前世戦士の映画日誌

前世が戦士らしい女が映画を観て色々吐き出します 生態日誌です

『PMC:ザ・バンカー』マルチタスクはやっぱり人間に向いてないと思う(がっつりネタバレあり)

f:id:sinok_b:20210911173635j:plain8月は大変でした。先月記事をUPした後、避けられない緊急事態で予期せず実家と東京を2度往復することになったんです。
仕事でタフな状態が続いてたところにそんなことをしたもんですから2度目の往復後に体調を崩し、人生で初めて失神を経験しました。血管迷走神経反射というヤツらしいです。
(このブログで何度も言ってますが、私、昨年過労で休職したPTSD持ち前世戦士です)

いやー、ビックリです。
立ってたはずなのに気づいたら天井が見えてまして。しかも記憶が残っている場所から2mくらい離れた場所だったんでなおさらビックリですよ。
膝や手、顔と頭の傷から推察するに、失神してまず左膝を床につき、次いで右膝もつきつつ右顔面から床に落ちた後、左方向へひっくり返って左後頭部をゴツンとやったようです(『CSI:科学捜査班』の観すぎ*1
お陰様で頭への衝撃は軽かったのですが、左膝と顔はなかなかハードにやられました。

顔はともかく(むしろネタになるので写真撮りまくった)失神が怖くて一時は外にも出られませんでしたが、今は大分体調は戻りました。
まだ左膝が少々変なのですが、こいつのお陰で頭を強打せずに済んだので銀星章*2くらいあげないといけませんね。

そんな状態で観た『PMC:ザ・バンカー』。実は観ようと思って観たわけではありません。
惰眠を貪ろう思っていた土曜日の朝、空腹が睡眠欲より勝ってまともな時間に起きてしまいまして。食事しながら何か観よーとテレビをつけたら、CS放送でちょうどこれが始まるとこだっただけという。
これが思いのほか面白かった。食べたら二度寝しようと思ってたのに、完全に目が覚めちまいました。
今までアフガニスタンに派兵されてる気分*3でしたが、今は朝鮮半島で戦ってる気分になってきました。

韓国と北朝鮮軍事境界線の地下要塞で展開する極秘ミッションを描いたサバイバルアクション。CIAから、北朝鮮の要人を捕らえて安全な場所へ護送する依頼を受けた傭兵エイハブは、11人の部下を率いてDMZ軍事境界線)の地下バンカーに潜り込んだ。凄腕のエイハブの手にかかれば、その任務は10分程度で完遂できるはずだった。しかし、アメリカと中国それぞれの北朝鮮をめぐる思惑に翻弄され、信頼していた仲間たちからも裏切られたエイハブの部隊はバンカー内で行き場を失ってしまう。暗殺者の汚名まで着せされてしまったエイハブが窮地を脱する唯一の方法は、敵の包囲網を突破して北朝鮮最高指導者「キング」を地上へと連れ出すことだったが……。エイハブ役を「神と共に」のハ・ジョンウ、北朝鮮の医師ユン役を「パラサイト 半地下の家族」のイ・ソンギュンがそれぞれ演じる。監督は「テロ,ライブ」でもハ・ジョンウとタッグを組んだキム・ビョンウ。

2018年製作/125分/G/韓国
原題:Take Point
配給:ツイン
映画.comより

この映画、一応アクション映画なんですが、主役のエイハブはほとんどアクションしてません。なぜなら確保対象の「キング」を連れて指令拠点に戻った後、仲間の裏切りに合って義足を壊され*4、動けなくなるんです。
で、あとは傭兵仲間が身に着けているボディカメラやバンカー内にコロコロ放った偵察カメラ(ホントにコロコロしてるんです)映像、そしてバンカーの設計図を頼りに傭兵仲間や「キング」の医者に指示したり、傭兵会社本部に応援要請したりします。
アクション(ほぼ銃撃のみ)は仲間たちが頑張ってる姿を偵察カメラ越しに観るだけ。私たちはエイハブとほぼ同じ視点でしか状況を観ることができませんし、同じ情報しかもらえません。
ボディカメラや偵察カメラの映像は動きに合わせてブレるため、ちょっと『ハードコア』*5を思い出したりして。
そのため、大半は独り床の上にいるばかりエイハブなのでフィジカルなアクションはほとんどありませんが、心のアクションは『ミッション・インポッシブル』*6でした。

わかる。
わかるよ、エイハブ。
お前の気持ちが私にはよ~~~くわかる!

ただでさえ予想外の反撃と裏切りでショックを受けてるとゆーのに、本部は政治判断を優先するわ、エイハブをスケープゴートにしようとするわと容赦なし。
当然、エイハブは本部相手に猛抗議とバックアップの要求をし続ける。と同時に、仲間は分断されて危機に陥り各々が「指示をくれ!」と求めてくるので、そちらの誘導もしなきゃいけない。
一方で確保対象のキングは死にかけていて、北朝鮮の医者を見つけてビデオ通話で指示を仰ぎながら、心臓マッサージや点滴の処置もする。その医者を指令拠点に連れてくるべく、仲間だけでなく医者も誘導。
ところがキングは心臓が悪いので、ちょっと目を離すとまた死にかける、ということを繰り返す。

これだけでも大変なのに、アメリカは証拠隠滅を兼ねて爆撃するし、敵側は戦車を投入(地下に……戦車……?)して仲間は全滅、自分も負傷。
ついでにアメリカにいる妻は、陣痛が始まり病院で出産中

とう事態にね、一人で対処して考えて決断して指示して冷静さを保てとか。

そのマルチタスク、無理じゃね?
適応するの、無理じゃね?

エイハブ、私と一緒に病院行こうぜ?(産科ではない)

あのですねー。
例え命の危険があろうとも、現場で銃の撃ち合いやってる方が、実は気が楽っ
てもんなんですよ。
究極のところ、敵を殺して自分が生きてりゃOKですから。目先の作業に集中すればいいだけなんです。

くっそ大変なのは、様々な事件が起こる度に、現場や同僚や上司や幹部や関連部門や親会社や現場の長やシステム会社やなんやらの間に入って、連絡・調整・説明・指示をして回ること、それらをどうやるか短時間で考えて決めていくことなんです。
その結果、作業する側が徹夜になって体力は削れる場合もありますが、神経削るのはこの間に入る一連のあれこれの方なんですよ。場合によっては前線で作業もしますし。
それを各案件同時進行でやるのは、マジでキツイ。
そして、これが私の日常業務であります。

