前世戦士の映画日誌

前世が戦士らしい女が映画を観て色々吐き出します 生態日誌です

『ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト』ミック・ジャガーへのトラウマを解消した映画

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私には子供の頃からのトラウマが3つあります。
ひとつは、体調が悪くて吐いたゲロがマヨネーズの味そのままで、以来マヨネーズが食べられなくなったこと(現在も継続中)。
もうひとつは、御巣鷹山日航機が墜落した日、JALから家に電話がかかってきて「お客様が明日乗る飛行機が”無くなりました”」と言われて以来、JALが使えなくなったこと(島根出張で強制的に解消。羽田ー出雲便はJALしかないので)。

そして最後のひとつが、MTVで見たミック・ジャガーの顔が怖くて、ローリング・ストーンズを避け続けてきたことです。

私は、歳の離れた姉たちが洋楽好きだったことや、洋画ばかり見ていたせいで、小学生ですでに洋楽を聞いていました。
ま、とはいえ映画ほどには洋楽の好みは一貫しておらず、好きなアーティストを並べると、自分でもそれぞれ何が理由で気にいっているのか、よくわかりません。
BON JOVIだけは、5万字くらい平気で語れますが。

とはいえストーンズだけは音楽がどうとかではなくて、とにかくミックの顔が怖い
なんか頭からかじられそうじゃないですか、口でかいし。
だから音楽はおろか、写真や映像すら避け続け、40近くになってCSでたまたまこの映画を観るまで、本当にストーンズ抜きの洋楽生活でした。

ディパーテッド」「アビエイター」のマーティン・スコセッシによるモンスター・バンド“ザ・ローリング・ストーンズ”のライブ・ドキュメンタリー。2006年秋にニューヨークのビーコン・シアターで行われたライブの模様と、バンドのフロントマンのミック・ジャガーとスコセッシ監督のせめぎ合いが臨場感あふれる映像で収録されている。ライブには、ホワイト・ストライプスのジャック・ホワイトやクリスティーナ・アギレラも飛び入りゲストとして登場している。

2008年製作/122分/アメリ
原題:Shine A Light
配給:東北新社
(映画.comより)

この映画、存在は知っていたんですが、もちろん公開時は観る気はなく。ただ、やっぱり監督がマーティン・スコセッシ*1なんで、気にはなっていたんです。
だから最初はちょっとだけ、怖いもの見たさだったんですが、オープニングがあまりに面白くて。

あくまでビーコンシアターでのストーンズのライブを撮った映画なんですが、なんと、撮影前にストーンズに振り回される、スコセッシたちスタッフの様子から始まるんですね。
スコセッシは映画監督だから、ちゃんと段取りを決めてカメラを準備したい。だけどストーンズはアーティストなので、ああいや、映画監督もアーティストなんだけど、とにかく直前まで何を演奏するのか、どういう順番でやるのか、セットリストを出してこない。

別にさぼっている訳ではなくて、ミックは大まじめにセットリストを考えてるんですが、スコセッシは準備のために早く決めてほしい。催促しても出てこない。
最初はしっかりしたセットリストを欲しがっていたけど、とうとう「順番はいいから、何をやるのかだけ教えてくれ」みたいな感じになっていく。演奏する可能性のある曲を予想して、何がきてもいいように準備するはめに。

コミュニケーションが取れないとぼやくスタッフ、好き勝手なストーンズメンバー、リハーサル中のストーンズにあいさつ&記念撮影にくるクリントン元大統領とそのゲスト(30組って!)。
結局、セットリストがスコセッシの元にきたのは、直前。
セットリストが来た!その瞬間にパン!っとビーコンセンターの上空からライブ会場へと映像が切り替わる。

ちっくしょう、スコセッシめ!
やりやがるな、このジジイ!

ここで初めて、私はストーンズをちゃんと正面から見たわけです。

いやあ、顔が怖いとか言って、本当に申し訳なかったです。
彼らのパフォーマンスは圧巻でした。
と、同時に、ミック・ジャガーがフロントマンとして、いかにライブを作り上げる才能にあふれているか、そこがはっきりわかる映画でした。
そもそも、これはよくあるライブ映像ではなく、そんなもんなら別にスコセッシが撮る必要なんかないわけで。

もちろん、普通のライブ映像のように、ストーンズをカッコよく映すシーンも多々あります。でも目に留まるのは、彼らのちょっとした表情や仕草、アイコンタクト、観客に見せない後ろ姿、真剣なまなざし。
ライブでハイになっている一方で、プロフェッショナルとしての姿やお互いの関係性を、ものすごく丁寧に拾い上げている。
つまりこれは、ストーンズがライブという生ものを、一瞬一瞬で作り上げていく姿を追ったドキュメンタリー映画なんですね。

そういう形でなければ、私がストーンズに正対することはなかった気がします。
なにせ、今でも私は、別にストーンズの曲が好きな訳でも、ミック・ジャガーが好きな訳でもありません。ミックの世代なら、私はポール・マッカートニーの方が好き。
でも、ミックの才能には脱帽です。
ストーンズメンバー、サポートメンバー、ゲストアーティスト、観客までもコントロールし、最高のライブを作り上げるからこそ、60年代から最前線で生き残ってきたバンドなんだと本当に思う。

ライブ中、メンバーはミックの目くばせ、一瞬の指示に、操られるように動いてるんですよ。息が合ってるともいえるけど、魔法ですかね、あれ。言うこと聞いちゃう魔法?
もはや、すべてはミックの掌の上

唯一違うのはキース・リチャーズ(ギター)*2で、いやはやあのジーサンは、勝手に動く、周りまったく気にしない。ミック他全員がキースの動きに注意しているのが、めちゃめちゃ分って、思わず笑っちゃう(本当にミックは、よくキースを見ている)。
笑ってたら、途中に挿入された過去のインタビュー映像で、ロン・ウッド(ギター)がキースに合わせることついて「疲れる」と答えていて、さらに爆笑。
いやもう、もはや介護ですよ。
ミックを「神」と呼ぶ姉は、ストーンズはミックがいないと成り立たないと常々言ってますけど、それをまざまざと見せられました。
ううむ、ミック・ジャガー介護士でもあったのか。

今週は少々仕事で久々に振り回され、夕べから冷や汗や手の震えまで出て、すっかりくたびれました。傷病帰還兵のPTSDみたいなもんですね。ちょっと休職直前の自分を思い出しました。
こういう時は、あまりストーリーのあるものにはついていけないので、よく好きなアーティストのライブ映像を観るんですが、なぜか今日はストーンズ
思い入れがない分、完璧さを丸ごと楽しめるからかもしれません。
そしてすっかり、汗と震えは止まったのでした。

さて、週末も疲れがとれてなければ、ライブを観る日にしましょうかね。
BON JOVIは、もうちょっと元気になってからのカンフル剤(なにせ、人生応援歌だから、落ちてるときは少々タフ)として、やっぱり癒し系のテイク・ザット*3かしら。

