好みじゃないんですけど、全体の絵面、特に光の表現が素晴らしく、ワンカットワンカット、丁寧に撮られた写真のようで、本当に美しかったです。
前半後半で語り手が変わったり、物語のトーンが変わるのも、一粒で二度三度美味しい。キャラの背景もわかりやすいし、テンポも良いし、飽きずに最後まで面白く観れました。

ただ、最後のギリギリまで、この映画が何を私にみせたいのか、だけがわからなかったんです。

隕石による集落全滅の下りから、これは東日本大震災含め、昨今多発している大災害をイメージしているんだろうと思ったんです。
でもそれにしては、瀧が死について考えたり、そこから自分の生き方について考えたりするわけでもない。
災害から集落を救おうとする中で、瀧や三葉が自分自身に気づくとか、自信を持つとか、大人への一歩を踏み出すという訳でもない。

入れ替わった記憶が消えていくという設定だからかもしれませんが、あれほどの衝動に突き動かされて行動したのに、二人に残ったのは、繋がっているはずの大事なものがあったのに思い出せないという、喪失感だけで。

ここでもう、頭の中は、はてなマークだらけですよ、私。
だって、あんな災害から人々を救ったのに、そのことが彼ら、少なくとも瀧の人生に影響を与えていないんて、そんな話ってありなの?
瀧が就活に苦労していることが描かれてたけど、内定取れないって展開は当たりだよ。「スーツが似合ってない」セリフに象徴されてるけど、瀧は成長してない、大人になってないわけです。

そして、散々擦れ違いまくった末、ついに二人が出会い「君の名前」を知ることで、二人は欠けていた大事なものを取り戻したわけですが。

そこで、やっぱりこれは、思春期の自分探しの物語なんだと腑に落ちました。
淡すぎて恋愛映画と思うのは無理だから、そこは許して。

ただ、疑問は残ったんです。

あの大災害は何のためにあったの?
この話、交通事故とかで十分成立するんじゃないの?
もしかして、大災害まるごとマクガフィン!?*1

で、途方にくれて、観た後にレビューや解説を読みまして、どうやらこれが、「ポスト・エヴァ」「セカイ系」と呼ばれるものの一種、もしくは進化形らしいと知りました。理解はできてないけど、私が「半径2mの世界観」と呼んでいるものと近い気が*2
大災害は、ホントにマクガフィンだった。
いくらなんでもデカすぎる。

なにせ私、セカイ系の先祖であるらしい『新世紀エヴァンゲリオン』を、早々に挫折したクチでして。放映時は二十歳くらいだったと思いますが、世界観や登場人物も、まったく私のハートに響かなかったんですよ。
エヴァは、それまでアニオタでもあった私が、一気にアニメから離れるきっかけになりました。

もともと、青春や思春期に焦点をあてた作品と私は相性が悪い、ってのもあります。思春期の私は、一秒でも早く大人になりたくて、今の自分探しより、どんな大人になるかばかり考えてました。
しかも、その大人の定義がショーン・コネリーとか、『鬼平犯科帳*3長谷川平蔵とかだし。
鬼平』の影響は特にすごくて、蕎麦屋で日本酒飲む大人になりたい」とか言ってました。
実際に大人になった自分は下戸で、蕎麦屋では大人しく蕎麦だけ食ってますが。

とにかく、前回の『二ツ星の料理人』とは真逆で、映画としてはセイフティ・ネットが不要なほど面白かったけど、「面白い」以外の感情が伴わなかった映画でびっくりしました。
友人には、細かいことは省いて「面白かった」とだけ伝えました。

そんな私の目下の悩みは、同じ新海監督の『天気の子』を観るかどうか。
これもまったく情報入れてないんですけど、私、どうすればいいんでしょうか(テメエで決めろ)。

 

*1:映画や小説に使われる、物語の展開上は必要で重要なモノ・出来事・人だけど、他のモノでも替えが効く要素。ヒッチコックが使いまくって知られるようになった言葉。『M:i:Ⅲ』では明確に使われていて、トム・クルーズは「ラビットフット」なるものを入手しようと頑張るけど、結局「ラビットフット」が何かはわからない。わからなくても全然困らない。気にする人は、ものすごく怒る。

*2:主に音楽で、僕と君とその仲間たちのつながりと共感だけを描いた歌詞を、私は勝手にこう呼んでいる。内容が、自分のことに引き寄せられない場合が多く、聞くものに困る。

*3: 時代小説作家 池波正太郎の人気小説。江戸時代が舞台で火付盗賊改方の長官、長谷川平蔵が盗賊を捕まえるハードボイルドっぽい渋い話。もちろん二代目中村吉右衛門主演のドラマも観た。池波正太郎作品で描かれる世界は、戦士な私にヒットしすぎて、長いこと女の自分を見失う羽目になった。