え?
幹部や部課長が決断する方が大変だって?
普通はそうですね。
でもさ、だから高い給料もらってんでしょうが

先日ふと思いました。
なんでこのミーティング、参加者は私以外全員部課長職なのに、私が場を仕切ってやること決めて、仕事を各部門に割り振ってるんだろうって
うちの部長は最初から最後まで一言も発しなかったし。

こちとら、役無し管理職ですからね。
肩書無いですからね。
私の担っている仕事はうちの会社としては少々特異なので、実は見合ったポストがないんですよ(上司にも言われた)。

なのにです。
うちの会社は
肩書無かったら最高評価をもらっても「最低評価の課長」より年収が高くならないように給与設計されてますからね。
どれだけ頑張っても、給与の天井は見えているわけで。

だからね、エイハブが「報酬上げろ!」という気持ちが、痛いほどどころか激痛として感じるわけですよ。
こんな無茶苦茶なマルチタスクの上に責任転嫁されまくりの仕事、金でも貰わなきゃやってらんねーよ。

映画の最後ですが、ミッション完了後にもひと騒動(かなりの大騒動)があり、そこでエイハブは傭兵としての最低限の義務は果たしつつ、自分の人間としての意思を通したという形になりました。
多分、彼はこの後には傭兵会社はやめるでしょう。少なくともこの会社は。

うん、そうよね。
それがプロとしての、矜持と決断よね。
私も貴方を見習うわ。
だからエイハブ、とりあえず一緒に病院行こうぜ。

*1:アメリカの超有名な警察ドラマ。刑事の勘より証拠による捜査が主役。とはいえ、どんなわずかな証拠も見つけてしまうので、ある意味究極のご都合主義ドラマともいえる。

*2:アメリカ軍の勲章のひとつ。戦闘中の勇敢な行動に対して授与されるもので、軍人が出てくる映画やドラマによく出てくる

*3:『ローン・サバイバー』の記事をご覧ください

*4:以前の作戦で右足を失い、義足になったという設定。殺す気だったのに、なぜ生身の部分じゃなくて義足を撃ち続けたのかは考えないことにした

*5:ほぼ全編が主役の目を通して撮られているアクション映画。ウェアラブルカメラで撮影。無茶苦茶でものすごく面白いけど気を付けないと酔うので、酔いやすい人は画面から離れて視聴しましょう

*6:トム・クルーズがアドレナリン出したさに作り続けているアクション映画。

『ミッドサマー』老眼で恐怖が矮小化されて申し訳なかった話(演出のネタバレはあり)

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私、超がつくド近眼でして、コンタクト外すと隣に座ってる人間の顔もヤバいほどです。なのでめっちゃ度の強いコンタクトレンズをしてるのですが、ここ2年ほどは少し度を弱めてさらにレンズの種類を変えました。

なぜって、老眼ですよ、老眼。

こちとら五十路にジリジリにじりよってるところなんですよ。19年のラグビーワールドカップ直後あたりから急に、手元やパソコンの画面が見えづらくなりまして、遠近両用コンタクトレンズに変えました。
目のいい人が老眼になるとショックらしいですが、ド近眼からいわせてもらえば、贅沢な話です。
あのね、遠くも近くも見えないってね、焦点合わせるポイントがマジで難しい。ようするに、なんにもクリアに見えないんです。

で、遠近両用レンズのお陰でPC使うのは困らなくなったのですが、ちょっとした遠くが見えない。
一番困るのは、映画館で字幕がにじんでよく見えない。本質的ではない理由で、英語力上げないとまずいレベルになってきた。

長編デビュー作「ヘレディタリー 継承」が高い評価を集めたアリ・アスター監督の第2作。不慮の事故により家族を失ったダニーは、大学で民俗学を研究する恋人や友人たち5人でスウェーデンを訪れた。彼らの目的は奥地の村で開催される「90年に一度の祝祭」への参加だった。太陽が沈むことがないその村は、美しい花々が咲き誇り、やさしい住人たちが陽気に歌い踊る、楽園としか形容できない幸福な場のように思えた。しかし、そんな幸せな雰囲気に満ちた村に不穏な空気が漂い始め、妄想やトラウマ、不安、そして恐怖により、ダニーの心は次第にかき乱されていく。ダニー役を「ファイティング・ファミリー」のフローレンス・ピューが演じるほか、「トランスフォーマー ロストエイジ」のジャック・レイナー、「パターソン」のウィリアム・ジャクソン・ハーパー、「レヴェナント 蘇えりし者」のウィル・ポールターらが顔をそろえる。

(映画.comより)

そんなぼやけた視力でこの映画を劇場で観たときは、アリ・アスター監督の前作『ヘレディタリー 継承』*1の方がいいなあ、って思ったんです。
あとで書きますが、生理的嫌悪感は前作以上だったんですが、前作の方が不穏当な映像がちりばめられていたなーと感じまして。

でも先日CSで放送してたので、テレビで、つまり遠近両用レンズでも画面が十分クリアに見える距離で観たところ、随所に人を不安にさせる細かい演出がちりばめられてることに気づいたのですよ。

花だのなんだのを蠢かせてたり、何かわからないものが映りこんでたり、細かい壁の絵に色んな予見があったり。テレビの画面でみて、初めて気づきました。
あれは主人公の不安や精神状態を象徴していたり、物語の展開を予想させて不安を煽ったり、観客をトリップさせてるような感覚に陥らせたり等々、さまざまな思惑があって散りばめられているのですが、初見の時には老眼のせいだと思って、私、完全にスルー。せっかくの映像から、恐怖が私に届いていない。
その代わり、明るい場面がほとんどを占める映画なのにところどころちゃんと見えなくて、「ああ、老眼が進んだのか……」という、アリ・アスター監督がこれっぽっちも意図してない恐怖には駆られてましたが。

思えば前作を見た時は、まだ老眼ほとんど出てなかったわ。
真面目な話、字幕や演出をちゃんと視認するためには、もう遠近両用レンズはやめて、手元を見るときは老眼鏡使うしかないかもしれない。
そういう反省する心持で観ていたせいか、2度目の鑑賞でもどうにも恐怖心が湧いてこず。

本来ならですね、この映画は私にとって生理的に嫌いなタイプの集団を扱っているので、結構怖いはずなんですよ。
私、同じ格好の集団が、同じような行動をしているのが苦手なんです。なんといいますか、一瞬ぞわッとするんですよ。

同じ格好の集団とはいっても、スポーツのユニフォームとかは平気です。ラグビーみたいに15人とか、野球みたいに9人とか、数が知れてるじゃないですか。動きは個々で別ですし。
これが、制服や同じような恰好をして、一斉に同じような動きをすると、ぞわぞわっとするというか、変な圧を感じるというか。
えーっと、軍服は好きだけど、軍事パレードは生理的に気持ちが悪い、と言えばいいでしょうか。