映画は日陰なダークサイドを愛する私ですが、音楽の方は、なぜかお日様の下を胸張って歩ける、王道ロックやボーイズグループが好きな私です。
といいつつ、ストレスたまるとパンクやデスメタル一色ですが。
ようは、気分です、てきとーです、はい。

*1:名作『タクシードライバー』を撮ったスゴイ人。大作から小品まで名作多数で、熱狂的ファン多し。少々演出が暑苦し……いやその、クセが強いので、私は実はそれほど好きではない。

*2:パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズで、ジャック・スパロウの親父を演じている。キースの顔は、別に怖くない。

*3:イギリスのボーイズグループのパイオニア。日本ではバック・ストリート・ボーイズの方が有名だけど、こっちが本家で歌も上手い。リーダーのゲイリー・バーロウは『キングスマン』の監督マシュー・ボーンの友達。

再び『ゲーム・オブ・スローンズ』忘れないうちに人物考察したことを書き留める(ネタバレあり)

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私の同僚は、やはり素晴らしい男だった。
忘れず『ゲーム・オブ・スローンズ』のシーズン8を持ってきてくれました。
ありがとう、ありがとう。

で、最終シーズンは1話が70分以上あるという、もはや映画になっていてびっくり。
だもんだから、1日に2話ずつ観るという私の構想は実現せず、1日1話ずつ見ておりました。

それにしてもドラマは1話完結型が専門の私が、このドラマを観続けられたのは、主要キャラからわき役に至るまで、キャラクターの描き方が丁寧だったことにつきます。
人物の感情や行動、物語を通しての成長の仕方が、とても自然で腑に落ちることばかりで、相当入り込んで観てしまいました。
原作は未読なので比べようがないんですが、嘘くさい奴がいないんですよ。物語のためだけに、取って付けたような人物がいない。

アメリカのドラマって人気がある限り続けていくので、途中で物語やキャラクターが迷走することも多いんですよね。長く続いてると、途中でメインの役者が降板して、展開変えざるを得なくなったりとかもありますし。
そういう不自然なブレが、『ゲーム・オブ・スローンズ』にはなくて。
しかも、バラバラだった登場人物たちが終盤に向けて集まっていき、群像劇だった物語がひとつにまとまっていくところは、見事としか言いようがない。
本当に、素晴らしいドラマだった。

ドラマを観終わってつくづく思います。ほんのひと時の出会いであっても、その縁はどこかに通じていて、何かに影響を与えているのだなと
ドラマですから、そこは濃い目に描かれてますが、実世界でも同じですよね。
先日、例えば同じ電車に乗り合わせた人々は、ごく薄ーーーーくではあっても、何かしら共通するものがある、という話を聞きました。
袖すり合うも他生の縁とか、言いますが、そんなところにも通じるかな。
そう思うと、今日一日の出会いというのは、決しておろそかにはできないんですね。

と言ってる私は、昨日は家から一歩も出ずに、2度目のシーズン8を見ていました。
口だけです、ごめんなさい。

 そこまでして見ていても、登場人物が多すぎて、時間がたつと色々忘れてしまいそうな気がするので、自分の備忘録がわりに、登場人物について「前世が戦士」とほざく私的に考察したことを書いておきます。

今までになく、がっつりネタバレしてますので、未見の方はご注意ください。
それから、めちゃくちゃ長いので、初めて目次って機能を使ってみました。
なので、適当に拾い読みしちゃってください。

ちなみに私は、この相関図を頼りにキャラを覚えました。うっかり「DEATH」を押すと生死がわかってしまうので、未見の方はこちらも注意。

ジョージ・R・R・マーティンの大ベストセラー小説「氷と炎の歌」シリーズを、デヴィッド・ベニオフとD・B・ワイスが映像化。米国エミー賞で歴代最多受賞を誇り、3シーズン連続でドラマ部門作品賞を受賞。第七章の最終回では、全米で1,200万人超えという同シリーズ最多視聴者数を更新したのをはじめ、熱狂的なファンを世界中で獲得している壮大なドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」。
架空の大陸・ウェスタロスを舞台に、王座をめぐる陰謀と策略が渦巻く権力争いを描く本作。綿密に練られた美しい世界観の中、敵味方の運命が交錯する人間模様。そして、人々を魅了するドラゴンや、恐怖に陥れる異形の者の存在がウェスタロスを揺るがす。非情だけれど現実的な物語の中でうごめく、魅力的で人間味あふれるキャラクターたちの、愛と欲望はセンセーショナルに、殺戮と復讐は血生臭く残酷に描写。彼らが戦いに、愛に、復讐に奔走し、傷つき成長していく、または堕ちていくさまを、誰も予想できないドラマティックな怒涛の展開で魅せる。 いかに生き、いかに死ぬか。そして誰が生き残り、誰が玉座に座るのかーー。連続ドラマだからこそのハラハラ、ドキドキ、ゾクゾクが満載の、映画ファンも虜にする海外ドラマの最高峰!

 (スターチャンネルサイトより)

目次

ラニスター家三姉弟

スターク家じゃなくて、最初にラニスター家がくる私です。

サーセイって結構嫌われキャラらしいんですが、私はわりと好きで。
最初から最後まで、人として一切変わらなかった、数少ないキャラですね。
この三姉弟、サーセイ&ジェイミー、ティリオンたちに影響を与えてるのは、人ではなく家名のことを第一に考えて、しかも絶対的な力をもつ父親と、母親の不在の二点だということは間違いない。
あの親父から親としての愛情なんて望むべくもないので、おそらく母親の愛情だけを受けて育ったんだと思います、サーセイ&ジェイミーには。
でもその母親が産褥で亡くなって、ラニスター家で子供に愛を与えてくれる人は、いなくなってしまったわけです。
一応、ジェイミーは嫡男なので、そういう意味では親父から目はかけられてましたが、サーセイは女なので、あの親父にとっては政略結婚の道具でしかないでしょう。
サーセイにとっては、母親の愛が全てだったはず。ティリオンを憎むのも、我が子が世界の全てになってしまうのも、わかる気がします。
だから、サーセイって憎み切れないところがあるんですよ。胸にぽっかり空いた喪失感を、埋めることができないまま生きてるから
ジェイミーとの近親相姦も、ジェイミーを愛しているというより、ジェイミーに流れる母の血を愛しているだけなんじゃないかな。

そのジェイミーって、私は一番可哀そうな人だと思っていて。
嫡男だからと親父から目をかけられても、親父がビッグ過ぎて、ああ見えて男としての自信はバキバキに折られて生きてたんだと思います。
根っこの部分に自信がないからユラユラ揺らぐ。自信がないから信念もない。
こういう人って、どういう訳か褒められないんですよ、何やっても。
顕著なのは、狂王を殺して世界を救ったのに、「王殺し」とさげすまれて、だれも褒めてくれないことですね。
ジェイミーの王殺しって、虐殺を止めるためという動機ではあるんですが、王を止めなければという強い信念や意思があった訳じゃなく、とっさの判断だったようで。そういうところが、さげすまれる所以かなあと。
これ、ジェイミーじゃなくて、同じ「王の盾」のバリスタン・セルミー(信念の塊)が殺したのなら、別な結果になっていた気がします。
ジェイミーにとっては、サーセイへの愛だけが軸。彼も母親不在の穴をサーセイで埋めてる面もありますが、サーセイの穴の方が大きくて飲み込まれてますよね。
本質的には優しい男で、物語を通してものすごく成長した人なのに、あともう一歩のところで、結局サーセイから離れられなかった。
ティリオンと一緒に泣いちゃったよ。