……その、ようは、あのー、誤解を恐れずに言えばですね。
同じ格好の集団が一斉に同じ行動をするって、虫の大群みたいに見えません?
虫自体は別に嫌いじゃないんですよ。キレイな虫はもちろん、なんならゴキブリだって、単体なら別に怖くもなんともありません。
でも、それが集団になると、生理的にぞわぞわっとして、ムリ。

しかも虫の大群って、個々の意思じゃなくて団としてひとつの意思を持ってる感があるじゃないですか。哺乳類や鳥類、爬虫類や両生類と比べても、格段に個体毎の意識の差を、個性ってヤツを感じない。

だから、この映画であのコロニーの住民が、その祝祭が、行為そのもの以上にただたただ気持ち悪い。似たような格好、似たような動き、相手に同調した泣き声、叫び声。
こういう集団は、暗いよりも明るくてよく見える方が気持ち悪さを出しますね。
闇夜に松明持って立ってる方がまだマシ。

そういう生理的嫌悪感は今回もしっかり感じはしました。
が、一方で、いちいち「ここでこんなことが! あっ、ここもこんなことに! ああっ、この顔ってあいつだったのか!(この顔を見逃していた自分に蹴りを入れたい)」と、過去の自分にツッコんでいたので、結局のところ、恐怖の対象はより一層、自分の老眼度合に向かう羽目に
ああくそ、もう一度真っ新な気持ちに戻って観ることはできないものか。

アリよ、2021年の今、君は35歳だね。ならばあと十数年もすればわかるだろう。
その時にこの映画を見直して、思うところがあれば是非、今度は中高年(の目)にも優しい映画を作ってくれ。

 

*1:アリ・アスター監督の長編処女作で、トラウマ観客量産映画。悪魔だカルトだで歪みまくったファミリー・ホラーで家族愛は強しと思ってる人ほど絶望する。そして何より主演のトニ・コレットの顔が怖すぎる

『Mr.ノーバディ』男の自己肯定感とはとどのつまり……(ネタバレはごく微量)

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なにやらペースが月1更新になってきましたが、まあ自己都合ブログですからね。気にしませんよ(と、言い訳するあたり……)。

さて、観たのはちょっと前になるんですが、『Mr.ノーバディ』。
最近、主演のボブ・オデンカークがドラマの撮影中に倒れて緊急搬送されるというニュースがありまして、心配していましたが搬送先で意識を取り戻し現在は入院中のようです。
良かった良かった。ゆっくり養生して元気になっていただきたいです。

ただこの件を知った瞬間は、『Mr.ノーバディ』に気合い入れすぎて心臓に負担かかってんじゃねーか?と思っちゃいましたよ。

一見してごく普通の中年男が、世の中の理不尽に怒りを爆発させて大暴れし、やがて武装集団やマフィアを相手に激しい戦いを繰り広げる姿を描いた痛快ハードボイルドアクション。「ジョン・ウィック」の脚本家デレク・コルスタッドと製作デビッド・リーチが再タッグを組み、人気テレビシリーズ「ベター・コール・ソウル」の主人公ソウル・グッドマン役で知られるボブ・オデンカークが主演を務めた。郊外にある自宅と職場の金型工場を路線バスで往復するだけの単調な毎日を送っているハッチは、地味な見た目で目立った特徴もなく、仕事は過小評価され、家庭では妻に距離を置かれて息子から尊敬されることもない。世間から見ればどこにでもいる、ごく普通の男だった。そんなハッチの家にある日、強盗が押し入る。暴力を恐れたハッチは反撃することもできず、そのことで家族からさらに失望されてしまう。あまりの理不尽さに怒りが沸々とわいていくハッチは、路線バスで出会ったチンピラたちの挑発が引き金となり、ついに堪忍袋の緒が切れる。監督は「ハードコア」のイリヤ・ナイシュラー。共演に「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のクリストファー・ロイド、「ワンダーウーマン」のコニー・ニールセンほか。

(映画.comより)

そもそもオデンカーク、これまではアクションとは無縁といってもいいキャリアだったんです。
それなのに、この映画のアイディアを思い付いた彼は、どーしても主役を自分で演じたいがために企画が形になる前から2年かけて肉体改造に取り組んでいたそうで。
いやはや、実はとんだ中二病オヤジだったんですよ。

あの、このブログを読んでくださってる皆さんは薄々察してると思いますが、ボブ・オデンカークってこれまで私の眼中になかった役者でしてね。
だって『ブレイキング・バッド*1も『ベター・コール・ソウル』*2も観てないんです、私。正確には3話目くらいで挫折。
だって、続き物のドラマって苦手なんだもーん。

だから、とにかく新鮮でした。
この映画は、すでにアクション映画界では一大ジャンルとなっている(?)「なめてた相手が最強でした」映画なんですが、本当にアクション映画に染まってない役者が演じているのって新鮮で。

なにせ、最近の「なめてた相手が最強でした」映画は、もうこちらも演じている俳優に慣れちゃってるんですね。
映画冒頭でなめられまくってるエピソードが続いても、「あーあ、後で知らんぞ~」と思うところから入るんで、期待感はあっても予想外はないわけで。
だって、キアヌ・リーブスだし、シルベスター・スタローンだし、ブルース・ウィリスだし、ジェイソン・ステイサムだし。
リーアム・ニーソンなんて、ふつーあんなデカい男(身長190㎝超え)をなめてかかるとか、すげー勇気ある奴か超のつく馬鹿かどっちだろう、思う訳ですよ(でも考えたら、リーアム・ニーソンに直球で因縁つける話は少ないか)。

ともかく、やや安定していた「なめてたオヤジが最強でした」市場に、久々に目垢がついてない役者が泥臭いアクションで揺さぶりをかけに来たのです。
そしてそれは大成功でした!いやあ痛快!

ぶっちゃけ、展開には驚かないです。
どんな裏設定があろうとも、「なめてたオヤジが最強でした」という一言で内容は集約されますから。
家族がオヤジを見直す展開のくだりは、シュワルツェネッガーの『トゥルーライズ*3を思い出しました。
強いて新しいことといえば、「なめてたオヤジと、もっとなめてたジジイも最強で、揚げ句兄弟も最強で、権力のバックアップまであった」ってところでしょうか。
RZA*4の存在意義がいまいちわからないままですが、面白かったし好きなんで気にしない気にしない。

しかし再確認しましたね。オスというのは、戦うこと=自己肯定感につながってるんだなと。
私、よく男→女へのセクハラに対する反撃(反論ではない)で「オスは黙って戦って死ね」という暴言(暴論ですらない)を吐きます。
前世が戦士の私からしますと、セクハラするヤツってなあ、自己肯定感が低くて、かわりに必死で自分より弱い相手を探してマウント取りにいくチキン野郎にしか思えないんですね。
そんなことするより、正々堂々、剣を交えて闘いませんか? 受けてたちますぜ、と、思ってしまう(というあたりが前世戦士ゆえ)。

まあね、さすがに本気で戦って死ねとは思ってませんが(全員には)、まあ何に向き合うにしろ戦闘モードであることというのは、オスがオスたる所以なんじゃないかなと。
ここで言う「戦闘」っていうのは暴力ってことじゃなくてですね、仕事でも趣味でも育児でも家事でも、向き合いかたが戦闘モード攻略するとか極めるとか、そういった状態のこと。
たとえ、世間から男らしくないなどと理不尽な言われ方する職業や趣味であっても、男性の向き合い方はやっぱり攻めて極めるモードが多いような印象です。

よく、男性が好きなものに話をするとスペックやデータを語りだし、女性はかわいいとか感覚の話になって噛み合わないこと、ありません? ああいう違いですよ。
アクション映画で女性が武器のスペックの話したりしますが、あれちょっと男性目線に偏ってるなと思います。
私も比較的スペック好きですけど、リロードの音が爽快!ってのが本質ですからね。

♂「この場合は武器はこれがセオリーだ」

♀「こっちの方がリロードする度、気合いが入るのよ」

なんて会話、してみたいわ。

何かを極めてる女性でも、元をただせば「好き好きー」と盛り上がっていたら結果として極めちゃった、ってところにたどり着いただけで、極めること自体は目的ではなかったりします。
いまオリンピックやってますけど、いや正直ほとんど観てないんだけど(ラグビーBritish&Ireland Lionsツアーと丸かぶりだもんで*5)、比較的女性のアスリート、特に日本やアメリカの女性アスリートが概して辛そうに見えるのは、極めることそのものを目的にすることが本性に反しているからじゃないかなあと思います。

男性ももちろん好きがスタートだったりするでしょうが、結局は極めることそのものに快感を覚えるというか。なんだか字面だけみると違う意味になりそうですが、あながちそーゆー捉え方で間違ってない気もします。
いやいや、女性を喜ばせるのが好きな男性もいるぞと言われるかもしれませんが、そういうタイプは女性を喜ばせることを極めてる訳で、やってることに違いはあっても本質は同じです。
……って、一体何の話をしてるんだ、私は。

ようするにですね、世の男性から全ての牙を抜くと、この映画の冒頭のようなnobadyになっちゃうわけです。
例えその牙が女性目線からは「なんでそんなことに燃えるんだこの中二病野郎」と思えるものであっても、我々女性は生温かい愛情でもって見守りつつ、この映画のように地下室のある家を探すくらいのおおらかな気持ちでいた方が、まあうまいこといくんじゃないかなと思うわけです。
ただし、男性側も戦闘モードを発揮するのなら、いやそもそも発揮できずに自信が持てないなら、セクハラパワハラなんてド底辺でマウント取るようなマネをして自分をごまかすよりも、まずは女性への向き合いかたを極めていただきたい
その方が男女共に満足するのではなかろーかと。

あ、いや、そーゆー意味ではなく!
いや、そーゆー意味も含まないでもないけれども!

*1:余命わずかの高校教師が麻薬王になるドラマ。大絶賛ドラマなんだが私はノれず。オデンカークは登場人物の一人、弁護士ソウル・グッドマン役。

*2:ブレイキング・バッド』のスピンオフ。オデンカーク演じる弁護士ソウル・グッドマンが主役

*3:凄腕スパイなのに家族にはその事実を隠して活動しているため、家族からなめられまくってるシュワちゃんが夫として父として威厳を取り戻すべく頑張る話(という記憶)。監督が結婚→離婚を繰り返すジェームズ・キャメロンだと思うと、何やら味わい深い。

*4:アクション映画が大好きなミュージシャン。

*5:4年に一度結成される、ラグビーイングランドウェールズスコットランドアイルランドの選手からなる混成チーム。このチームが、4年ごとにニュージーランド、オーストラリア、南アフリカに遠征してその国のクラブチームやナショナルチームと戦う。メンバーに選ばれる方も名誉だが、相手国選手にとっては12年に一度しか対戦するチャンスがないため、これがホントの一生に一度。

『モータルコンバット』真田広之がカッコいい、それが全て(ネタバレしてるかもしれない)

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私がTwitterでフォローしている映画好きの皆さんは、このところ『モータルコンバット』で盛り上がってます。私はほとんどゲームをやらないので元ネタはよく知らないのですが、残酷描写が満載、かつ、真田広之が出てると来れば、観ないわけにはいきません。

世界的人気を誇る対戦型格闘ゲームで、1995年にも一度映画化されている「モータルコンバット」を、新たに実写映画化。胸にドラゴンの形をしたアザを持つ総合格闘技選手コール・ヤングは、自身の生い立ちを知らないまま、金を稼ぐために戦う日々を送っていた。そんなある日、魔界の皇帝シャン・ツンがコールを倒すため、最強の刺客サブ・ゼロを送り込む。コールは特殊部隊少佐ジャックスに言われるがまま女戦士ソニア・ブレイドと合流し、地球の守護者ライデンの寺院へ向かう。そこでコールは、太古より繰り広げられてきた格闘トーナメント「モータルコンバット」の存在と、自分が魔界の敵と戦うために選ばれた戦士であることを知る。主人公コール役に「デッドプール2」のルイス・タン、女戦士ソニア役に「MEG ザ・モンスター」のジェシカ・マクナミー。日本からも真田広之浅野忠信が参加し、重要キャラクターのスコーピオンとライデンをそれぞれ演じる。(映画.comより

正直にいえば、映画そのものについては、物足りなかった。だってせっかくの15禁映画なのに、大したゴア描写もなく終わってしまい。
場内明るくなったとき思わず、「えっ、これだけ!?」って声が出そうになっちゃったよ……。

……だってだってだってだって!(子供か)

原作ゲームで有名な、噂の頭を脊髄ごと引っこ抜くヤツ、めっちゃ期待してたのよ!!(ゲームしないのにそういう情報だけは持っている)
あのね、ホントに心底から、心のド底辺から期待してたのよ!

なのに、ゴアっぽいご死体様は、4体だけ!
4体だけって!
4体だけって!