ジェイミーがティリオンを可愛がったのは、サーセイがティリオンを憎む理由と表裏ですよね。母親不在を、ティリオンを愛することで埋めてる(それが出来ないからサーセイの方が穴が大きい)。
ティリオンに至っては、その母親自体知らないし、父親と姉からは疎まれるしで、「兄上が世界の全てだった」というのは、本当にそうだったろうと思う。彼も愛に飢えていて、それは娼婦好きという面で出ていたけど、ジェイミーのおかげで愛自体を知らないわけじゃない。だから彼は邪悪じゃないんですね。
そして、彼は誰よりも学ぶ人です。それが自分の武器で、他と自分を分けるものだと自認しているから。
ティリオンは本当に何度も失敗しますが、その全てから学んで、何度も立ち上がります。物語中、最も成長した人物で、一番人気というのも納得です。
最後、サンサと復縁するのかと思ったよ、しなかったけど。

 

■スターク家

ここはですね、ラニスター家とは逆で、ネッド・スタークが愛情あふれる父親なもんですから、子供たちはみんな、愛に飢えてるってところはないんですよ。だから、スターク家には邪悪な人物がいない
ちなみに、同僚と私の間で「お父さん」と呼んだら、それはネッドのことを指します(同僚は名前を憶えられない)。

ポイントは、キャトリンですよね。この人は、あんなにネッドに愛されてるのに、子供が絡むと異常に暴走するんですよ。
ジョン・スノウの存在が、我が子可愛さに走らせてると思ってたんですが、彼女の死後に実家の事情がわかってくると、さかのぼれば妹との確執も根っこにありそうな。家族が壊れるのことが、彼女にとっての最大の恐怖のようです。

そのキャトリンに疎まれて育ったジョン・スノウは人気キャラですが、私にはジェイミー同様、可哀そうな人にしか見えないんですね。
ネッドのおかげで、ジェイミーみたいな心の折られ方はしてないんですが、自分の存在の不確かさが、自信の無さに繋がってます。
基本、誠実な人なんですが、時々行動がブレるのは、自信がない故かと。俺が望んだわけじゃないし、って、何回言うんだ、お前。
だからジョンって、自信のある女性にめっぽう弱い。弱すぎる。どこかで母親を重ねてるし。
私、元カレに二人ほど、ジョンのような微妙に自信のない男たちがいたので断言しますが、イグリットやデナーリスとの関係も、長くなれば捨てられてるから。少なくとも、私は捨ててきた。
だから、「冥夜の狩人」でいいんです、ジョンは。女に影響されやすいから。

前世が戦士の私にとって、誰よりも気持ちが寄っていくのは、アリアです。
貴族の女性だから、サンサのように結婚して子供をもって、ということを考えるのがこの世界の常識ですが、彼女は魂が戦士だから、そういう生き方に違和感を持ってます。
そこをネッドは分かっていて、彼女が弓や剣を練習することを止めなかった。でも、あのまま平和な時代が続いていたら、アリアは生きづらかったと思います。
スターク家が崩壊し、乱世が来たからこそ、彼女は「スターク家のお嬢様」ではなく、一人の「アリア・スターク」という戦士として、自分自身を見出します
「顔のない男たち」のところでの、顔を失くす訓練を通して、逆に自分が何者かを確信するストーリーには、震えがきました。
彼女は、最後には誰も知らない西の海へ旅立っていくけど、自分を世界の全てから解放したアリアには、ぴったりのラストだったなー。

サンサは、変化がすごいわ。絶対に途中で死ぬと思ってた。
キャッキャいってたお嬢ちゃんが、これでもかという試練を与えられまくり、最後には「北の女王」です。ネッドも、これは予想してなかったろうに。
彼女はアリアと逆で、自分はステキな王子様と結婚して子供を産むんだと信じて疑わなかったんですが、試練を通して、本来の自分に気づいていく。
現代に生きる女性に似ています。結婚して子供産んで専業主婦が女の幸せ、なーんて価値観を一律パーに植え付けられて育ったけど、あら?自分にはもっと違う生き方の方がしっくりするわ、と気づいちゃった女性たちです。
彼女は、自分がスターク家の表看板になってからも、ちょいちょい男性陣に遠慮する節を見せます。なかなか、女ごときとか、男子優先とか、そういう価値観から脱却しきらない。その揺らぎ、男性社会で生きる私らにはよーくわかる。
だから、最後に「北」の独立をブランに願い出るところは、「北」だけではなく、彼女自身が「女性とは」という軛から自分を解放したようにも見えました。
あとは、願わくば、つまらん政略結婚とかせずに、しっかりした男と愛し合って欲しいです。

ロブは、あまり印象に残ってない……殺された時の衝撃が大きくて。リコンはほぼ描写がないしなあ。
ブランは、ファンタジーなので、人物考察のしようもないです、はい。

 

■デナーリスと男たち

デナーリスは、これはティリオンが語ってるとおり、彼女は数々の成功体験を通して、自分が救世主で正しいと思い込んでしまったんですね。そこに炎に焼かれず、ドラゴンを使役するという奇跡体験が、彼女に自分は特別な人間なのだという裏打ちになってしまった。
身もふたもないことを言えば、奇跡体験=特別な人間、って訳じゃなく、奇跡体験した人、ってだけなんだが。
彼女も愛情をかけてもらない少女時代を送っていて、基本は「愛されたい人」です。ただ、彼女の場合は「愛されること」と「支配者になること」が、ごちゃ混ぜになっているように見えます。だから、デナーリスは、愛されないなら、恐れさせてやる!と、極端に反転してしまのかなと。
そこを、絶妙なバランスでとどめてきたのが、彼女を愛した男たちです。デナーリスが民衆の愛を感じられずにいるときも、彼女のそばには愛してくれる男たちがいました。
特に、ジョラー・モーモントの愛は大きいですよね。私は、「長い夜の戦い」で彼が死ななければ、ジョンの出生に対する不安も小さくて、デナーリスが王城を焼き払うこともなかったんじゃないかなと思います。
ジョラーやダーリオの愛と比べれば、ジョンの愛は子供っぽい愛だし、ティリオンも「愛してた」とは言うけど、彼は民衆への愛の方が深かった。デナーリスを満たすほどではなかったのですよ。
ダーリオ、連れてくればよかったのになあ。どうしてるんかなあ。

 

■この人たち、無理

私は、虐待する奴が嫌いです。

まずはラムジー
そもそも旗印が皮をはいで磔にした人間って、どういう家なんだよ、というツッコみがしたいんですがね、私。
彼は落とし子として愛情無しで育ったことが影響しているとは思いますが、まあ生得の気質ですよね、あそこまでの残虐性は。
しかもかなり頭が良い。テッド・バンティ*1かよ。