すみません、ちょっと錯乱してます、落ち着きます。

アクションは全般的に良かったんですけどね。期待してたのがそこじゃなかったもんですから。
確かに残酷描写はあったけど、そこに不謹慎さがない。いけないことが起きてる感がない。人類側は思っていたほどひどい目にあってないし。

魔物が臓物撒き散らしたところで、別に残酷って特に思わない、です、よ、ねえ……?それとも私の求めるものが、方向性間違ってるんでしょうか。

 

……が!ハンゾウを演じた真田広之には大満足!!!!!

影の軍団*1以来40年以上、つまり子供の頃からわたくし、「理想のタイプは真田広之を貫いてきました。
真田広之に限り、役者としてのファンではなく、純粋に顔と体と身体能力が男性として直球ド真ん中の好みなんです、はい。
どれぐらい好みかっていうと、全く興味のないドラマ『高校教師』*2だって観ましたからね。毎週、真田広之が観られるから、というだけの理由で。もちろん内容は覚えてない。

え? だから結婚できないって?
違います、妥協したから、元カレどもは揃いも揃ってダメンズばっかりなんです。
やっぱりね、人間後ろ向きの妥協はあかんです。それで結果、独りで生きてくはめになるのなら、それならそれでよし。
少なくとも別れ話がこじれた末に、車から飛び降りて逃げる必要はない(徐行速度です)。

それはともかく、やっぱりアクションあってこその真田広之。久々に大満足、冒頭10分と終盤10分だけで、万馬券当たったような気がしています。

いやこれ、監督、真田広之が撮りたかっただけなんじゃないの?
どう考えても、真田広之の出てるシーンだけ、完成度が異様に高過ぎやないですか。
カッコいい真田広之をよりかっこよく撮るためにどうすればいいのか、その為だけに絶対何度もミーティングして金もぶちこんでるだろ?

ご存知の通り、真田広之はほぼ完全に活動の軸足をアメリカに置いています。もう長いこと、海外エンタメでしか会えない男です。
この映画を観ていると、日本のエンタメには真田広之を生かせる世界がないなと思います。
過去作を見れば、アクションだけでなく、正統派のドラマからコメディまで、演技の幅が広いことは一目瞭然。
でも、一番しっくりくるのは、派手で大袈裟な演出、現実とかけはなれた世界、そんなヤツいねーよ!と突っ込みたくなるキャラクター。並みの役者なら、ただのオーバーアクトになって「うぜぇ」と思わず声に出してしまうのが常の私。

でも真田広之は、どんなあり得ないキャラクターでも、何の違和感なく「カッコ良く」存在できるナチュラル・ボーン・歌舞伎男なのです!!

スピード・レーサー*3とか、そうじゃないですか。あの演出は大失敗だと思うのだけど、浮きまくった役者たちの中で、真田広之だけは妙に現実感を伴って存在しいた。いや、あの派手でワケわからん演出に一切飲まれないのですよ。

そんな人ですから、いまのアメコミ流行りの映画に本当によく似合う。演出も合うんだと思います。

日本でマンガを原作にアメコミみたいな映画を作ると、正直、演出がいかにもマンガから脱却できずにマンガっぽさが残りすぎて苦手です。
それに中心人物の設定がティーンの場合が多く、洋の東西問わず、青春というキーワードに1ミリも興味が持てないため、観ても内容がまったく頭に入らないってこともあります。

マンガもいいんだけどさ、日本には狂った小説も多いんですよ。もう誰も『魔界転生*4みたいな映画、作ってくんない。『帝都物語*5みたいなのでもいい。
ああ、若き日には『幻魔大戦*6や『妖星伝』*7や『神州纐纈城』*8が実写でみられる日がこないかなあと思ってましたが、こないんだろうなあああああああ。
その全ての世界観に、真田広之は似合うんだけどなあああ。

千葉新一の生み出した最高に二枚目でカッコいいキテレツ役者を、日本は結局活かせなかった。
思えば、真田広之が日本映画から去った頃から、私が邦画を観る頻度は激減しました(もともと多くはなかったが)。何かがシンクロしているのかもしれません。

 

……えー、自分でも何の話をしているのかまったくわからなくなってきました。
真田広之が桁外れにカッコ良すぎて、自分が何を観たのか映画自体はすでに内容はボヤけております。
ただただ真田広之だけが、真田広之史上最高を更新したアクションと存在感で、脳内リピートされています。
でもそれでこの映画としては十分じゃないかと思います。
続編求む!
もちろん真田広之だしてね!

*1:千葉真一と彼の率いるジャパン・アクション・クラブ(JAC)というアクション俳優やスタントマン・スタントウーマン育成軍団による、80年代のトンデモ忍者時代劇ドラマ。私の中では影の軍団JAC真田広之JAC所属で『影の軍団Ⅱ』から登場。

*2:高校教師が生徒どどーかなる話だったような気がする

*3:日本のアニメ『マッハGoGoGO』を原作に作った映画。『マトリックス』という超ド級ヒット映画を産んだウォシャウスキー姉妹が作ったのに、彼女たちの原作アニメへの思い入れが強すぎて、観てるこっちはどう接してあげればいいのかわからない映画になっている。

*4:日本が誇る伝奇小説作家 山田風太郎の超代表作を原作に、深作欣二が監督、主演は千葉真一という、賭けてもいいが世界一すげー暴力とエロと毒々しい美にあふれた時代劇映画。沢田研二真田広之のキスシーンがある。ああ、深作欣二が恋しい。

*5:荒俣宏という伝奇・SFの歩く宇宙みたいな作家による、明治末期以降の日本を舞台に怨霊や陰陽師や出てくる小説が原作。監督がこれまたSF・伝奇物に造形とこだわり深すぎの実相寺昭雄。ああ、実相寺昭雄も鬼籍に入ってるんだよなあ。

*6:SF作家 平井和正の超能力者と幻魔が戦う話。石森章太郎との漫画共著が元で、ノベライズのはずが世界観が広がりすぎて途中からもうなんかよくわからなくなってくるが、とにかくすごいんだよ!アニメ映画はあるけど実写でも観てみたいんだよ!

*7:SF作家 半村良による、エロと超能力と忍者と宇宙人と、とにかく全てぶっこんだトンデモ小説。『戦国自衛隊』は映画化されてるけど、誰もこの作品の映像化に挑戦してくれない。映像化すれば最低でも15禁案件と思われる。

*8:気づけばもう100年くらい前に書かれた、伝奇作家 国枝史郎による戦国時代を舞台にした、とにかく悲惨で狂ってる小説。途中でストーリー展開がよくわからなくなる上に未完で、それもよりによってそこでかよ!と、あの世に向かって抗議運動したいぐらいのところでぶっつり終了。

『ジョン・ウィック』リロードにときめき、偏見と戦う今日この頃


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このところ、記事を書いては途中で脳のリソースを仕事にとられて完成させられない、という日々を過ごしております。
平日はもちろん、土日は爆睡していて、気づいたら夕方、というのがザラ。いまだ本調子ではないので土日は仕事しないと決めてますが、やろうとしたって多分寝る。
こういう時に、まだまだだなあと思います。

それに最近は、社内の大きなシステム改訂を行うべく、どう幹部をだまくらかしたら、もとい、どう説明したらこのご時世に5億円の予算とれるかと、ああでもないこうでもないと企画書をこねくりまわしているせいか、モノを書く欲求がある程度満たされている感じです。

そんなこんなでまた久々ですが、そういう状況下で何を観ていたかたというと、自宅で『ジョン・ウィック』祭りを繰り返していました
去年の今ごろでしたら、メンタルやばすぎたあまり、ただただ人が殺されていくのを黙々と観ていただけかと思います。

が、回復してきたいまの私は違います!
本領発揮です!(仕事は!?)

っもお~、リロードって大好き!!

リロード、つまり銃に弾倉を再装填することです。
私、銃撃戦おいて一番好きなのは、銃声でも撃つフォームでも銃そのものでも、ましてや流血でもありません(いや全部好物だけど)。
このリロードする行為全般、特にリロードのカチャとかガチャとかガシャンとかいう音が好きで好きで好きで。観て聞いてると、なぜか銃声よりも断然気分がスッするんですよねえ~。

ショットガンならなお良し!

なぜなのかは全く不明。確かに、もともとカチャカチャガチャガチャという音って好きなんですが。
ターミネーター2』あたりがきっかけかとも思いますが、当時はそこまでリロードにこだわった覚えがありません。
とにかく、気づいたらリロード好きになっていました。

ですからね、『ジョン・ウィック』を観たことのある皆さんなら既に納得されたかと思いますが、このシリーズ、1~3まで全編リロード祭りなんですよ!!
銃で打ち合う映画であれば、リロードシーンが全くないなんてことはあり得ません。それでも、別にそこに注力しているわけではありません。
それどころか、その弾倉っていったい何発弾入っとるんかい!と突っ込みたくなることもしばしばです。

しかし、ジョン・ウィック』シリーズにおけるリロードは、キアヌに次いで、第二の主役と言ってもいい!
リロード及びその手際の重要性を、これほど熱く見せてくれる映画が、これまであっただろうか!?
いや、ない!

ネット上を探すと、映画のリロードシーンを集めた動画とか落ちてます。5分とか10分くらいにまとめたヤツが。
でも『ジョン・ウィック』は、それを90分だか2時間だか、延々撃ってはリロード、撃ってはリロードを繰り返してくれるわけです。
それも、キアヌ・リーブス付きで(順序が逆だろ!)

考えてみればです。
あの殺し屋ネットワークが一大産業となっている世界、人口における殺し屋の構成比は何%か計算したくなる殺し屋の多さ(そんなに需要があるのか?)、そしてどんな混戦中でもミスショットをほとんどしないジョン・ウィック
もはやこのシリーズはファンタジーですよ。

なのに妙にリアル感(リアルとまでは言わない)を生んでいる理由の一つが、キアヌも相手もリロードにわちゃわちゃするところじゃないですかね。
たまにジャムってるところが、また可愛いのよ~(可愛いの定義が自分でもわからん)。

しかしですね。
「ショットガンのリロード音が好きなんです」

という話をしてノってくれる人間が、私の日常にはおりません。類は友を呼ぶはずなのに、誰も来やしねえ

まあ百歩譲って、女性の類友に出会う確率は少し下がるのかもしれない。でも、私の職場は男性が圧倒的に多いというのに、なぜか全員首をかしげる
彼らはみんな、昭和生まれですよ。男子はこうあるべき、という親や学校や世間の圧力に亀甲縛りされて育ったような世代ですよ(表現が18禁)。
そんなジェンダーバイアス男子のくせに、銃にも戦闘にも流血にも興味がないなんて。

しかも、ゲームなら平気だけど実写映画はダメ、とかいう輩もいて、意味がわからん。たかが『バイオハザード』の話でですよ!?
今の熟年中年男子諸君は『ゾンビ』とか『ランボー2』とか観て育ったんじゃないのか?(偏見)

先日、嬉々として会社の昼休みに『ジョン・ウィック』とリロードの話をしていたらですよ。
センター長(55歳♂)から「残酷なのが好きだよねえ」と言われ、後輩(40歳♂)からは「銃の話する時、乙女の顔するのやめてください」って言われたんですよ、私!

ジョン・ウィック』は残酷じゃねーし!
プロだから!
キレイに急所狙ってしっかり殺るから!
てか「リロード」って言葉の意味から説明しないといけない輩に、リロードへのときめきを否定される謂れはない!

このあたりが、わたくし、トントン拍子で昇格したのに役職につけない原因なんでしょうか。うち、世間的にはそれなりにご立派な会社ですからね。
黙ってりゃいいんでしょうけど、所詮は元がコレなんで、ご立派な会社員の擬態って疲れるんですよ。

そういえばジョン・ウィックも、一度は足を洗って普通の人間のフリして生活してましたけど、結局闇の世界に戻ったわけで。
人間の本質なんざ、結局ごまかしはきかないのです。
そういう視点でみると、『ジョン・ウィック』も結構深い話ですね。

……って、んなわけあるかい!

 

 

 

『21ブリッジ』チャドウィック、じゃない戦友よ、さらば(ネタバレあり)

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前回の更新から1ヶ月経ってしまいました。
読んでいただいてる皆さんには、アフガニスタンで戦死したんじゃないかと思われていそうです。

一応、先月の戦地からは基地に戻ったんですが、本国への帰国は叶わず、相変わらずアフガニスタンの別の場所で戦っております(前回の記事を読んでる人以外、意味のわからない文章)。

更新が途絶えていたのは忙しかったのもありますが、ちょっと書けなくなってたんですよね。
今回の『21ブリッジ』、どうしても観たくてコロナ対策万全にして川崎まで観に行ったんですが(東京の映画館が閉まってるから)、帰ってきて「さあ書くぞ」と200文字ほど書いたところで、ぱったり書けなくなっちまいました。