ジョフリーも無理。
彼はラムジーと違って根性も知能も無いんですが、甘やかされて何でも許されると思ってる子供なので、権力持たせると質が悪い。
人の心に共感する能力がないから、残酷なことも平気でできる。
どんなに悪い奴でも、子供が死ぬのはあまり好きではないんですが、ジョフリーについてはどうしても同情できなかった。

バラシオン家のスタニス、セリース夫妻も、ダメ。
メリサンドルはともかく、結局は彼女の言葉を信じて娘を生贄にするというのが、無理。
スタニスが、もし生きてたら、ダヴォスはどうしたんでしょうね。

ハイ・スパロウは、演じているのがジョナサン・プライス*2なので、そのこと自体は楽しかったです。
あの七神正教の裁判が、キリスト教の異端審問がモデルだってのはすぐわかりました。
異端審問というのは、教義の枠から外れた人間を排除するのではなく、彼らを「正しい」信仰に戻す、つまり人間を無理やり矯正する仕組みなんですね。監禁と虐待に耐えかねて、タイレル家のロラスが信仰に生きると言い出しましたが、まさにそれが目的です。
私はこの異端審問で卒論書きましたけど、「自分は正しい」と思うと、人間はどんなことでも平気でやっちまうんだなと思いました。動機の良しあしは関係ない。
異端審問を学んだ結果、「正しさ」と「不寛容」は裏表だというのが持論です。
だから、私は人から正義感が強いとよく言われますが、自分から安易に「正義」とは言えません。自分が怖くて。

ピーター・ベイリッシュ ”リトル・フィンガー”、やっと死んだよ。
もうね、ネッドを逮捕した時から、どうもコイツだろうと思っていたら、やっぱりこいつが始めた話だった。
好きとか嫌いとかではなくて、こいつ殺さないと殺し合いが終わらんわ、と思ったんですよ。だから、処刑と言う形で死んでくれて、正直ホッとしました。ホワイトウォーカーに殺されたりしたんじゃ、安易すぎる。
サンサが言っていたとおり、この男はこの男なりに、キャトリンやサンサを愛してはいました。
でも、ベイリッシュの奥底には、愛したものは手に入らない、って刷り込まれているように思います。
愛したキャトリンはネッドの妻になったけど、ネッドを陥れてキャトリンを手に入れようってわけではない。サンサを愛していると言ったけど、サンサと結婚するわけでもない。
玉座が欲しいというけれど、彼のやることは回りくどくて、本当に王になろうとしているのかわからない。
ベイリッシュは、手に入れるのではなく、手の内で転がすところまでしかしない、できないんじゃないかなと。本気で掴みに行ったら、誰かに取られるんだと恐れているのかもしれません。
ちょっと可哀そうでもないんですが、まあ、最終決戦前に死んでくれてよかったなと。ベイリッシュがいたら、話がややこしすぎるわ。

 

■この人たち、好き

とりわけ好きな人たちです。

実は、私の一番のお気に入りは、ブロンなんですねー。
何故って、この人、自分に正直に素直に生きている。見ていて実に清々しい。
友人でも雇い主でも、すぐ裏切るじゃねーかという見方もありますが、それはあくまで外から見ての話で、ブロンの中では矛盾がありません。
彼にとって、一番誠実であるべき相手は、自分自身だけ。誰にも約束しないし、忠誠も誓わない。だから、裏切ることで心を痛めることもない。
でも、度胸はあるし、残酷でもないし、情もある。自分の心の許容範囲内で、ティリオンやジェイミーとの友情は感じている。そういうヤツだから、ティリオンやジェイミーも、何度裏切られてもブロンを嫌えない。
最初から最後まで自分にブレがなくて、なおかつ幸せに生きてる人って、このドラマの中にブロン以外いませんよ。
言葉の使い方を間違ってると言われそうですが、私にとっては、このドラマの良心のよなキャラクターです。

ブライエニー、他人事じゃないですね。
女性であの体形・容姿、生き方。それを認めてリスペクトしてくれた、レンリーやジェイミーに惚れる気持ちはよくわかる。リスペクトと愛の区別って難しいですが、形にこだわらないのであれば、私はもう一緒くたでいいと思っています。
終盤、こうあるべきだという堅物から、ジェイミーのお陰で柔らかく変化したところは、ステキでした。女性にとって、自分自身を丸ごと受け入れて愛される経験は、人としての自信につながります(女として、というより人)。
最終的に、辛い別れが待っていたとしても。
最後、「王の盾」になっちゃったので、結婚はしないつもりなんでしょうが、恋人くらいはできそうな気がします。

サムの変化も、数少ない気持ちの良いものでした。
黒の城に来たときは、頼りなくてジョンに守ってもらってましたが、少しずつ、自分にできることに気づき、ジリに頼られることで自信もつけていきます。男性は人に頼られることで、人として成長するという、典型です。
男だからって頼られても……という声もあるでしょうが、それは頼られることがツラいんじゃなくて、貴方がとても疲れているだけかもしれませんよ。休職経験者から言わせてもらえば。

結構、泣いたのはシオンの最後。
彼がどこに向かっていくのか、最後までハラハラしていました。
彼はスターク家の捕虜とはいえ、兄弟のように育てられていましたが、実家に戻ったことでスターク家を裏切る羽目になり。
彼は、自分がスターク家なのか実家のグレイジョイ家なのか、ぐらついてるんですね。そこが、彼がスターク家を裏切り、残酷になってしまった所以です。何者かにならねばならない、という思い込みが、彼を苦しめていく。
そこをラムジーが、徹底的に彼の自我を破壊してしまうんですが、ラムジー憎しは別として、シオンにとっては、いったんシオンでなくなる経験は必要だったんじゃないかなと。アリアとちょっと似てますが。苦しみにいったんリセットかけたんですね。
そしてジョンが「スタークでグレイジョイだ」と言ってくれおかげで、彼のどっちの家か問題は終わりますが、今度は「臆病」だの「裏切り者」といった意識が彼を苦しめます。
だから、最後にブランから「君はいい人だ」と言われた時、シオンはここでやっと、自分を許せたんだと思います。
もうね、良かったねシオンと、そういってあげたい。

■最後に 

まあ他にもキャラクターはいっぱいいて、書ききれないんですが。だいたいこの辺でしょうか。
もしかすると、あとから追加するかもしれません。
ホントに、面白かったんです。
リアルタイムで観てた人が、ロスになった気持ちがわかる。
私もこの後、どのドラマ見ればいいのかわからない。

と、思ったんですが、そこまで見越したのか、同僚は新たなドラマのDVDも、そっと忍ばせて持ってきました。
出来る同僚を持つと、本当に困るわ。

※2021/3/21 13:00 誤字が酷いので修正しました。

*1:アメリカの超有名な連続殺人鬼。女性ばかり大量に殺している。魅力的で賢い。

*2:ウェールズが生んだ鬼才。悪役もわき役も、何やっても一味違う。

『ダンケルク』クリストファー・ノーランがやりたい放題になってきた

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さあ、月曜の夜からは『ゲーム・オブ・スローンズ』の世界に行って、しばらく帰ってこない予定なので、もう一本参ります!(自分でもよく分からない焦り)
MoviePlusで『ダンケルク』やってたんで、つい観てしまいました。観るのは3回目。

クリストファー・ノーランが映画を作ると、毎度、ノーランは天才だ、いや違う、みたいな話が出回ります。最新作の『TENET』も大騒ぎですが、公開時は休職期間に入ったばかりでボロボロでしたから、私は観に行ってません。
観るまではネタバレあるなしに関わらず、なるべく情報は入れないことにしているので細かいことはわかりませんが、また同じようなことになってるみたいですね。

ダンケルク』も、公開当時は結構評価が割れた記憶があります。
「臨場感がある、新しい映像体験だ」
「ドラマがない、人物が薄っぺらだ」
だいたい、この二つになるかなと。これ、どっちも合ってると思います。

あのー、私が思うに、ノーランって、基本的にはシンプルな人なんじゃないですかね。
この人、まずやりたい「コト」があって、それにすべてを合わせるように映画作ってるだけのよーな気がするんですよ。
でなきゃね、どーして『ダンケルク』を、防波堤を1週間、海を1日、空を1時間、なんて、違う時間を平行で語らなきゃならないんですか。
人間の内面を描くことが苦手な監督じゃないのに、いくらでも膨らませられるところを、わざわざスッパリ切り捨てるのはなぜなんですか。

いや、そこに彼なりの色んな理由があるのも意味があるのも、映画表現として意義があるのもわかってる。
でもそれは、コンマ1秒くらいの差かもしれないけど、所詮は後付けの理由だと思うのです。
絶対に、最初に「やってみたい」があったに違いない。
三つの違う時間を同時に描いてみたい、とか。
IMAXの力を限界まで引き出してみたい、とか。

な、正直に言ってみな?
やってみたかっただけだろ?
なあそうだろ、クリストファー(友達?)

で、やりたいことにうまくハマらない要素は、わかっていても切り捨てる。史実と違うとか、あれがないとかあるとか、ゆーたところで聞きやしないでしょう。

ようするに、クリストファー・ノーランという人は、途方もない映画バカなんです。
バカを突き詰めると天才と呼ばれる、良い例です。

ちなみに、私は、ノーラン映画ってだいたい2回は観ます。映画館で2回とまではいかなくても、1回観たっきりにはしません。
1回だけだと、「ノーラン、なんかすごーい!」で、終わっちゃうから。

だって、ノーラン映画って忙しいんだもん。
場所も時間も多面展開するし、出てくる人間は多いし。色んな要素をおせち料理のごとく重箱の中に詰め込んでるんで、一度に全部食うのは大変です。
その上、映像に凝りまくってるから、思わず「はー!」と感心してる間に大事なところを見逃す危険もあり、集中力は総動員。
映画館では一時停止も巻き戻しもできませんからね、観る方も追いつくのに必死なんですよ。
なので、2回目以降でやっと、「今回のノーランは、何がしたかったのかなー」とわかってあげる時間がとれるんです。

別に、私がわかってあげる必要なんかないんですけど、「やりたいこと」がはっきりしている監督って、バカだとわかっていても好きなんで。
そうなると、「やりたいこと」をわかってあげたいじゃないですか、やっぱり。
なんなんですかね、私のこの心理は(人に聞くな)。

まあ、こういう監督は他にもいます。
でも、ノーランの映画バカっぷりがとりわけすごいなーと思うのは、彼の考える「娯楽」と、観客の求める「娯楽」が、微妙にズレてることが往々にしてあることなんですね。
本人は、自分の作品は「娯楽映画」だと本気で思ってるようですが、毎度毎度賛否両論が巻き起こるというのは、やっぱり娯楽のストライクゾーンに球が入ってないからで。

特にこの『ダンケルク』は、脚本に弟のジョナサン・ノーランが加わっていません。クリストファー・ノーランが一人で脚本書いているので、やりたい放題になっている。
弟と二人で脚本書いてる作品*1だと、比較的ストライクゾーンに寄るんですけどね。
誰か手綱を握る人がいるといいんだけどなーと思いつつ、このまま世間の評価に迎合することなく、映画バカ一直線でいて欲しいような気もします。

だから私は、律儀にノーラン映画を観続けるんだよなあ。
劇場公開を見逃した『TENET』も、Amazonプライムの対象になる日など待たずに、金を払って観る予定。
頑張って稼げよ、クリストファー。

*1:プレステージ』『ダークナイト』『ダークナイト ライジング』『インターステラー』。特に『インターステラー』は、もっと難しい話になるところを、ギリギリのところで踏みとどまってる良作。

『RED/レッド』ナメてたババアが最強でしたって映画が観たい

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復職疲れと『ゲーム・オブ・スローンズ』の一気見で、2月は更新が滞り気味でした。週明けは同僚がシーズン8を持ってくるはずなので、今のうちに(?)書きまくってます。
3月はそれなりに体力も戻ってきましたが、別の体調問題が浮上しましてね……。ヘレン・ミレンに元気がもらいたくて『RED/レッド』です。

ウォーレン・エリス&カリー・ハマーの同名グラフィック・ノベルを、ブルース・ウィリスモーガン・フリーマンジョン・マルコビッチヘレン・ミレンの豪華共演で映画化したアクション・コメディ。かつてCIAの工作員だったフランク、ジョー、マービン、ビクトリアの4人は、内部機密を知りすぎているという理由でCIAの暗殺対象者になってしまう。4人は生き残りをかけてCIA本部に侵入するが……。監督は「フライトプラン」のロベルト・シュベンケ。

2010年製作/111分/G/アメリ
原題:Red
配給:ディズニー
(映画.com)

この映画、主演は紛れもなくブルース・ウィリスなんです。
でも途中から、モーガン・フリーマンのセクハラ演技(本人がセクハラ常習者と知って、今見るとドン引き)、ジョン・マルコビッチの怪演、ブライアン・コックスの貫禄と、登場人物が増える度にウィリスの印象が薄くなり、とどめにヘレン・ミレンのエレガンスに全て持っていかれるという、何となく10年代に入ってからのウィリスの微妙な立ち位置を予感させる映画です。
続編の『REDリターンズ』でも、ウィリスがなにやってたのか思い出せないのよね、私。

とにかくヘレン・ミレンが目立つのなんの。エレガンスという、他の出演者が持ち得ない特性がフルに発揮され、白いドレスでマシンガン撃ちまくる姿はこの映画最大の見せ場。
元MI6という設定ですが、ボンドといいMといい、MI6の採用基準にはエレガンスが含まれてるのか?(映画が違う)

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マシンガンとドレスのコーディネートが完璧

これにロシアスパイとの禁じられた恋が絡んで、もうトキメキMAXですよ(死語)。ブライアン・コックスが、胸の銃創を愛の証として見せるところもうっとりです。
私はこーゆーのにものすごく弱いのです。正直言って、ウィリスのちまちました恋の行方はどーでもいい。
REDリターンズ』ではヘレン・ミレンの見せ場がさらに増えるのですが、その話はまたいつか。