ブラックパンサー」のチャドウィック・ボーズマンが主演・製作を務めたクライムミステリー。マンハッタン島で強盗事件が発生し、銃撃戦の末に警察官8人が殺害された。捜査に乗り出したのは、警察官だった父を殺された過去を持つデイビス刑事。マンハッタンを全面封鎖して犯人の行方を追うが、事件の真相に迫るうちに思わぬ事実が浮かび上がる。孤立無援となったデイビス刑事は、事件の裏に潜むニューヨークの闇に立ち向かうが……。共演は「アメリカン・スナイパー」のシエナ・ミラー、「ビール・ストリートの恋人たち」のステファン・ジェームズ、「セッション」のJ・K・シモンズ。製作には「アベンジャーズ」シリーズのアンソニージョー・ルッソ兄弟監督が名を連ね、「ゲーム・オブ・スローンズ」などテレビドラマを中心に手がけてきたブライアン・カークがメガホンをとった。

2019年製作/99分/G/中国・アメリカ合作
原題:21 Bridges
配給:ショウゲート
(映画.comより)

この映画は、昨年亡くなったチャドウィック・ボーズマンの、劇場公開作品としては遺作にあたります。役者としてこれからという時期の死なので、私も色々思うところはありましたし、わざわざ遠出して観に行ったのも彼観たさです。
だから、観終わってチャドウィックについて書き始めたのも自然な流れでした。いや、自然な流れのつもりだったのですが、全然書けない。
どーーーーーしても書けない。

そこですっぱり諦めて他の映画のことでも書けばよかったのに、どういうわけかそれもできない。この映画のことを書きたい欲求は強くて、他のことを書く気になれないんです。
それがなぜなのか自問自答しながら三週間近く。ついに衝撃の真実と向き合ってしまいました。

私、チャドウィック・ボーズマンについて書きたいわけじゃなかったんですよ、実は。

あ、いやいやいや。
この映画のチャドウィック・ボーズマンはどうだった?と聞かれれば、いくらでも熱く話せますよ。
でも、あくまで誰かに聞かれれば、あるいは、お題目としてもらったら、の話。自発的に書きたいネタかというと、違う。

なのに、彼のあまりに早すぎる死に影響されて、彼について書かんといかん」と、無意識に自分に枷をはめていたらしい

そりゃ書けなくなるわな。
映画をネタに好き勝手なことを書くのが楽しいのに

ということで、チャドウィックについて書かれたものが読みたい方は、いつものように他のちゃんとしたブログに行っていただき、私は我が道を往かせていただきます!

 

いやー、まさかの戦友との再会、テイラー・キッチュ

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上が『21ブリッジ』のレイ役ですが、彼、ローン・サバイバー』でマーフィー大尉役(下)を演じてたんですよ。現実の大尉(元同僚)が転勤していって10日でしたから、二重に感激しまして(これまた前回の記事を読んでないと意味不明)。

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だからねー、彼の所業にびっくりでした。
強盗自体はいいんですが(いいのか?)、大都会ニューヨークだというのに、戦場のように躊躇なく相手を殺していくんですよ。

お前、致命傷を負いながらも、基地との通信を確保するため、命懸けで山頂に上るような勇敢な男だったのに!!(『ローン・サバイバー』だっつーの)

冒頭のチンピラ感満載の会話から、一瞬にして戦闘モードに切り替わったところは、思わず身を乗り出しちゃいましたよ。「敵と見なしたら殺る」というのが第二の本能となってるんですね。

実は、そこで初めてテイラー・キッチュだと気づいた次第。そのシーン、目しか出てなかったのに、わかった自分がちょっと怖い。
どんだけ脳内で『ローン・サバイバー』再生してたんだよ

別にテイラー・キッチュのことは、さして好きでもなんでもないんです(ひどい)。
そこそこハンサムなんですが、『バトル・シップ』*1や『ジョン・カーター*2を観る限り、正統派の主演を張るには微妙。
でも軍人役が多いせいか、銃の構え方とか動き方とか、本物?と思いたくなるほど板についてて、そこは結構好きです。
で、そっちにばかり目がいって、演技がどうだったのかはいつも定かではなく(ひどすぎる)

でも、チャドウィックとの撃ち合いシーンは良かったなあ。
物陰から撃ってくるチャドウィックに対し、キッチュは隠れもせずに真っ直ぐ立って、でも相手に体の正面は向けず、撃ち続けてチャドウィックを確実に足止め。この、的になる体の表面積を減らして被弾を避ける、っていうスタンス、実用的かつビジュアルとしてもカッコいいじゃないですか。

しかしチャドウィックの射撃も見事で、結局キッチュは腹に一発食らい……。
でも、被弾してるのにあれだけ動けるところがもう、私好みの戦士・オブ・戦士
もうね、最後の力尽きた姿には、すっかり戦友のなれの果てを見ているような気になって半泣きです。

現実世界における私の戦友も、有能だけど正義感が強い上に若干キレやすく、転勤しても「ここの部署、こういうとこ、おかしいだろ!?」とメールが来ます。
文面から推察するに、怒りを感じた瞬間にメールして発散しているものと思われます。戦友の今の立場では、職場でキレるとパワハラと言われかねないので、私は肯定しつつもなだめる返信を送ることに努めてはいます。

が、所詮は類友
私も奴と同じくらいキレやすい上に慇懃無礼」が金科玉条なので、果たして常識的な方たちからみて穏やかな返信になっているのか、その辺は自信がありません。キッチュの殺人を止められない弟分役の、ステファン・ジェームズみたいなもんです(いい方に回るな)。

いやはや。
帰還兵にはカウンセリングしてケアしないと、環境の変化に適応できないっていうの、ホントわかるわ。
テイラー・キッチュの死に顔が、他人事とは思えない。
どうせ死ぬなら、会社じゃなくてチャドウィックのような高潔な相手に殺されたい

*1:一部(主に日本)で妙に人気のある、宇宙人と軍艦で戦うポンコツ大作映画。私も褒める気はないけど、洗濯物を畳みながら観る分には悪くない。

*2:ディズニーにしては珍しく大コケしたSF映画テイラー・キッチュの衣装が異様に似合ってないこと以外、何一つ印象に残らない。

『ローン・サバイバー』21年4月の私と仲間たちを描いたドキュメンタリー映画のあらすじ(ネタバレになるのか不明)

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前回の記事から三週間経ってしまいました。いつも読んでくださる方の中には、また何かドラマにハマってるんじゃないかと思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

違います。
ガチで仕事が忙しいです。

あ、はい、私、休職してましたよ、つい最近まで。仕事し過ぎで。はい。
まだ定期的に通院してますし、薬も飲んでます。週の半分は在宅ワーク、以前のように延々と仕事することもなくバサバサ割り切り、体調優先で仕事してます。
でも、環境はアフガニスタンです。