 で、冒頭に書いた体調問題なんですが、ここ数ヶ月、ホットフラッシュ、ようは火照りと発汗を繰り返すことがちょいちょいありまして。
まあお年頃だし、仕事しすぎで休職するほどだったし、生理も不順だし、ホルモンバランスが崩れてんのかなーと、婦人科で検査したんです。
で、先日検査結果もらったんですが、基準値がっつり満たしていて

「更年期、閉経ですね」

とさらっと言われましたよ。
って、おいこらちょっと、なんばいいよっとか、きさーん!*1

お年頃とはいえ、本格的な更年期だの閉経だのは、まだ何年も先だと思っていたのに(ここまで暴露しといて、なぜ年齢をぼかすのか)。もちろん、平均からはかなり早め。
実際の閉経確定は「1年間生理がない」という、どっかのポイントカードみたいな基準があるんで、まだこれからなんですが。

とはいえ、検査結果は明白です。早い、早すぎる。
医者からは、個人差もあるけど、休職原因でもある過労やストレスも関係しているかも、と言われました。
……なぜでしょうね、休職する羽目になった時よりも激しい、本能的な怒りを感じるのは。
私の女性ホルモン、返しやがれ、クソ会社!

で、我が身にふりかかって気づいたんですよ。俳優の場合、仕事中にホットフラッシュや悪心がきたらどんなに大変だろうかって。

私は今のところ、ホットフラッシュ+息苦しさを感じるぐらいですが、それなりにキツい日もあります。もっと症状が重い人は、動悸がしたり悪心がしたり、心臓が止まるんじゃないかと思うほどツラいそうです。
症状もツラいんですが、自分で自分の体がコントロールできなくなる感覚があって、それが非常に気持ち悪い。

しかも、更年期の症状って、時間も場所も関係なく不意打ちで来ますからね。
寝入りばなにくると睡眠薬飲んでるのに眠れないし、外気温5度の中で外出してるのに顔真っ赤で汗だくになるし、マスクしてるから息苦しさは倍増するし。
この間はホットフラッシュ状態で出社して、「走ってきたの!?」と上司(男)に驚かれました(ちょうどいいので「過労が原因で更年期が早くきた」と言って、軽くイジメた)。
もうね、突然悪魔に憑依されるよーなもんですよ。
マジで怖いぜ、男性諸君。 

ヘレン・ミレンがどんな更年期を過ごしたのか知りませんが、時代を考えると、相当な苦労があったはず。
症状の緩和には、漢方薬とかホルモン治療とか方法はあるにはありますが、完全にはなくならない。40~50代の女性はオファーされる役が減ると言われますが、体調面で仕事をセーブせざるを得ない人もいるかもしれない。
そう思ったら、ヘレン・ミレンのように、年齢を重ねてなお活躍する女性への尊敬の念はいや増すばかりです。

……最近思うんですよ。
ナメてたジジイが最強でした、みたいな映画って多いじゃないですか。この映画もそうですし、ちょっと違うけど、『エクスペンタブルズ』も年齢高めの野郎共の映画ですよね。

でも、ナメてたババアが最強でした、って映画はない気がして。
女性がアクション映画でバリバリに活躍しだした歴史が、浅いせいだと思いますが。
それでも過去の出演作から考えれば、役者の候補は結構いるんですよね。60overだとこんな感じはいかがでしょう。

ヘレン・ミレンはもちろんとして、シガニー・ウィーバーリンダ・ハミルトンパム・グリアあたりは鉄板*2ジュディ・デンチグレン・クローズジーナ・デイヴィススーザン・サランドンもおさえたい*3
キャシー・ベイツのキレた演技も、アクセントとして欲しいところ*4ミシェル・ファイファーの衣装は、もちろんキャットウーマン*5
現役だったら、志穂美悦子も入れるのに*6

年寄りに翻弄されるカール・アーバンの位置付けは、今が旬のマイケル・B・ジョーダンがいいな*7
あ、悪役は、ぜひメリル・ストリープでお願いします*8

おおおおおお、観たい!
誰か作れ!
需要はあるぞ!
いくらかかるか知らんけど!

*1:福岡等、北部九州における「何言ってるんだ、貴様」の意

*2:選定理由の出演作は、順に『エイリアン』シリーズ、『ターミネーター』シリーズ。パム・グリアは『コフィー』と書くべきだけど、私が未見なので『ジャッキー・ブラウン

*3:『007』シリーズ、『危険な情事』ではなく『101』、当然『テルマ&ルイーズ

*4:ミザリー』。この映画のおかげで、私は彼女が出てくるたびに裏があるんじゃと疑ってしまう。

*5:バットマン リターンズ』。もはや芸術。

*6:『二代目はクリスチャン』。千葉真一仕込みの、日本最初の女性アクションスターだったのに、長渕剛と結婚して引退。この件では、私はいまだに長渕剛を許していない(逆恨み)。

*7:『ブラック・パンサー』で大ブレイク。セクシーだわー。

*8:『激流』。たぶん、彼女唯一のアクション映画。役者としても最強のラスボスだし。

『デイブレイカー』イーサン・ホークにハズレなしの阿鼻叫喚地獄絵図(ネタバレあり)

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すっかりサム・ニールモードになっているので、久しぶりに『デイブレイカー』。

これを映画館で観たのは、広島に勤務していた頃。元々は『マチェーテ*1を観に行ったんですよ。
チケット売り場で座席を指定しようとしたら、売り場の方から「ここと、ここ以外は、全部空いてます」と営業スマイルで言われた記憶は、今でも鮮明です。
そして『マチェーテ』を大満足で観終わった後、売店でパンフレットを買おうとしたら「この映画はパンフレットお作りしてないんですよ」と無常に言われ、物悲しい気分になってしまい、未練がましくパンフレットの見本を眺めていたところ……。

「サ、サム・ニールがいる!?」

と、この映画を発見。
売店から即行で踵を返しチケット売り場に戻ったら、同じ方が売り場にいて「こちらも、ほとんど空いてます……ふっ」と、笑いをかみ殺しながらチケットを売ってくれました。甘酸っぱい思い出です。

そういう余計なことも思い出しながらの『デイブレイカー』鑑賞です。

永遠の命を持つバンパイアによって世界が支配されている2019年。人類は絶滅寸前で、バンパイアに必要不可欠な人間の血液も底を突きかけていた。血液の代用を探すバンパイアの研究者エドは、人類の生き残りオードリーと出会い、バンパイアと人類の双方を救済できる驚くべき方法を知るが、バンパイアと人類は最終戦争に突入してしまう。監督は「アンデッド」(03)で知られる双子の兄弟ピーター&マイケル・スピエリッグ。出演はイーサン・ホークウィレム・デフォーサム・ニール

2010年製作/98分/R15+/オーストラリア・アメリカ合作
原題:Daybreakers
配給:ブロードメディア・スタジオ
(映画.comより)

これ、確かパンフレットにもほぼ同じことを書いてあったんですが(確認しろって)、人血をワイングラスに入れて飲むサム・ニールが、実に様になっていて、たまらんのですよ。
どういうわけか、サム・ニールが演じてそうで演じてなかったヴァンパイア。
以前、『ブレイド』でウド・キアがヴァンパイア役*2をしているのを見て、サム・ニールも似合いそうだなあ、と思ったものでしたが、この映画で夢が叶ったように思いました。

ついでに言えば、ここまで真正面から悪役をするのも、あまり無いんですよね。
と、書いたところで、私がいつも、サム・ニールの役柄を「悪役」と認識してないだけなんじゃないかと気づいてしまったので、この話はここまで(無責任)。

ということで、サム・ニール目当ての映画なんですが、主演はイーサン・ホークウィレム・デフォーも出てるので、この三人が映画を一気に格上げしています。あらすじだけ読むとB級っぽく思えるかもしれませんが、Aマイナスくらいあげてください。

いや本当に、イーサン・ホークにハズレなし、です。
サム・ニールは時々微妙なものに出るので困るんですが、イーサン・ホークは絶対にハズさない。
脚本見る目がいいんでしょうね。ウィレム・デフォーが、この映画に出たのは「イーサン・ホークが出るから」と言ってました。業界人すら信頼する目利き。
これ観ようかなー、どうしようかなー、と迷った時にイーサン・ホークが出てるなら、どんなジャンルの映画であっても、少なくとも「死ぬほどつまらんかった」とはなりません(同じことを言う人は多い)。

それはさておき。
ヴァンパイアが食物連鎖の頂点に立って、調子こいて人間の血を呑んでたら、人間が少なくなって食糧危機が訪れた、という、よく考えたら「そりゃそうだよな」となる話です。
自然界を考えたらわかる話なんですが、捕食動物ってのは、獲物より数が多くはならないんですよね。そりゃそうですよ、エサが足りなくなっちゃうんだから。

現実世界では、世界の人口は2020年の終わりに78億人になったそうです。私が子供のころは45億人って学校で習いましたが、あれからすごい勢いで増えました。
これを踏まえてですよ。映画の設定のように、人口における人類の割合が5%切るってことになると、ヴァンパイア74億人に対して人類4億人になります(仕事柄、すぐ計算する)。
つまり、1人の血で18.5人養わなきゃいけないわけです。
日本の年金制度が安泰に見えてしまいます(そこは正気を保て)。

よく考えたら、ヴァンパイアというのは血を飲まないと生きていけないって時点で、雑食の人類より生存しにくいんですよね。山ほどヴァンパイアに転化する前に、そこに気づいた奴はいなかったんでしょうか。
やはり、こういう面倒くさい生き物は(死んでるけど)、希少であることが自然な気がします。
そういうヴァンパイアという生き物(死んでるってば)の特性を、ここまで現実的に詰めた話ってのはあまりなく、そのあたりがイーサン・ホークのお眼鏡にかなったのかもしれません。

この大前提に加えて、クライマックスで、ヴァンパイアから人間に戻った人間の血をヴァンパイアが飲むと、そのヴァンパイアも人間に戻ってしまう(書いてみるとややこしいな)ということがわかり、ここからが怒涛の阿鼻叫喚地獄絵図
なにせ、食糧危機で飢えてるヴァンパイアだらけです。元ヴァンパイアの血を飲んだヴァンパイアが人間に戻ってしまい、今度はそいつに他のヴァンパイアが咬みつき、そのヴァンパイアが人間に戻ったら、また他のヴァンパイアが……。
捕食者と被食者が、すごいスピードで変わっていくので、もう滅茶苦茶。

全体的に派手な殺戮シーンは少ないのにR15+指定、つまり15歳未満お断り映画になっているのは、この場面のせいじゃないかと。私ですら、映画館で観た時は唖然としましたから。
これの前にみたマチェーテ』は18禁ですが、あのバイオレンス描写は笑えますからね。もちろん、腸をロープがわりにして窓から逃げる、なんてシーンを笑うには、観る側がバイオレンス描写に慣れていて、かつ映画のコンセプトを承知しているという前提があるとはいえ。
私には子供も甥姪もいないので縁のない悩みですが、同じ趣味でお子さんがいらっしゃる方は頭が痛いところなんでしょうね(あ、同僚が『ゲーム・オブ・スローンズ』で困ってたな)。

ということで、広島の映画館では私以外に1人しか観客がいなかった映画ですが、私が好む映画にしては間違いなく良質です。
私のことは信じなくていいので、どうかイーサン・ホークを信じてください。

eiga.com

*1:脇役悪役の常連ダニー・トレホ主演のアクション映画。C級D級の映画をロバート・ロドリゲスというA級監督(……か?)が作るとこうなるという例。アクションはキレッキレで、アメリカの移民問題を背景にしていてメッセージ性もあるが、安易に人に勧められない内容なのがツライ。

*2:人間とヴァンパイアを親に持つヴァンパイアハンターが、ヴァンパイアを刀で狩りまくる爽快な映画。ウド・キアは純血ヴァンパイアの長老役。実にエレガント。

『グリム・ブラザーズ スノーホワイト』シガニー・ウィーバーはサム・ニールをどうしたかったのか

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2012年はおかしな年でした。なにせグリム童話の「白雪姫」を元にした映画が、2本も公開されたんですから(B級でもう1本あったらしい)。
1本は白雪姫がクリステン・スチュアートで、継母のシャーリーズ・セロン様とガチンコ対決する『スノーホワイト』。
もう1本は白雪姫がリリー・コリンズで、継母がジュリア・ロバーツの『白雪姫と鏡の女王』。こちらはなんと言っても、監督がインド産の鬼才ターセム・シンなので、とにかくビジュアルが素晴らしかった。
そして両方に共通しているのは、女性陣が自立していて逞しく、王子含め男性陣は添え物、というところ。
この辺、時代の変化を感じます。受け身のプリンセスは、用なしになりました。

でも実は、そんな時代を予感させる映画が、すでに90年代にあったんですよ。継母の存在感が大きく、父親や王子的存在はひたすら軽く、7人の小人は解釈を変え、白雪姫は最後に継母としっかり対峙する。
それがこれ、『グリム・ブラザーズ スノーホワイト』。アメリカではTV映画でしたが、日本では劇場公開されていたので、私、映画館で観ました。
だって、継母がシガニー・ウィーバーで、白雪姫の父親がサム・ニールなんだもの。

誰もが知っているグリム兄弟の名作童話「白雪姫」を、1812年に発表された原典に忠実に、その残酷さと狂気の世界を再現したファンタジー・ホラー。監督は「インターセプター」のマイケル・コーン。製作は「ターミナル・ベロシティ」のトム・エンゲルマン。撮影は「嵐が丘」(92)のマイク・サウソン、音楽は「ケーブルガイ」のジョン・オットマン、美術は「ハマースミスの6日間」のジェマ・ジャクソン。主演は「コピーキャット」のシガニー・ウィーヴァーと「あなたが寝てる間に…」のモニカ・キーナ。共演は「恋の闇 愛の光」のサム・ニール、「マイアミ・ラプソディー」のギル・ベロウズほか。