この三週間、特に直近二週間は、仕事中の脳内で延々この映画が再生されています。
なんかもう改めて観なくてもいいんじゃないかってぐらい、再生されてます
なので、今回の記事は映画と現実がごっちゃになった私の脳内の話なので、ちゃんと映画について知りたい方は、よそ様のブログに行かれた方がいいんじゃないかと思います。

もっとも、いつもこのブログを読んでくださる方は、そもそも映画の話なんて私に期待していない気もしていますが

米海軍特殊部隊ネイビーシールズ創設以来最大の惨事と言われた「レッド・ウィング作戦」を、マーク・ウォールバーグ主演、「キングタム 見えざる敵」のピーター・バーグ監督で映画化。2005年6月、アフガニスタンの山岳地帯で偵察活動中の4人のシールズ隊員は、あるひとつの決断によって、200人を超すタリバン兵の攻撃にさらされることになる。極限の状況を生き延び、奇跡の生還を果たした唯一の隊員マーカス・ラトレルが執筆し、全米ベストセラーとなったノンフィクション「アフガン、たった一人の生還」が原作。テイラー・キッチュエミール・ハーシュベン・フォスターエリック・バナらが共演。

2013年製作/121分/PG12/アメリ
原題:Lone Survivor
配給:東宝東和、ポニーキャニオン
(映画.comより)

さて、傷病兵になって休んでいた私は、1月半ばから本国でシールズに復帰、3月半ばにはアフガニスタンで仲間と合流、後方支援を経て4月から前線に復帰と、段階を踏んで戦場に戻っていきました。

私含め仲間は4名(上司はカウントしてやる気にならん)。
階級つけるとこんな感じ。

戦士・オブ・戦士の大尉(♂)。シールズ入って丸4年の、『GOT』貸してくれた戦友です。海軍入隊は私と同時期ですが、優秀で昇進が早く、シールズに来た時点で階級は私より上。5月にはさらに昇進転属予定。
前世が戦士の私(♀)は兵曹長ってとこですね。シールズ入って7年目の准士官。各地で戦闘経験ありの、ベテランですが、PTSDを抱えてます。
そして、中堅どころのデキる上等兵曹(♂)。戦闘経験は豊富ながら、シールズとしては2年目。過去の経験を上回る戦闘が続いて、プレッシャーがかかっています。
最後はポテンシャルはあるが若い二等兵曹(♀)。シールズ3年目ですが、軍歴通しての戦闘経験がやや少ないところが不安要素。

このメンバーで「レッド・ウイング作戦(くそデカい社内の体制変更に伴うシステム対応他関係する大小ありとあらゆる業務)」の先方として現地に出た所、突如、タリバン兵200人に一斉砲火を浴びてしまったのです。

実は私、休職前に経験値を買われて「レッド・ウィング作戦」の策定段階から関わっていました。策定作業にはお偉方(部長クラス以上)しかいなかったので、彼らの好き勝手な発想を、実行可能な計画にしていくのが私の仕事でした。
ところが私が傷病兵になって離脱したものですから、ほぼ残ったお偉方だけで作戦は作られてしまい、年明けになって現場に開示された時には、実に詰めが甘く実行不可能なザルのような作戦だったのです。
復帰後の私は後方支援として何とか作戦にテコ入れはしたものの、4月にタリバンに囲まれることは予想してはいました。

が、予想をはるかに超える200名のタリバン兵。
右から左から上から下からAKライフル(各所からの問い合わせ)とRPG(システム不具合)で襲われてるのに、こちとら4名で軽火器しかなく通信も途絶えてしまいます(お偉方は既に別の仕事に夢中)
持てる知識と経験値とベテランの勘を総動員し、脊髄反射的にタリバンと戦う私は「鬼のよう」(本当に言われた)だったそうです。

しかし、まずいきなり大尉が爆破で重傷を負います(異動は5月なのに、諸般の事情で4月から引き継ぎも無いまま異動先部署の仕事も兼任)。
次に二等兵曹がタリバン兵に囲まれてしまい(全国の事務方担当者から問い合わせが殺到)、その場に置いていかざるを得なくなりました。
そしてギリギリ持ちこたえていた上級兵曹も腹に被弾腸炎発症。どう考えても過労とストレスのせい)、身動きできず。

支援のヘリ(システム部門)もタリバンに撃ち落されて全滅(徹夜続きで限界。電話に出てくれない)
そうこうするうち、決死の覚悟で通信を確保(私らへの業務引継ぎ)した大尉も、致命傷のため力尽きる(引っ越し)時がやってきました
ということで、現在動けるのは兵曹長の私だけ(PTSD持ち)なのです。

そんな中でもなんとか生き延びているのは、村のみなさん(営業部門)が、可能な限りタリバン相手に耐えてくれているおかげです。
これは、休職前ならあり得なかった。
営業って、いままでなら真っ先に文句言ってきて、何ならこちら(事務方)に向かって手りゅう弾投げ込むような人たちなんですが。
極限になると、営業という人たちは「パシュトューンの掟」*1のごとく昔気質の面が出てくるのか。
何にせよ、本当にありがたいことです。

とはいえ現在も「レッド・ウィング作戦」はまだ収束しておらず、私は基地(通常業務)に帰還できるみこみもないまま、村でタリバンと戦い続けている状況です。
果たして救出のヘリはやってくるのか……。

という感じの映画です、『ローン・サバイバー』は。
多分。

(自分ではもう違いがわからない)

……その後(まだ作戦終わってないけど)の仲間たちですが。
大尉は、二階級特進で中佐に昇進し別チームへ転属。名誉勲章ももらいました。
戦友として私も誇らしいのですが、当の本人は死んでるも同然なので(仕事中の反応がおかしい)、寂しいながらも早くアフガンを忘れて体調戻してくれと思ってます。
下士官二人は初めての極限状態を経験して一皮向けた感じもあり(こんな状況で成長させるつもりではなかったんだが)、そして新人の配属も決まりました。

そして私。
PTSD持ちの上に准士官の給料しかもらってないのに、大尉が抜けたからとなし崩しに尉官クラスの仕事をさせようとするお偉方に慇懃無礼な暴言吐きつつ(礼節より自分のメンタルヘルスが優先)、まだしばらくは、仲間とともにアフガニスタンで終わりの見えない戦いを続けます。

ちなみに、本物のアメリカ軍は21年9月にアフガニスタンから撤退予定です。

 

※2021/04/17 20:00 リンク貼るの忘れていました…

*1:「敵から追われている者を、自らの命を懸けて助けよ」という2,000年以上続く掟。