1997年製作/100分/アメリ
原題:Snow White
配給:ギャガ・コミュニケーションズ=ヒューマックス・ピクチャーズ
(映画.comより)

はい、前回の『N.Y.犯罪潜入捜査官』を観た勢いで、DVD引っ張り出してきちゃいました。
この映画でのサム・ニールは、打って変わって、後妻に翻弄されるだけの男なので、ファンとして面白みはないのよねー。
まあでもサム・ニールって、女性に翻弄されるばかりの役っていうのが結構あって、その辺は前回書いたセクシーさに欠けるところが影響しているかもしれません。寝取られ夫の役も多いし。

で、この映画でとにかく目立つのは、シガニー・ウィーバーの継母なんですね。
この継母、彼女の背景や内面がまったく説明されず、シガニー・ウィーバーという配役一本で納得してもらおうという、「ね、わかるでしょ」な役なんです。他のキャラは、それなりにわかるようになってるんですけどね。

でも、そんなこと、シガニー・ウィーバーが怖くて言えません。
もうね、シガニー劇場なんですよ。彼女が演じる継母の狂気が全てです。
ちょっと冷静になると、彼女が一人でくるくる回ってるだけって絵面ではあるんですが、迫力が……。
「そういうものなのよ、文句ある?」と言われてるような圧が、怖い。

元々、子供向けにソフトになった内容ではなく、グリム童話の原典にある残酷描写を描こうというコンセプトで作られた映画です。
彼女はそれをしっかり表現していて、過剰なまでに狂気の継母を演じています。
今でこそ、グリム童話は実は残酷だと、頭にインプットされているんですが、当時は結構ドン引きした記憶があります。久々に観ると、落ち着いて見られるというか、さほど驚かなくなっている自分がいました。
まあでも、それでもシガニー・ウィーバーは手が付けられない感じで、めちゃくちゃ怖いんですが。

特にですね、白雪姫の父親への仕打ちがひどいんですよ。これは、2012年の作品にはなかったと思います。
直接手を下してることを考えれば、白雪姫に対するものより、酷い。精を搾り取られたあげくに、十字架に括られて逆さづりですよ。

サム・ニールの出演を推したのはシガニー・ウィーバーだったと、パンフレットに書いてあったと記憶してますが(ちゃんと探して確認しろ)、役柄から考えて彼を推したのなら、彼女はサム・ニールを虐待してみたかったのかと邪推したくなるんですが、どうなんでしょう。
なんとなく、その方が面白いかな、と思う私のサム・ニール愛は、深すぎて水圧で歪んでます。

『N.Y.犯罪潜入捜査官』サム・ニールがボンド役のオーディションに落ちた理由がわかった件

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昨日『ゲーム・オブ・スローンズ』のシーズン7まで(こだわる)観終わった後、ふとAmazonを見ると、この映画のDVDが1枚だけ在庫がありとなったので即購入。着荷して即観ました。
サム・ニールのファンとロブ・ロウのファン以外、全く需要がない映画なんですが、私はそのサム・ニールが大好きなので、前々からDVDが欲しかった作品です。
最悪レンタル落ちの中古を覚悟してたんですが、まさかの新品で幸せです。
ちなみにこれ、正確にはTV映画。日本で言えば、土曜ワイド劇場よりは上かな、という感じ。

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いやー、予想通り、中途半端な出来で大満足です‼
……というのはTV映画だと知っていたから言える感想で、そうでなければ「はい⁉」となること必須。雑です、雑。
そのせいか誰も話題にしていないらしく、ネットで検索かけると検索結果に『N.Y.心霊捜査官』*1と混ざって出てくる始末。もちろん、これぽっちも関係もありません。

作品紹介にある「アクション」は無いも同然だし、DVDのパッケージにある「激突」も「生死」も「壮絶」もありません。ロブ・ロウ演じる刑事のマイクも、果たして腕利きかというと、正直者なだけじゃないの、という感じ。

そもそも、邦題にあるような「潜入捜査」はしてないんですよ。だからといって、原題の”Framed”(無実の罪をうけた、罠にはめられた)というのも微妙。
マイクの過去や終盤の状況を表してるんだろうけど、そこはドラマの中核じゃないから、タイトルにされてもねえ……。
邦題原題共に「なんか違う」という、ズレてる感がすごいです。

でもサム・ニールは良かった!
彼のうさん臭い眼力が最初から最後まで堪能できて、サムを観ているだけで楽しいんですよ!(誰にも響かない感想)
彼の一番の魅力は腹に一物ありそうな眼力なので、目つきが悪くて、ついでに裏表がある役を演じてくれてりゃ、私はそれで充分なのです。うふふふふ。

それに今回の役柄は、金持ちで趣味の良い贅沢男。
仕立ての良いスーツ、優雅にワイン、なーんて風情をサラっと出せるのも、サム・ニールの持ち味。影響されてスーツやワインを嗜むも慣れてないマイクの姿と、なんと違うことでしょう。
ノーブルで知的な雰囲気を、ナチュラルに醸し出せる役者が減った昨今ですが、やっぱりサム・ニールは出てるだけで違います。

正直、この話で彼が仕掛けてる罠なんて大したことじゃなく、ただただ警察やFBIがアホなだけなんですが、出てる役者の中でサム・ニールの格が違うから、なんか妙に納得してしまう。
……というのは、はい、ファンのひいき目です、すみません、ごめんなさい。

でもですね、ファンだからこそわかる、ダメなとこってのもあるんです。「あちゃー、これは違うわ」と思ったのが、女性を侍らせているシーン。
サム・ニール、エロが皆無。全然これっぽっちも見当たらない。

しかもこの役、妻と愛人と3Pするような男なんだけど、そんなエロいことするように全く見えない。
百歩譲って、妻と愛人がベッドいちゃついてるところをソファでワイン飲みながら見て興奮する、なんて性癖ならありかなー。
でもなー、なんだかなー。
ちがうなー。

そこで思い出したのが、サム・ニールティモシー・ダルトンと共に、四代目ジェームズ・ボンド役の候補だったって話です*2
サム・ニールだって、ノーブルでタキシードも似合うし、一筋縄ではいかない男は演じられる。マティーニだって似合うだろう。声も良いから、「ボンド、ジェームズ・ボンド」ってお約束のセリフもステキだろう。

でも、ボンドに一番必要な、セクシーさが無いから無理なんだよおおおお!
好みじゃないけど、私が製作陣でもティモシー・ダルトンにするわ、悪いけど。

などという、おかしなことを考察する余裕が十分にある映画でした。
長年の夢が叶って満足です。
ただし、もう一回観るかどうかは、神のみぞ知る。

www.amazon.co.jp

*1:エリック・バナ主演の、やたらと霊感が強い刑事の話。結構面白いです。

*2:『007 リビング・デイライツ』DVD特典にあるメイキングに、カメラテストの映像があるらしい(Wikipedia参照)。そのためだけに買おうかどうか、もう長いこと悩み中。そもそも、それを収録した版はまだ売っているんだろうか……